第八十話 手を握り合うわたしたち
わたしはグラスジュール殿下に、
「わたしはグラスジュール殿下に、『好意を持っている』とおっしゃっていただくだけでも光栄に思っているのでございます。本来はわたしが言うことではないと存じますので、申し訳なく思うところではございますが、わたしたちの関係はまだ始まったばかりでございます。これからじっくりと仲を深めていけばいいと思っております」
と言った。
それに対し、グラスジュール殿下は、少し考え込んでいたのだけれど、やがて、
「リランドティーヌの言う通りだな。あせることはない」
と言って、一回言葉を切った後、
「リランドティーヌよ、わたしはそなたと、お互いにもっと理解をし合いたい。そして、もっと仲をを深めていきたい。わたしのこの気持ち、そなたに伝わってくれると、とてもうれしく思う」
と少し恥ずかしそうに言った。
「もちろんでございます。グラスジュール殿下、これから改めてよろしくお願いします」
「わたしからもよろしくお願いしたい」
グラスジュール殿下がわたしに手を差し伸べる。
わたしはその手を握った。
グラスジュール殿下のやさしさが流れ込んできた。
わたしは心が沸き立ってくるのだった。
今日わたしはグラスジュール殿下と様々な話をしてきた。
こうして話をしていくことによって、以前より距離が縮まった気がしている。
まだまだ話はし足りない。
わたしとしては、これから夜中語り合いたいぐらいだ。
でもグラスジュール殿下は、危篤を乗り越えてきた体。
病状は劇的に改善した。
しかし、だからと言って、無理をしてはいけない。
実際、グラスジュール殿下に表情に疲れの色が見え始めている。
わたしは癒しの魔法を使おうとした。
しかし、先程の治癒魔法とわたし自身への癒しの魔法により、魔法の力をほとんど使ってしまっていた。
魔法の力の回復には一日はかかりそうなので、今は使用を断念せざるをえない。
回復力の速度を上げていくことが今後の課題になってくる。
ちょっと残念ではあるけれど、これからまた会うごとにたくさん話をして、親しくなっていけばいいだろう。
そう思うと、沸き立っていた心が落ち着いてくる。
今日はこれでグラスジュール殿下との話は終わりそうで、残念に思っていると、グラスジュール殿下は、
「そなたにもう一つ話をしておきたいことがある」
と言った。
「何でございましょう? お話を続けて、お体に差しさわりはございませんでしょうか?」
「体の方は大丈夫だと思っている」
「ちょっとお疲れのように思いますので、無理はしない方がいいと存じます」
「そなたとの話は大変有意義だったと思っている。まだわたしとしては話を続けたいと思っている。でも病み上がりなので、少し疲れてきている。そなたの言う通り、無理はしてはいけないな」
「お休みになられた方がいいと存じます」
「お気づかい、ありがとう。感謝する。でもこれだけは話をしておこう」
グラスジュール殿下はそう言った後、心を整える。
そして、
「そなたはわたしのことを治癒魔法で治療をしてくれた。そして、わたしを理解しようとしてくれているし、わたしに希望を持ってくれている。わたしはまだそなたに恋はしていないものの、その好意には応えたいと強く思っている」
と言った。
「グラスジュール殿下……」
わたしはグラスジュール殿下に、
「まだそなたに恋をしていない」
とまた言われてしまった。
それは残念なことだ。
それでも、
「わたしの好意に強く応えたい」
と思ってくれていることはうれしい。
わたしの心の中には、
「リランドティーヌよ、わたしはそなたのことが好きだ。そして、恋をしている」
と言ってほしいという気持ちもあったのだけれど、それについては、先の楽しみにしようと思っていた。
しかし、グラスジュール殿下の言葉は、これで終わりではなかった。
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