第七十八話 グラスジュール殿下の宣言
グラスジュール殿下は、
「わたしはまず王太子の座をまず維持しなければならないと思った。今までは、ウスタードールにその座を譲ればそれでいいと思っていたのだが、この二人が王国を本格的の動かすことになれば、この王国は先程も申した通り、衰退することは間違いないし、なんといっても国民が困窮することになってしまう。そこでわたしは、父上と義理の母、そしてウスタードールが集まった席で、『わたしは改めて、王太子、そして国王になり、この王国、そして国民の為に尽くしていくことを宣言します』と申したのだ」
と言った。
「敵対をされている方々に対して、宣言されるのはすごいことでございます」
「わたしはこの王国の為、国民の為に尽くすと決めた。これはまずその第一歩だ。でもそれだけではない。ウスタードールを擁立する勢力への牽制の意味も強かった。これでウスタードールを擁立する勢力が抑えらればと思っていたのだ。しかし、実際は逆の動きになった。今までも、わたしを力づくでも王太子の座から追放し、ウスタードールを王太子の座につけようという計画をこの勢力は立ててはいたようだが、そこまで真剣ではなかったようだ。しかし、わたしの動きに危機感を抱くようになったこの勢力は、計画実行に向けて動き始めたのだ。わたしは、幼い頃から自分の身を守る為、王太子の座をこのまま維持していくかどうかはともかく、こうした情報を集めていた。わたしには独自の情報網がある。王太子の座を維持すると決めてからは、その情報がより大切なものになっていたが、計画実行に向けて動き出したことを知った時は、対決が避けられないと思い、残念に思ったのだ」
わたしはそのような動きになっていることまでは認識していなかった。
これだけでも驚くべき情報だ。
そして、さらにグラスジュール殿下は、
「今持っている情報では、国内の貴族たちを味方につけるべく動きているようだ。その中には、そなたの家であるフィリシャール公爵家も入っている」
と言った。
「わたしの家もですか……」
「そなたが先程言っていたように、そなたの父と継母はそなたのことをじゃまだと思っているので、この際わたしと一緒に処分しようとしているようだ」
「父や継母であればそういう考えになってもおかしくはないでしょう。そのように動くことは、仕方のないこととはいうものの、残念な気持ちもあります」
わたしはそう言った。
「きみも大変な家族を持ったものだ。わたしと同じような境遇だということ改めて認識するところだ。わたしが申しても、心に届かないかもしれないが、それでも申したい。元気を出してほしいということを」
グラスジュール殿下の言葉はやさしい。
わたしは涙ぐみながら、
「グラスジュール殿下の言葉は、わたしの心に十分心に届いております。グラスジュール殿下にそうおっしゃっていただけるだけで、とてもうれしいです」
と応えた。
「これからしばらくの間は、様子を見ることにする。できればこのまま穏やかに過ごしていけるのが一番いいと思っているが、相手が実力行使に出れば、対応せざるをえない。もし義理の母とウスタードールが、王国の為に尽くすという意志があれば、わたしだって、王太子の座を維持したいとは思わなかった。でも先程も申した通り、自分の贅沢のことしか頭にはない。本来のわたしは、自由を誰よりも好むもので、王太子、そして国王になることは窮屈なことでしかない。だが、それはもう言っていられなくなってしまった。残念なことだが、仕方がないと思っている」
グラスジュール殿下はそう言った後、一度言葉を切った。
そして、
「そなたにも迷惑をかけることになり、申し訳ない」
と言った後、頭を下げた。
「面白い」
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