第七十六話 魅力的なグラスジュール殿下
わたしは恥ずかしくてたまらない気持ちをどうにか抑えながら、グラスジュール殿下に対して恋をすることになった経緯をグラスジュール殿下に伝えた。
グラスジュール殿下はわたしの言葉を黙って聞き続けている。
何か反応をしてほしい……。
このままでは恥ずかしすぎて、頭を抱えて悶絶してしまいそうだ。
すると、グラスジュール殿下は、
「そなたはそういう恥ずかしい話をよくすることができるな。聞いていて、こちらも恥ずかしくなってきた」
と言った。
少し顔が赤くなっている。
さすがのグラスジュール殿下も、心が動き始めたのだろうか?
そう思っていると、
「そなたは、わたしのことを買いかぶっていると思う。そして、誤解をしていると思う。わたしは大前提として、心のやさしい人間ではない。先程も申したが、わたしの性格は最悪なのだ。そなたに恋をされる対象ではないのだよ」
とまた言ってくる。
わたしは一生懸命グラスジュール殿下のことを理解しようとしているし、恋もし始めている。
それなのに、なぜこの方は、頑固にわたしのことを拒み続けるのだろう?
さすがにわたしもだんだん腹が立ちそうになってきた。
しかし、ここで腹を立ててしまえば、グラスジュール殿下との関係は進まない。
それどころか、関係が壊れる方向になってしまうだろう。
それを避ける為、なんとかわたしは腹立ちを我慢していく。
そして、グラスジュール殿下に提案をしようとしていた。
ただ腹立ちの方は我慢できてきたものの、今度はまた心が沸き立ってくる。
心のコントロールというのは難しいものだ。
わたしは何とかそれを抑え込んでいく。
そして、なるべく穏やかな口調で、
「わたしはグラスジュール殿下に恋をしております。それに対して、グラスジュール殿下はわたしに対して好意をそれほど持っているわけではないのだと思います。でもせっかく縁あって婚約者どうしになったわたしたちです。二人でいる時は、お互いに本当の姿で接していきたいと思っております。わたしもグラスジュール殿下に恋をしているという本当の姿を表面に出して接していきますので、グラスジュール殿下の方も、気力を失っていて、『偽悪者』になっているという仮の姿・仮の心ではなく、気力の充実した心やさしい本当の姿で、わたしと接していただけるとありがたいです。差し出がましいことを申しまして、申し訳ありませんが、わたしとしては。グラスジュール殿下との仲を深めていくためには絶対に必要なことだと思っているのでございます」
と言った。
わたしの話を聞いたグラスジュール殿下は、今まで厳しい表情をしていたというのに、突然笑い始めた。
どうしたのだろう?
と思う。
グラスジュール殿下はしばらくの間笑った後、
「わたしの本当の姿か……」
とつぶやいた。
そして、真剣な表情になり、
「そなたはどうやらわたしが信頼するに足る人物のようだ」
と言った。
わたしはグラスジュール殿下の表情が大きく変化したことに、とても驚いていた。
今までも真剣な表情や厳しい表情はしていたものの、それは傲慢な態度からきているものだった。
表情を見ている人たちに畏怖を与え、嫌悪感を与えるもので、凛々しさとは程遠いもの。
しかし、今は違う。
こうしてグラスジュール殿下を見ていると、凛々しさを感じるし、爽やかさも感じる。
そして、気力が充実してきていることを認識することができる。
もともとハンサムな方で魅力があると思ってはいた。
残念ながら今までは、その魅力は発揮していたとは言い難がった。
今のグラスジュール殿下の表情は、グラスジュール殿下をより一層魅力的にしている。
この表情だ。
わたしは心の中でそれを待っていた。
胸のドキドキが大きくなっていく。
そして、心が沸き立っていったのだった。
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