第七十四話 グラスジュール殿下への恋
わたしはグラスジュール殿下に対し、恋をし始めていることを伝えることを躊躇していた。
何と言っても、グラスジュール殿下がわたしのことをどう思っているのか、それがわからない。
わたしのこの気持ちを伝えた途端に、
「そなたのような人がわたしにつり合いが取れていると思っているのか! 身の程を知らないものめ!」
と言って怒りを爆発されたら。、わたしは耐えられないほどの心の傷を負ってしまう。
それが怖い。
しかし、それ以上に躊躇させているのは、想いを伝えること自体の恥ずかしさだ。
その気持ちがどんどん大きくなってきている。
いったいわたしはどうしてしまったのだろうか?
困惑し始めていると、グラスジュール殿下は、
「どうした? わたしはそなたの思っていることを言ってくれればいいと思っているのだ」
と言ってくる。
この言葉は、わたしの心を前向きにした。
グラスジュール殿下がそう言っているのだから、ここはその想いをグラスジュール殿下に伝えることにしよう!
そう思ったわたしは、
「こうしたことを申し上げると、もしかしたら、グラスジュール殿下はお怒りになるかもしれません。それでも申してよろしいでしょうか?」
と言った。
それに対し、グラスジュール殿下は、
「わたしが怒るか怒らないかは、申してみなければわからないだろう? まずは申してみるのだ。まあ、あまり変なことを言わない限りは、怒らないことを約束しよう」
と言った。
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えまして、申させていただきます」
わたしはそう言った後、心を整える。
まだ躊躇・困惑しているところはあるものの、それは乗り越えようと決意した。
そして、
「グラスジュール殿下、わたしはグラスジュール殿下のことがお会いしている内に好きになってきたのでございます。そして、本日、治療をさせていただいたことで、ますますその想いは強くなってまいりました。グラスジュール殿下、好きです!」
と心が沸き立ちながらも、何とか言い切った。
しかし、言い切ると同時に、猛烈な恥ずかしさが襲ってくる。
ああ、つらくて苦しい……。
グラスジュール殿下はわたしの言葉を聞いて固まってしまっているようだ。
そう言う態度を取られるとますます恥ずかしさが増してしまう。
どんな反応でもいいので、してほしい。
お願いします!
そう思っていると、グラスジュール殿下は、
「き、そなたは冗談がうまいね」
と少し震え気味な声で言ってくる。
どうして冗談などと言うのだろう?
グラスジュール殿下の言葉によって、わたしは恥ずかしさが弱まっていった。
そして、
「冗談ではありません。わたしはグラスジュール殿下に恋をしたのでございます」
と応えた。
恋と言う言葉がついにわたしの口から発せられた。
一瞬、まだ言うべきではなかったと思ったのだけれど、
「冗談では」
と言われた以上はそう応えるしかない。
グラスジュール殿下は、
「そなたがわたしに恋をしている? そんな冗談のようなことがありえるのだろうか?」
と言った後、腕を組んで考え始める。
グラスジュール殿下はどういってくるのだろう?
心がますます沸き立ってくる。
わたしは心の沸き立ちを何とか抑えながら、グラスジュール殿下の次の言葉を待った。
やがて、グラスジュール殿下は、
「わたしは自分で申すのもなんだが、わがままで傲慢な男だ。そなたはわたしのことを偽悪的だと申したが、それは買いかぶりだ。わたしはそなたに好かれるような男では決してない。そのような男なのだから、やはりそなたはわたしに婚約破棄を申し出るべきだろう」
と言った。
今までの口調とは違い、攻撃的なところは薄れ、穏やかになってきていた。
グラスジュール殿下はわたしに対して思いやりの気持ちを持ってくれている。
それは理解をしてきているのだけれど……。
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