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第七十話 戻ってくる傲慢な態度

 グラスジュール殿下の傲慢な態度。


 先程わたしに感謝をしたくれたばかりだと言うのに……。


 今までのグラスジュール殿下にいきなり戻ったような気がする。


 残念な気はするのだけれど、もともとわたしはこちらの方のグラスジュール殿下の方が話し易くはある。


 そう思ったのだけれど……。


 いつもだとこの後は、


「集中力がないようでは、わたしの婚約者どころか、知り合いにすらなれないな。全くしょうもないやつだ」


 と言ったりして、傲慢な態度を取り、わたしのことをあざ笑うグラスジュール殿下。


 しかし、今日はそれがない。


 それどころか真剣な表情になる。


 かえって調子がくるってしまうわ……。


 グラスジュール殿下はいったいこれからどうしょうと言うのだろう?


 そう思っていると、グラスジュール殿下は、


「わたしがそなたと二人だけになりたいと言った意味がわかるかな?」


 と言ってきた。


 それに対しわたしは、


「グラスジュール殿下がわたしとの距離を縮めたいと思われたのだと思っております」


 と応えた。


 これが一番の理由だと思った。


 病気が治ってきたので、わたしをいつものように罵倒する元気が戻ったきたのでは、ということも思わないではなかったのだけれど、さすがにそこまで常識がないことはしないだろうと思っていた。


 するとグラスジュール殿下は、


「きみは甘いな。きみのことをいつものように、『きみはわたしにとって、お飾りの妃でしかない』と言ったりして、罵倒したかったと言ったらどうするのだ?」


 といつものような傲慢な態度に戻って言ってきた。


 つい先程、いつもとは違う態度を取っていて、いい方向に変化し始めたと思っていたのに、もういつものグラスジュール殿下に戻ってしまったように思える。


 予想していなかったわけではないものの、少しガックリした。


 しかし、同じ傲慢な態度を取っているとは言っても、どこか違うような気がする。


 いい方向に向かう様子があった後、急にまた傲慢態度に戻ったのだ。


 もしかすると、この変更には何か意図があるのかもしれない。


 そこで、わたしは、


「グラスジュール殿下、そのような理由で、病み上がりにも関わらず、二人きりになりたかったというなんて、冗談を申されては困ります。それにもしグラスジュール殿下が罵倒されたとしても、もうわたしは一切心が傷つかなくなりましたわ」


 と少し微笑みながら言った。


 グラスジュール殿下は、それに対し、


「そなたと初めて会ってから最初の内は、わたしの罵倒にそなたは怒りを抑えていて、それを見ていたわたしは心の中で笑っていたものだ。しかし、その耐性がついたようだね。これは見事に一本取られてしまった」


 とこれも傲慢な態度を取ったまま言う。


 そして。


「まあ、わたしの罵倒に耐性がつくというのはたいしたものだ。とは言っても別に誰にも評価されるものではないのだがな。そなたにとってのただの自己満足と言うことになる。笑ってしまうことだな」


 と言って、わたしのことをあざ笑ってくる。


 わたしは少し困惑してきた。


 いつもはもう少し時間をかけてわたしを挑発し、あざ笑うグラスジュール殿下。


 しかし、今日のグラスジュール殿下は、わたしへの挑発があまりにもわざとらしすぎる。


 いったい何がしたいのだろう?


 そう思っている内に、わたしは、


 もしかすると、これはグラスジュール殿下と仲を深めることができるチャンスなのでは?


 と思うようになってきた。


 わたしのことを意識するようになったからこそ、わざとらしい挑発をしている気がしてしょうがない。


 つい先程は、国王陛下や侍医、そして、わたしにも心からの感謝をしていたグラスジュール殿下だ。


 そうした心やさしい姿が本来のグラスジュール殿下なのだと思う。


 グラスジュール殿下のそうした姿を二人きりの時にもきちんと心に刻み付けたい。


 そう思ったわたしは、自分から攻勢に出ることにした。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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