第六十九話 二人きり
すると、グラスジュール殿下は、
「リランドティーヌはわたしを助けてくれたのですね。そして、リランドティーヌは、聖女の可能性があるということですね。父上の話は理解いたしました」
と言った。
これは意外な言葉だった。
国王陛下は、
「そうか、理解をしてくれたか。それならばリランドティーヌに感謝をしなければならないな」
と言う。
グラスジュール殿下は、それに対し、
「そうですね」
と応えた後、わたしの方を向き、
「救けてくれてありがとう」
と言って頭を下げた。
あれほどわたしに対して傲慢な態度を取っていたグラスジュール殿下がわたしに感謝をしている……。
わたしは驚きのあまり言葉がでない。
すると、グラスジュール殿下は、
「父上にお願いがあります」
と言った。
「願いとは?」
「リランドティーヌとしばらくの間、二人で話をさせてください」
国王陛下は驚く。
わたしはさらに驚いた。
いったい何を話したいというのだろう?
「体の方は大丈夫なのか?」
国王陛下は、グラスジュール殿下と侍医の方を見る。
侍医が、
「グラスジュール殿下は驚くべき回復力を見せております。信じられないほどです。わたしが診察した限りでは、それほど長い時間でなければ大丈夫でしょう」
と言うと、グラスジュール殿下も、
「父上、お気づかいありがとうございます。無理はしませんので、どうか、リランドティーヌと二人だけで話をさせてください」
と言った。
国王陛下は、二人の話を聞くと、
「わたしはお前の病気が治ってきたところだったから、無理しない方がいいと思ったのだ。でも、グラスジュールがせっかく良くなったのだ。二人で話すことがあるのも当然だろう。体を無理しない範囲では話をするといい」
と言った。
「ありがとうございます。父上」
「うむ。これからもっと二人の仲を深めていくといい」
その国王陛下の言葉を聞いて、わたしは恥ずかしい気持ちになった。
二人の中を深めていく……。
どうしてもキスやそれ以上の世界のことを連想してしまう。
でも恥ずかしがっていてはいけない。
わたしとしても、これからもっとグラスジュール殿下との仲を深めていきたい。
国王陛下はそう言った後、また熱いものがこみあげてきたようで、
「わたしはお前が救われたことをとてもうれしく思う」
と涙声になりながら言った。
そして、侍医とわたしの方を向き、
「改めて、あなたたちには感謝をしたい。グラスジュールを救ってくれてありがとう」
と言った。
ありがたい言葉だった。
グラスジュール殿下とわたしは今、部屋で二人きり。
先程までは国王陛下と侍医もこの部屋にいたのだけれど、グラスジュール殿下の願いを受けて、外に出たところだ。
グラスジュール殿下はベッドの上に座り、わたしはイスに座っている。
その距離は近い。
今までもグラスジュール殿下と二人きりになったことはある。
とはいっても、今までのグラスジュール殿下は、わたしに対して傲慢な態度を取っていたので、逆に緊張はほとんどすることはなかった。
わたしのことを嫌っているということがわかりやすいので、異性ではあっても恥ずかしい気持ちをを抱くことはなく、普段通りの自分として対応をすることができていた。
しかし、今日は違う。
グラスジュール殿下がわざわざわたしと二人きりで話をしたいと言ってきたのだ。
もしかして、
「愛の告白」
ではないだろうか?
「リランドティーヌよ、わたしはそなたのことが好きになってしまった!」
そう言ってわたしを抱き寄せるつもりなのだろうか?
その後、キスをして、勢いののままに二人だけの世界に入っていったりして……。
うふふ。
ああ、急激に恥ずかしくなってきた。
わたしが妄想にいそしんでいると、グラスジュール殿下が咳払いをする。
そして、
「どうした? 心ここにあらずという感じじゃないか? 大丈夫か?」
と言ってきた。
「面白い」
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