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第六十八話 治癒魔法とグラスジュール殿下

 

 グラスジュール殿下は国王陛下の言葉に対し、少し考えていたのだけれど、やがて、


「父上、ではまず侍医に感謝したいと思います」


 と言った後、侍医の方を向き、


「ずっとわたしに尽くしてもらって、ありがとう」


 と言った。


 すると侍医は、


「今回、わたしは医療の限界を感じました。グラスジュール殿下をお救いいたしましたのは、リランドティーヌ様の魔法の力でございます」


 と言った。


「リランドティーヌの魔法の力……、そなたも父上と同じことを言うのか?」


「そうでございます」


「そうなのか……。でもそなたがわたしの治療に一生懸命努めたことには感謝をしている。それだけ今回のわたしの病気は重かったということなのだと思う。これからもよろしく頼む」


「お気づかい、感謝申し上げます」


 侍医はそう言った後、頭を下げた。


 その後、グラスジュール殿下は、国王陛下の方を向く。


「リランドティーヌがわたしを治癒魔法で治療したとおっしゃいましたが……」


「そうだ。リランドティーヌは治療魔法を使うことができるのだ。そして、その治療魔法を使って、お前のかかった重い病気を治療してくれたのだよ。どうだ、もう苦しみはないだろう?」


「父上のおっしゃる通り、もう苦しみはありません。高い熱が出てものすごい苦しみに襲われていたのが嘘のようです。奇跡だと言っていいと思います」


「その奇跡はここにいるリランドティーヌによって行われたものだ。わたしはこのものを聖女認定してもいいと思っている」


「聖女……」


「お前の婚約者は、王太子妃であり、そして王妃になっていく女性。それだけでも十分素敵であるのに、その女性が聖女に認定されるのだ。これは空前絶後のことであるし、これほど素敵なことはないとわたしは思う。このような女性と結婚できるお前は幸せものだ。リランドティーヌと一緒であれば、お前はこの王国をもっと発展させることができると思っているし、何と言っても、幸せになれると思っている」


 国王陛下は微笑みながらそう言った。


 国王陛下は微笑みながら、グラスジュール殿下の前でわたしのことを褒めてくれている。


 ありがたいことではあるのだけれど、恥ずかしい気もする。


 グラスジュール殿下はじっと国王陛下の話を聞いていたのだけれど、この話をどのような気持ちで聞いているのだろう?


 褒めすぎだと思うのではないだろうか?


 もしそうだったとしたら、逆に気を悪くする可能性もあるかもしれない。


 そうでなければいいのだけど……。


「今の話を理解してくれたかな?」


 国王陛下はグラスジュール殿下に言う。


 グラスジュール殿下はどう返事をするのだろうか?


「リランドティーヌが聖女になりうるほどのものとは、到底信じることはできません」


 そう言うのだろうか?


 今までのわたしに対する態度からすると、そういってくることも当然ありえることだろう。


 ただ、わたしが治癒魔法の力でグラスジュール殿下を治療したことは、国王陛下がグラスジュール殿下に伝えている。


 聖女になりえるものだと思われなくても、それはもともと力が足りないと思っているので、特に気にしてはいない。


 わたしがグラスジュール殿下を治療したことについても、それをもって自慢をしたいとか、気に入ってもらいたいという気もない。


「わたしはグラスジュール殿下の役に立った」


 そのことで自分自身を満足させらればそれでいい。


 既にわたしは国王陛下には褒められている。


 それだけでも十分だ。


 わたしがグラスジュール殿下を治療したことについて、わたしを褒めなくてもかまわない。


 わたしとの距離を縮めなくてもかまわない。


 そう思っていた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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