第六十七話 目覚めるグラスジュール殿下
国王陛下は、わたしの治癒魔法を聖女に認定できるほどのものだと言ってくれている。
褒めてくれるのはうれしい。
でも現時点では、今日のように全力で治癒魔法を使うと疲労困憊になってしまい、連続で使うことができない。
現時点では、回復に一日ほどはかかる。
聖女になるからには、連続で、しかも威力の強い治癒魔法を使えるようになっていかなくてはならないと思う。
それにはもっと練習と経験を積み重ねていき、能力を向上させていく必要がある。
そうわたしは思っていると、国王陛下は、
「聖女に認定できるだけの能力をそなたは持っているのだ。わたしはそう思っている」
と微笑みながら言った。
聖女と言われるのはうれしいことなのだけど……。
わたしがどう返事をしようか困っていると、国王陛下は続けて、
「リランドティーヌよ、そなたはこれから王太子妃、王妃となっていくとともに、聖女にも認定されることになるだろう。これは空前絶後のことになる。わたしはそなたの力をおおいに期待したい。そなたの力とグラスジュールの力が合わされば、これからのわが王室は、ますます発展していくことだろう」
とさらにわたしのことを微笑みながら褒めてくれている。
わたしとしては、国王陛下のこの期待に応えていきたい。
それには聖女としての力が十分発揮できるようにならなければならない。
今日のように、全力を出したとはいうものの、一度治癒魔法を使うと、一日後にならないとまた使うことができないようでは、聖女というところからは程遠い。
道のりは険しい。
しかし、国王陛下に期待をされている以上、どんなに道が険しくても、それを乗り越える必要がある。
そして、聖女認定をされ、人々を救っていく。
それがわたしの使命だと思う。
わたしは国王陛下に、
「国王陛下、わたしのことを評価していただいてありがとうございます。わたしが聖女に認定されるかどうかはわかりませんが、国王陛下のご期待に応えるべく、精進してまいります」
と返事をしようとした。
すると、
「う、う、う」
と言う声がグラスジュール殿下から聞こえてくる。
「リランドティーヌ!」
「グラスジュール殿下!」
国王陛下とわたしは、グラスジュール殿下に呼びかける。
そして、グラスジュール殿下は目を覚ました。
「グラスジュール、よかった。目を覚ましてくれて……」
涙を流す国王陛下。
「グラスジュール殿下、よかったです。よかったです」
わたしも胸が熱くなり、目から涙がこぼれてくる。
侍医はホッとしているようだ。
グラスジュール殿下は国王陛下の方を向くと、
「父上、わたしの為に付き添っていただいたのですね。ありがとうございます。お手数をおかけしてしまいまして、申し訳ありません」
と言った。
傲慢な態度を取るところしか今まで見たことのなかったわたしには、驚くべきことだった。
国王陛下も驚いているようだ。
さすがに幼い頃は違うと思うのだけれど、成長し始めた頃からは、国王陛下に対してこうしたやさしい態度を取ることは少なかったのかもしれない。
国王陛下は涙を拭くと、
「いや、お前は重い病気にかかっていたのだ。愛する我が子に付き添うのはあたり前のことだろう」
と言った後、続けて、
「わたしはただ付き添っていただけだ。ここにいる侍医はお前の為に、精一杯その力を尽くしてくれた。そして、リランドティーヌは、治癒魔法でお前の病気を治療してくれた。お前はこの二人に対しては、おおいに感謝しなければならない」
と言った。
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