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第六十五話 治癒魔法を使用し続けるわたし

 わたしの魔法の力は、弱くなっていた。


 これではグラスジュール殿下を治療することはできないかもしれない……。


 そう思って心が折れかけた時、グラスジュール殿下がわたしの手を握りしめてくれた。


 そして、その後、ソフィディーヌ様はわたしにアドバイスをしてくれた。


 治癒魔法を使うのに際し大切なこと。


 わたしは原点に帰り、心を穏やかにしていく。


 この二人のわたしに対する対応。


 それがどれほどありがたかったことだろう。


 この二人のおかげで、わたしの魔法の力は戻ってきた。


 それだけではない。


 今まで以上の力が沸き上がってくる。


 これならばグラスジュール殿下を治療できるかもしれない!


 わたしはこの力をグラスジュール殿下に流し込んでいく。


 今度こそ、グラスジュール殿下を治療するのだ!


 その強い意気込みで魔法を使っていく。


 今回はすぐに治療できそうだと思ったのだけれど……。


 グラスジュール殿下の病気は重い。


 侍医の方では、ほぼ治療が無理という状況だし、今までのわたしの魔法でも、効果は出てこないほどのものなのだ。


 魔法の力が強くなっても、すぐには効果が出てこないのは、仕方のないことだろう。


 とはいっても、グラスジュール殿下の苦しみを見ているので、短い時間で治療してこの苦しみから解放したいという気持ちは強い。


 それはあせりにつながっていく。


 あせってはいけない。


 あせってしまうと、治癒魔法が成り立つ前提の心の穏やかさが失われ、魔法の力が弱まってしまう。


 その点に注意を払いながら、魔法を使っていく。


 すると……。


 先程までと違い、グラスジュール殿下の表情が穏やかになり始めている。


 ようやく魔法の効果が現れ始めたようだ。


 これならいける!


 わたしはさらなる力を得た気がした。


 魔法の力もより一層強くなった気がする。


 わたしはグラスジュール殿下の手をしっかりと握りながら、


 グラスジュール殿下の病気が治りますように!


 と強く念じていく。


 しかし……。


 わたしはだんだん疲れてきた。


 体が重くなってきている。


 先程も魔法の力が弱くなったことがあったものの、一度は立て直すことはできた。


 しかし、今度魔法の力が弱まったら、今度はすぐに立て直すことは難しそうだ。


 一日は最低休養を取る必要があるかもしれない。


 でもそうなってしまったら、グラスジュール殿下をすくことはできない。


 なんとか今、グラスジュール殿下を治したい!


 わたしは、今、わたしが持っている力を振り絞る気持ちで、魔法の力をグラスジュール殿下に流し込んでいた。


 グラスジュール殿下、わたしのこの力、そして、病気が治ってほしいというこの思いを受け取ってくださいませ!


 わたしは、心の穏やかさを時々失いそうになりつつも、なんとか維持し、魔法を使っていく。心の穏やかさを維持し、魔法を使うことは、大変なことで、これがわたしの疲労を促進させている面もあると思う。


 せっかくグラスジュール殿下に対して魔法の効果が出始めているというのに、このままでは疲れで、グラスジュール殿下を治す前に倒れてしまうかもしれない。


 そういう弱気な心も湧いてくる。


 しかし、それでもわたしはソフィディーヌ様の期待に応えなければならない。


 わたしにしかグラスジュール殿下を治すことはできないのだ!


 そう思い、疲労と戦いながら魔法を使っていくと……。


 グラスジュール殿下の表情はすっかり穏やかなものになり、スヤスヤと眠っている。


 熱も下がったのだろう。


 今までの苦しみからようやく解放されたようだ。


 これでなんとかグラスジュール殿下の病気を治すことができたようね。


 そう思ったわたしはグラスジュール殿下への治癒魔法の使用を止めた。


 疲れた。


 今、すぐに寝たい気持ちだわ……。


 わたしはもう既に疲労困憊の状態。


 気を少しでも抜いたらこの場で倒れそうなほどになっていた。


 しかし、グラスジュール殿下の穏やかな寝顔を見ている内に、少しずつ力が戻り始めていた。


 グラスジュール殿下が目を覚ました後、言葉を交わしたい!


 それが今のわたしの目標だ。


 そして、わたしは、


「治癒魔法による治療はこれで終わりましたので、診察をお願いしたいと思います」


 と侍医に言った。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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