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第六十三話 治癒魔法の使用へ

「国王陛下は、わたしは人々の病気やケガを治療することのできる魔法を持っております」


 わたしは国王陛下にそう言った。


 驚く国王陛下。


 しばしの間、言葉がでなくなっていたのだけれど、やがて、


「それはまことのことか?」


 と聞いてきた。


「はい。本当のことでございます」


「その魔法の力で、グラスジュールを治療したいと申すのだな」


「はい。そうでございます」


 わたしがそう応えると国王陛下は腕を組み始める。


「魔法か……。そなたはグラスジュールを治せる自信があるのか?」


 国王陛下は厳しい口調で言ってくる。


 想定はしていたのだけれど、きつい。


 それでもわたしはそれを乗り越えていかなくてはならない。


「残念ながら、あるとは申せません」


「そうだろうな」


「ただ、他に打つ手がない以上、わたしは可能性にかけて、自分が持っている魔法を使いたいのです」


 国王陛下は少し考えた後、


「グラスジュールよ。わたしは魔法についての知識をある程度は持っている。しかし、医療が発達してきた今日ではもう無用の長物だと思ってきたし、世の中をまどわす存在にもなりかねないと思っていた。実際、五百年ほど前にはそれで混乱が発生している。こうした混乱は二度と繰り返したくはないので、わたしは『魔法のことを口にするのを禁止したい』と申すものの意見を支持してきた。でもさすがにこのようなことを王国法にするのは無理なので、それ以上は動いてはいない。しかし、魔法に対しては、決していい印象は持っていない。わたしは根本的に魔法が嫌いなのだ。それは、認識しておいてほしいところだ」


 と言った。


 今までその情報自体はわたしの耳にも入ってはいた。


 しかし、国王陛下にここで魔法に対し。「いい印象を持っていない」「嫌い」と直接言われると、わたしはガックリせざるをえない。


 もしかしたら、希望を持たせてくれる言葉があるのでは、という期待がないわけではなかったからだ。


 でもまだ国王陛下の話は終わっていない。


 その後の話に期待をするしかなかった。


 すると、国王陛下は話を続け始めた。


「しかし、わたしは心の中のどこかで、聖女が現れるのを期待していたところはある。この王国において医療が発達してきたとは言っても、まだまだ治すことのできない病気は多い。グラスジュールの病気はその典型的な例だと思っている。わたしはこの世の中で、そうした治すことのできない病気を治療してくれる聖女が現れてくれることを心の中では期待をしていた。わたしの心の中では、この二つのことが戦いを続けていたのだ。そうした時に、そなたは魔法のことを話してくれた、そなたは、恐らくわたしが魔法に嫌な思いを持っていると思っているのだと思う。その中で、魔法のことを話してくれたそなたの勇気は素直に褒めたいと思っている」


 これは魔法を使用してもいいということなのだろうか?


 そう思っていると……。


「それでもわたしは、魔法というものに抵抗がある。この気持ちは、なかなか弱まるものではない。この王国には大聖女様が存在していた。大聖女様自体は今でも崇敬を集めている。しかし、大聖女様を崇敬するのと、聖女を認定するのは別の話だ。その後も聖女は現れてはいたが、期待をするほどの成果は、時が経つとともに現れなくなっていった。その為、王室の多くのものがだんだん魔法を嫌うようになり、聖女に認定するものが減っていった。そして、五百年前、医療と魔法の対決が行われたことにより、その傾向はさらに加速されたと思う。聖女認定自体、その数が格段に減ってしまった。王室の多くのものが、魔法を『世を惑わすもの』として、さらに嫌うようになったのが大きいという風潮も大きくなっていった。他の王国では最近でも聖女認定ををしたところがあるのだから、この王国でもその力量があるものは今でももいるとは思う。しかし、結果的に聖女認定をされたものは百年前から途絶えてしまった。わたしも王室のその傾向に影響されていたところは大きい」


 また風向きが変わってきている。


 これは、魔法を使うのを認めないということだろうか?


 しかし、そういうことを言っていては、グラスジュール殿下が苦しむばかりだ。


 わたしは、国王陛下に、


「やはり、魔法を使った治療は認めていただけないのでしょうか? 今のグラスジュール殿下の状態を救うことのできる可能性があると思っていますので、わたしとしては、グラスジュール殿下の為に魔法を使いたいです!」


 と熱意を込めて言った。


 最後は涙声になっていた。


 国王陛下は、しばらくの間考えた後、


「わたしとしても、グラスジュールを救う手段があるのなら、それにすがりたいと思っている。その手段はもうそなたの魔法しかないようだ」


 と言った。


「それでは……」


「そなたがグラスジュールの為に、魔法を使うことを許可しよう」


 国王陛下は厳かにそう言った。


「ありがとうございます」


 わたしは頭を下げた。


 そして、グラスジュール殿下の健康回復の為、全力を尽くそうと決意をするのだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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