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第六十二話 決断するわたし

 わたしは国王陛下の許しをもらったので、自分が使える治療の魔法の話を始めようとする。


 しかし……。


 わたしはこの言葉を国王陛下に話すことについては、グラスジュール殿下のことを救いたいという気持ちがすべてに優先していたので、緊張はしたものの、いうこと自体には悩みはなかったので、国王陛下に申し出をすることができた。


 それがいざ話す時になって、


「わたしは人々の病気やケガを治療することのできる魔法を持っています」


 という言葉の重要性を急激に認識するようになった。


 ボランマクシドル王国において聖女に認定された人物はもう百年も出ていない。


 この王国内には、病気やケガが治療できる人たちについては、存在はしているものの、その力は弱いものなので、細々と受け継がれているに過ぎない。


 王室や貴族の人たちは、この魔法の知識は持っていると思う。


 しかし、実際に魔法が使用されるところを見たことがない人がほとんどのはずだ。


 そして、見たことがある人がいたとしても、さほど興味のもてることではなさそうだ。


 既に聖女認定がされなくなった百年ほど前の時点で、


「医者にはかなわない」


「医者がいればいい」


 というレベルの認識しかされていなかったのだから。


 いや、そういう認識ならまだましな方だ。


 この王国には、


「魔法は世の中をまどわすもの。王国法で禁止すべきだ」


 という強硬な主張をしている人たちが今でも存在している。


 この人たちは、聖女が活躍していた頃から存在していた。


 魔法自体が嫌いだというところから来ている主張だとわたしは思っている。


 ただ、勢力が拡大した次期はあるものの、いずれの時代でも絶対多数を占めたことはがなく、今は魔法自体が細々と続いているだけなので、今はこの主張の勢力も弱くなっている。


 しかし、禁止は行き過ぎだとしても、魔法を内心嫌っている人たちは、聖女認定がされなくなってから百年経った今ででも一定数はいる。


 国王陛下も魔法を嫌っているという話は聞いている。


「魔法は世の中をまどわすもの。禁止すべきだ」


 という強硬な主張を支持しているかどうかはわからない。


 しかし、魔法を嫌っている以上、ここでわたしが魔法のことを持ち出すことは、決していい顔はされないだろう。


 いや、それだけならまだいい。


 国王陛下が怒ってしまい、この場で婚約破棄をされかねない。


 それどころか、


「世の中をまどわそうとした悪役令嬢」


 ということで、処断される可能性さえもある。


 そうなってしまっでは、前世と結局同じになってしまう。


 考えすぎだとは思うのだけれど、その可能性がないとは言えないので、躊躇してしまう。


 しかし、そう悩んでいる間にも、グラスジュール殿下は苦しみ続けている。


 こんなところで悩んでいてもしょうがないのだけど……。


 こうしてわたしが悩み続け、黙ったままでいると、国王陛下は、


「どうしたのだ。わたしに言いたいことがあるのではないのか? 遠慮しなくてもよい。言ってみなさい」


 と心配そうに声をかけてきた。


 グラスジュール殿下はますます激しい苦しみに襲われていく。


 わたしの魔法でグラスジュール殿下の苦しみを改善し、病気を治療できるかどうかはわからない。


 しかし、その可能性があるのであれば使うべきだろう。


 この魔法を使う前に国王陛下にその使用を止められるかもしれない。


 その言葉を口にした時点でこの部屋を追い出されようとするかもしれない。


 でもその時は国王陛下に土下座をしてでも使用許可を取るしかないだろう。


 わたしはグラスジュール殿下の婚約者。


 救える可能性があるのなら、この力を婚約者の為に使うべきだ。


 もうわたしは決断するしかない!


 わたしは、ついに決断した。


 そして、国王陛下に話をし始めた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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