第六十一話 苦しさの中の言葉
「結局、グラスジュールの回復は無理だったということか……」
国王陛下はガックリし、席でうなだれる。
この王国で最高と言っていい名医の侍医も手の内ようがないようだ。
わたしも落胆せざるをえない。
その間にグラスジュール殿下の苦しみはますます増してきていた。
その表情を見ていると、何とかしたいという気持ちが湧いてくる。
わたしは病気を治療する力を持っている。
いつかは人々の治療にその力を役立てたいと思っていた。
しかし、まだ練習中だ。
しかも、人の病気に対してその力を使ったことはない。
グラスジュール殿下にこの力を使っても病気を治療できる自信はない。
この状態でもし使用しても、効果がないどころか、悪影響を与えてしまうのでは?
そういう思いも心に湧いてくる。
しかし、グラスジュール殿下の苦しみはさらに増してきていた。
グラスジュール殿下のことをなんとか救いたい!
その思いがだんだん強くなってくる。
でもまだ自信がない。
心が真っ二つに割れ始めていて、苦しくなってくる。
いったいどうすればいいのだろう……。
わたしが悩んでいると、グラスジュール殿下は苦しさの中から、
「リランドティーヌ……」
とわたしの名前を弱々しくではあるものの、口にしてきた。
これはいったいどういうことなのだろう?
わたしは困惑してしまう。
すると、国王陛下は。
「グラスジュールはそなたに好意を寄せ始めているのかもしれない。そして、そなたの救けを求めているのかもしれない。それだけそなたのことを大切に思い始めているのではないかとわたしは思う」
と言った。
わたしは国王陛下が全く予想をしなかった話をしてきたので、大変驚いた。
「わたしに好意……。わたしに救けを求める……」
「信じられないかもしれない。しかし、危篤のこの状態で、大切に思っていない人のことを口に出すことは考えにくい。そうわたしは思うのだ」
国王陛下の言葉を聞いて、わたしは胸が熱くなってくる。
「国王陛下、そう言っていただけるとありがたいです」
「いや、わたしはグラスジュールの気持ちを汲んだだけだ。とにかくまだあきらめてはいけない。リランドティーヌよ、一緒にグラスジュールの回復を祈ろう」
国王陛下はまだグラスジュール殿下が健康を回復することを信じている。
そして、グラスジュール殿下は、苦しさの中からわたしの名前を口にしてくれている。
もしかすると、たまたまわたしの名前を口に出しただけなのかもしれない。
しかし、わたしとしては国王陛下の言った通りだと信じたい気持ちで一杯だ。
わたしは国王陛下とグラスジュール殿下の期待に応えたいと思う。
それにはわたしの魔法を使う必要がある。
自信がないと言っている場合ではない。
侍医の打つ手がない以上、グラスジュール殿下を救える可能性があるのは、わたしだけだ。
わたしの魔法を使い、グラスジュール殿下を救うのだ!
わたしは、
「はい。一生懸命祈りたいと思います」
と言った後、一回言葉をを切った。
緊張してくる。
でもわたしはそれを乗り越えなければならない。
わたしは心を整えると、国王陛下に、
「国王陛下、一つお願いさせていただきたいことがございます。申し訳ありませんが、話だけでも聞いていただけるとありがたいです。よろしいでしょうか?」
と言った。
国王陛下は驚く。
その様子にわたしは、言うのは失敗だったかも、と思う。
しかし、国王陛下はすぐに落ち着き、
「言ってみなさい」
と言った。
わたしはその言葉を聞いてホッとした。
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