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第五十八話 病床

 わたしは王宮につくと、使者によってグラスジュール殿下の病床がある部屋に案内された。


 その部屋には、国王陛下と侍医の二人がいた。


 二人はグラスジュール殿下の病床のそばでイスに座っているのだけれど、グラスジュール殿下は意識を失ってしまっているようなので、沈痛な面持ちだった。


 病状の深刻さを感じさせられる。


 王妃殿下はここにはいない。


 グラスジュール殿下とは仲が悪いと聞いていたので、看病するどころか、近づくことすら嫌なのかもしれない。


 国王陛下は、わたしが部屋に入っていくと、


「急に呼び出してしまい、申し訳ない」


 とまずは謝ってきた。


 わたしは恐縮しながらも、


「いえいえ。わたしはグラスジュール殿下の婚約者なのですから、グラスジュール殿下の具合が悪くなれば、すぐにかけつけなければならない立場にいるものでございます。まして、危篤ということになれば、すべてに優先してここにかけつけなくてはならないと思っておりました」


 と言った。


「そう言ってもらえてうれしい。ありがとう」


 国王陛下はそう言った後、一旦言葉を切った。


 そして、


「グラスジュールは、ここ数日も熱があったのだが、生命の危機が迫っていたというわけではなかった。それが昨日の夜になると、熱が急激に上がり、危篤状態になってしまった。しかし、ここにいる侍医の尽力で熱は下がり、危篤状態を脱して今は小康状態になっているところだ」


 と言った。


「少し安心しました」


「ただ、これは奇跡に近い状態だそうだ。侍医の話だと、もう今晩一杯しか持たないらしい」


 国王陛下がそう言うと、侍医は、


「ここまで急激に病状が悪化するとは思いませんでした。なんとか今は少しいい方向に向かっていますが、今国王陛下が申された通り、今晩一杯が限度だと思われます」


 と言った、


 表情を変えないように努力をしているようだけれど、心はつらいのだと思う。


「今晩一杯……」


 わたしはしばし呆然とする。


 やがて、国王陛下は、


「わたしはそなたと少し話をしたいことがある。よろしいか?」


 と聞いてきた。


 それに対してわたしは、


「はい。わたしは構いません」


 と応えた。


 どんな内容か気になるものの、断るという選択肢はないだろう。


 国王陛下は、


「ありがとう」


 と言った後、


「そなたはグラスジュールの為に尽くしてくれている。ありがとう。隣の部屋で少し休んでいてくれ。もし、グラスジュールの容態が急変するようであれば、ここにある呼び鈴ですぐに呼ぶことにする」


 と侍医に向かって言った。


「かしこまりました」


 侍医はそう言って頭を下げた後、この部屋から出て隣の部屋に向かった。


 侍医が去った後、国王陛下は、


「わたしはそなたに謝りたいことがある」


 と言ってきた。


「わたしに謝ることですか? わたしのようなものが、おそれ多くも国王陛下のようなお方に謝られることなどないと存じますが」


「わたしがそなたに謝らなければならないこと。それは、そなたのことをずっと誤解してきたことだ。そなたのことを周囲のものたちは、ほぼ全員、そなたのことを『悪役令嬢』だと言ってきた。最新の情報では、そなたが変化しつつあるということだったのだが、それも、『ただの気まぐれ』ではという認識だった。わたしもその周囲の意見に影響され、『悪役令嬢』だと思ってしまっていたのだ。しかし、前回そなたがここを訪れた頃から、そなたは心の底から変わりつつあることを認識し始めた。そして、今日、そなたはすべてに優先してここにかけつけてくれた。その瞬間、一までのわたしが間違っていたと思ったのだ。恥ずかしい話だよ」


「国王陛下、わたしのようなものに、もったいない話でございます」


「少し言い訳にはなるのだが、わたしはそなたのことを今まで全く評価していなかったわけではない。優秀とは聞いていて。そういうところでは妃にふさわしいと思っていたのだよまあ、『悪役令嬢』と言われている性格の悪いところは、少しずつ直していくしかないと思っていたのだよ。ただ先程も申した通り、周囲のものたちがそなたのことを悪く言っていたので、次第にその意見に影響され、性格を治すのは無理ではないかと思い始めていたのだ。それが、そなたが変化しているということを受け入れる妨げになってしまった。その点は申し訳なく思っている」


 婚約式の時、周囲が厳しい表情をしている中で、国王陛下はただ一人だけ少し柔らかい表情をしていた。


 もともとグラスジュール殿下とわたしの婚約に反対をしていなかったという話なので、この時もその意志表示をしてくれていると思ってはいた。


 しかし、それはグラスジュール殿下に対する信頼からきているもので、わたしのことはほとんど考慮していないものだと思っていた。


「面白い」


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