第四十五話 関係の改善
ところが、グラスジュール殿下の婚約者の有力候補にわたしがなってしまったので、ブリュマドロンさんは相当悔しがっていた。
ブリュマドロンさんがわたしに対して、このような話をするのは初めてのことだった。
情報としては、グラスジュール殿下とブリュマドロンさんがいとこどうしであることは知っていたけれども、それ以外のことは初耳と言ってよかった。
家格からすると、グラスジュール殿下の婚約者にふさわしいのはボードセルテール公爵家の令嬢であると言う話は、わたしの幼い頃からあった。
しかし、水面下で動いていた話なので、本格的な話だということを周囲の人たちは聞かされていらず、わたしも聞かされてなかった。
それに対して、グラスジュール殿下やブリュマドロンさんの方は、ある程度の話は聞かされていたようだ。
ブリュマドロンさんが先程、
「フィリシャール公爵家とのつながりを深めたいという、ボランマクシドル王国王室の『政略結婚』という面から、わたしは候補になることができなかった」
と言っていたのは、幼い頃からその話を聞かされていたからだと思う。
その際、フィリシャール公爵家の令嬢が婚約者候補になっていることも聞かされていたのだろう。
それでも今までは、ずっと水面下の動きだったので、わたしのことを嫌う理由の一つになったとは思うけれども、そのことをわたしに直接言うことは今までなかった。
しかし、最近、グラスジュール殿下の有力な婚約者候補としてわたしの名前が出てくるようになったので、悔しさが増大したブリュマドロンさんとしては、今日、ここで話をしたくなったのだろう。
わたしは、グラスジュール殿下の婚約者候補になれなかったことについて、ブリュマドロンさんに同情した。
とはいうものの、わたしが、
「ブリュマドロンさんに同情します」
と言ったのでは、プライドの高いブリュマドロンさんは、怒りだすに違いない。
これについては何も言わない方がいいだろう。
わたしにとって収穫と言えるのは、ブリュマドロンさんがグラスジュール殿下のことを、
「酷い方ではない」
と言ってくれたことだ。
これからグラスジュール殿下と会い、婚約しようとしているわたしにとっては、勇気づけられる言葉。
もちろん、グラスジュール殿下に好意を持っているブリュマドロンさんの言葉であるということは、頭に入れておかなければならないだろう。
しかし、もし話半分だったとしても、今まで効いてきた評判が悪いものばかりだったので、救われた気がしていた。
ただ、ブリュマドロンさんは、
「素敵なグラスジュール殿下とリランドティーヌさんが婚約するのは、悔しくてしようがない」
という気持ちが主要なところを占めていると思う。
それは理解をする必要があると思った。
しかし、一方で、ブリュマドロンさんはグラスジュール殿下とわたしの関係を心配しているのではないか、とも思っていた。
もちろん、その心配は、グラスジュール殿下が九とすると、わたしが一ぐらいだろう。
もしかしたら、九十九対一かもしれない。
それでもわたしはブリュマドロンさんの心配する気持ちに対して、感謝をしておきたかった。
わたしはブリュマドロンさんに、
「わたしのことを心配してありがとうございます」
と言った後、微笑んだ。
ブリュマドロンさんは驚いたものの、すぐさま態勢を立て直し、
「今日のあなたと話をしていると、なんだか調子がおかしくなってくるの。まあもういいわ。これで今回の話は終わりにしてあげる、どうやらまだまだわたしに服従する気がないようね。でもいつかはあなたを服従させる! とにかくいい気にはならないことね」
と言った後、高笑いをした。
しかし、高笑いをしても、傲慢そのもので勢いのあった今までと違い、その勢いはわたしとこうして話をしている内に、少し弱くなったように思えた。
これからもこういう傾向は続くのだろうか?
そうなってくると、ブリュマドロンさんとの関係を改善できる可能性が出てくると思う。
「ありがたいお言葉でございます」
わたしはそう言った後、頭を下げた。
そして、頭を上げると、微笑んだ。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
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