第四十三話 ライバルとの対決
「話はそれで終わりですね。それではごきげんよう」
わたしはそう言った後、微笑みながら自分の席へと向かおうとする。
「リランドティーヌさん、待ちなさい! まだ話は終わっていませんわ!」
ブリュマドロンさんは、あわててわたしを呼び止める。
「もう話が終わったと思いましたので、自分の席へ行こうとしているのですが、まだ話があるのでしょうか?」
「話があるからあなたを呼び止めたのです」
「わたしはもうブリュマドロンさんとの話は終わったものと思っております」
「あなたは、わたしに服従したのではないのですか? 服従したのであればわたしの指示にすぐに従いなさい!」
わたしはそれには応えず、再び自分の席に向けて歩きだそうとする。
しかし、
「リランドティーヌさん!」
というブリュマドロンさんの声でまた足を止められた。
「またわたしのところから去っていこうとするのね! 話があると言っているのに、聞こうとしないんだから……。どういうつもりなのかしら!」
ブリュマドロンさんは、一回言葉を切った後、続けて、
「ちょっといいかしら。二人きりであなたに話をしたいことがあるの」
と言うので、わたしはやむをえず、ブリュマドロンさんに従って廊下に出る。
そして、付近に誰もいないところにくると、ブリュマドロンさんは、
「わたしはね、あなたにもう一つ言いたいことがあるの。わたしにこれから服従するからには、グラスジュール殿下のお妃になることがほぼ決まったからと言って、いい気にならないでほしいのよ。わたしの叔母がグラスジュール殿下のお母様になっているので、グラスジュール殿下はわたしのいとこになる。この王国では、他の王国と同様に、いとこどうしの結婚は可能よ。本来だとわたしもグラスジュール殿下の婚約者候補になることはできたの。でも、フィリシャール公爵家とのつながりを深めたいという、ボランマクシドル王国王室の『政略結婚』という面から、わたしは婚約者候補になることができなかった。まあ、どちらにしても、いとこが王妃殿下になった例はもともと少ないので、幼い頃から無理だろうと思ってあきらめていたので、グラスジュール殿下の婚約者になる人に対しても、一応祝福するつもりでいたわ。でもさすがにあなたが婚約者候補として有力だと聞いた時は、腹が立ったの。傲慢な態度をいつも取り、わたしのことを敬わず、服従しない人がなぜ? と思ったわ。どんな人が婚約者になっても、一応認めようと思っていたわたしだけれど、あなただけは絶対に認めたくなかった。わたしではなくて、こんな人が婚約者の有力候補になっていると思うと悔しくてしょうがないわ」
と言った。
そして、一旦言葉を切った後、
「あなたはグラスジュール殿下のことをどう思っているの? 『好き』なの? 『愛』してるの?」
と聞いてくる。
これは難しい話だ。
わたしはグラスジュール殿下とは、あいさつぐらいしかしたことのない関係。
「好き」
「愛」
という以前のところだ。
今はまずグラスジュール殿下がどういう人物なのか?
というところがどうしてもわたしの心の中を占めてしまっている。
グラスジュール殿下は悪評を立てられていて、嫌でもその噂がわたしの耳に入ってくる。
それが毎日なので、わたしとしてもその噂が頭から離れないのだ。
グラスジュール殿下については、大きくまとめると、
「暴君になりうる存在」
という見方が今の時点で大勢を占めるようになっている。
わたしとしては、婚約者となる方がそれでは困る。
結婚しても幸せになれなければ、前世とは違う意味で悲惨な人生になってしまう。
ただ、グラスジュール殿下の悪評が本当でない可能性があるという気持ちもわたしの心の中にはあった。
また、異母弟を王太子に擁立したいと思っている継母の攻勢を避ける為、わざとそういう態度を取っている可能性があるかもしれないと思っていた。
わたしはグラスジュール殿下に対して希望を持っていた。
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