第四十一話 一歩前進
わたしも負けずに、
「あなたこそ傲慢だと思います、わたしはこの家の令嬢なのです。あなたにわたしを追い出す権限はありません。全く腹の立つ人です。あなたのことなど誰が母親だと認めるものですか!」
と叫び返していた。
それが、昨日は、このような激しいやり取りをすることはなかった。
継母の方は、最初は言う気満々だったようだけれど、わたしが微笑み続けていたので、そのような気力が次第に弱くなり、言うことができなくなってしまったようだ。
いつもはわたしたちのやり取りを、継母側に立って見ている父とコルヴィテーヌ。
わたしたちが言い争いをしていると、時々、
「全く、お前はなんて傲慢な子なんだ……。父として恥ずかしい。リランドティーヌよ、もう少しお母さんを敬いなさい!」
「お母様に逆らうなんて、妹として恥ずかしいです。姉上、自分がまともな人間だと思っているのでしたら、お母様をもっと大切にしてください」
と言うようなことを言って継母を支援する。
しかし、昨日はこの二人も、継母を支援する気力が弱くなって行ったようで、このような言葉を発することはなかった。
こうして昨日は、今までのような厳しい雰囲気にならずにすんだ。
三人との関係は、一歩前進したと言えると思う。
とはいうものの、三人のわたしに対する敵意は持ったままだ。
その敵意を弱めていき、関係を改善していくとなると、道は遠い。
しかし、それでも改善をする努力はすべきだろう。
わたしとしては、昨日の三人との対応が、わたしのことを見直すきっかけになってほしいと思っている。
そうなれば、わたしたちは関係改善へと向かうことになる。
また、使用人たちにも、わたしが生まれ変わろうとしていることは、昨日の三人とのやり取りを通じて、少し理解をしてもらえたと思っている。
まだまだこれからというところであるものの、このままわたしが生まれ変わる為の努力を一生懸命通していけば、フィリシャール公爵家内での評判もだんだん良くなっていくだろうと思っていた。
さて、そうなると次は学校でのわたしの評判を良くしていく必要がある。
学校の中でも、既にわたしは「悪役令嬢」的な地位を獲得していた。
獲得していたというのも、おかしな話ではあるのだけれど。
前世と同じく、
「わがままで傲慢な態度を取るお嬢様」
というのがわたしに対する学校内での印象。
実際、そうしてきたのだから仕方がない。
今日からすぐにその印象を変えていく必要があるだろう。
ではどのようにすればいいのだろう?
まずは、クラスメイトに対するあいさつからだろうか?
今まではあいさつをされても無視をするか、厳しい表情で返していた。
まず、そこからわたしに対して、
「恐ろしい」
という印象ができてしまったのだろう。
実際に、今までのわたしは、身分の下の人たちと会話をするのが嫌なだけではなく、あいさつさえも嫌だった。
今思うと、公爵家の令嬢というプライドのかたまりだったのだと思う。
これでは学校内で恐れられ、嫌われるのもあたり前だ。
まずはあいさつから。
それも満面の微笑みで、
「みなさん、ごきげんよう」
と言うのだ。
そして、わたしを恐れているクラスメイトに対して、わたしが、
「生まれ変わっていく決意」
をしていることを伝えていこうと思っていた。
そうすれば、まずはクラスメイトの中で、そして、やがては学校全体で、わたしの印象が変わっていくのではないかと期待をしていたのだった。
ただ、クラスメイトで一人、今までわたしと毎日、嫌味の言い合いをしていた女性がいる。
ボードセルテール公爵家令嬢のブリュマドロンさん。
彼女とどう接していくべきか?
このことは難しい問題なので、考えるのは後回しにしてきた。
相手にしないことが一番いいのだけれど、わたしは彼女の攻勢に耐えることができるのだろうか?
そのことで悩んでいる内に馬車は学校に着き、わたしは教室に向かっていく。
悩んでいても仕方がない、
まずはブリュマドロンさん以外のクラスメイトとの関係を改善することが優先だ。
教室に入ったら、まずは明るいあいさつをしよう!
そう思い、わたしは教室に向かう。
そして、教室に入ると、そこには……。
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