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第四十話 学校へ向かうわたし

 その翌日。


 朝、わたしはいつものように馬車で学校に向かっていた。


 昨日、前世の記憶が戻ってきたわたし。


 多分、通常であればうれしいことの方が多いのだろう。


 しかし、わたしにとっては、嫌なことの方がはるかに多い、


 何と言っても、


「婚約破棄」


「家からの追放」


 という、貴族令嬢としては最悪の状況が続き。最後には、


「処断」


 をされて、生命を奪われてしまうのだ。


 前世の最後において、「処断」をされたことは、わたしの心の底に大きな傷を残している。


 今までは、そのことを思い出すことがなかったので、その傷がうずくことはなかったのだけれど、今はその傷がうずいてしまう。


 今世では絶対にそのようなことは避けたい!


 その気持ちを強く持ち始めていた。


 しかし、残念なことに、今のわたしは既に「悪役令嬢」という存在になっていた。


 このままでは前世と同じ道をたどってしまうだろう。


 ただその為には、わたし自身が生まれ変わらなければならない。


 そう思い、まず執事モイシャルドさんと侍女リディレリアさんへの対応を変えることから始めた。


 そして、夕食会において、父と継母、そして異母妹のコルヴィテーヌに対する対応も変えた。


 傲慢な態度を捨て、心やさしく微笑むことを基本としたのだ。


 その効果は、すぐには出ないだろう。


 実際、モイシャルドさんやリディレリアさんは困惑気味のようで、わたしとの距離を縮めるのは躊躇しているようだったし、父たちとはもともと仲が良くないので、わたしの態度の変化については、好意的ではないように思えた。


 しかし、わたしは昨日の対応によって、それぞれの人たちとの関係は前進したと思っている。


 まずはリディレリアさんについて。


 リディレリアさんは、わたしのことを、初めて会った時からずっと恐れていた。


 その状況は、昨日、わたしとの話が終わった後も変わらないように思えた。


 ところが、今までと違う対応があった。


 部屋を出る前、わたしに対して少し微笑んでくれたのだ。


 そして、モイシャルドさん。


 モイシャルドさんは、忠実に職務をこなす人で、いつも表情を顔には出さない。


 とはいうものの、他の人にはわかるかどうか微妙な範囲で、わたしに対して渋い表情をすることがある。


 ただ、それは長年接しているわたしだからこそ把握できるものだ。


 モイシャルドさん自身も把握していないかもしれない。


 いずれにしても、わたしのことを内心嫌っていることは間違いなさそうだ。


 昨日、モイシャルドさんはわたしと話をしていたのだけれど、そのほとんどの時間は表情を変えることはなかった。


 しかし、ほんのわずかながら渋い表情をしていた時があったので、わたしに対する印象も、いい方向に変わったようには思えなかった。


 そのモイシャルドさんも部屋を出る前に、わたしに対して、ほんのわずかな時間ではあるものの微笑んでくれた。


 この二人の微笑みは、わたしが生まれ変わろうとしていることに対して、期待をしてくれているから生まれてきたのだと思う。


 今までの関係からすると、大きな前進だと思っている。


 この二人とわたしの関係とは違い、父、継母、異母妹の三人とわたしは、お互いに嫌い合っている関係だ。


 特に継母とは、会う度に嫌味を言い合う仲。


 昨日、わたしは継母に何を言われても微笑んでいた。


 決して、怒りが沸いてこなかったわけではない。


 今思うと、よく耐えきったと思う。


 昨日のわたしの努力の結果、三人との仲の悪さも、少しは改善された気がする。


 この三人と夕食会等で席を一緒にする場合、特に継母とは言い合いが続き、いつも最後には、


「リランドティーヌよ、あなたのようなこんな傲慢な人は、わたしのでも何でもない。いつかこの家から追い出してやるわ!」


 とわたしに対して叫んでいた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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