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第三十八話 使用人に対する対応

 コルヴィテーヌはわたしのことをいかにも心配しているように思わせておいて、自分が得をする方向に持っていくようにするという言動が最近目立つようになった。


 頭がいいだけに、直接的にわたしを痛めつけようとする継母よりも、怖い存在になり始めていると言っていい。


 前世でもわたしの継母と異母妹は、手を結んでわたしの婚約を破棄へと導いた。


 今世でも、前世と同じ人間とはないとはいうものの、継母と異母妹はわたしを敵だと認識している。


 そして、今世では父までもが手を組んでいて、わたしをを敵と認識している。


 だからといってわたしが三人を敵だと思って対応したのでは、相手の思うつぼ。


 そして、もう一つ考慮しなければいけないのは、わたしたちの給仕をする使用人たちのこと。


 本人たちは聞きたくはないと思うのだけれど、こうした夕食会等の度に、使用人たちはわたしたちの言い合いを嫌でも聞かされている。


 わたしは前世でも今までの今世でも、使用人がわたしのことをどう思うと、一切気にすることはなかった。


 しかし、このことを放置していたのはわたしの失敗だった。


 継母との言い合いが主になるので、普通であれば、継母とわたしの両方に対して使用人たちは、いい思いをもたないはずだ。


 ところが継母は、使用人たちの評判はそれほど悪くはない。


 わたしの方が、はるかに評判が悪いのだ。


 今までのわたしは、使用人たちを粗雑に扱っていたので、評判が悪くても仕方がない。


 でも継母の方だって、大切に扱っているとは言い難い。


 粗雑に扱っているのは、わたしと同じだと思う。


 なぜだろう?


 よくわからないところはあるのだけれど、一つ考えられることは、わたしとの比較だろう。


 わたしは今まで使用人たちに対し、ささいなミスで怒ったり、嘲笑したりしてきた。


 リディレリアさんに対するほどではものの、土下座を強要したこともある。


 今の自分からすると、どうしてこういう恥ずかしいことをしてきたのだろうと思う。


 継母は、使用人たちがミスをした場合、怒ったり、嘲笑をしたりするところはわたしと同じだった。


 しかし、大きく違うところは、土下座をさせなかったことだ。


 また、使用人全体を粗雑に扱っていたわたしに対し、継母は、気に入った使用人を優遇するようにしていた。


 その為、使用人たちは、わたしよりも継母の方がましだと雰囲気になってしまう。


 このことがフィリシャール公爵家内に与える影響は決して少なくはない。


 積極的な支持ではなくても、継母をする勢力の増大につながってしなうからだ。


 前世でも状況は同じだった。


 前世でも、使用人たちの思いはともあれ、使用人たちが継母を支持するようになってしまったことが、継母の勢力増大の一因となり、わたしが婚約を破棄されることにつながっていったのだ。


 こうしたことも考慮していかないといけないのは、わたしにとって頭の痛い話。


 しかし、今までのことを思うと、使用人たちの支持は必要だ。


 使用人たちの支持を得ることで、継母が優勢な今のフィリシャール公爵家内の雰囲気を少しずつ変えていけるのではないかと思っている。


 いや、また損得の方向に心が傾いてしまった。


 それではいけない。


 わたしは一生懸命仕えてくれている使用人たちの心を痛めつけるようなことをしてきた。


 まず一人一人に詫び、これからは一人一人を大切に扱っていきたい。


 ただ、今日のところは、そうすることが難しいので、まずは言い争いをせず、微笑んでいるわたしを使用人たちに印象づけていきたい。


 そこから使用人たちのわたしへの意識を変えてもらうのだ。


 そして、最終的には、使用人たちといつも笑顔で接し合えるようになりたい。


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