第三十一話 期待に応えていきたい
ソフィディーヌ様がこの場を去った後、改めてわたしはこれからのことについて考えていた。
わたしは、前世の記憶を思い出し、自分が「悪役令嬢」と認識されていたことを認識した。
わがままで傲慢な態度を取り、領民には重い税を取り立てていた前世のわたし。
そのことが原因で、わたしは、
「婚約破棄」
「公爵家を追放」
「処断」
をされることになってしまった。
そして、今も「悪役令嬢」だと多くの人たち認識されているので、このままの状態で進んでいくと、今世も前世と同じ運命をたどりかねない。
そこで、わたしは自分を磨き、傲慢な態度を心やさしい態度に変えていくことによって、周囲の評価を良いものに変えたいと思っていた。
そうしていけば、前世のときのような悲劇は避けられ、グラスジュール殿下と婚約し、結婚して幸せになっていけるのでは、という期待を持つようになっていた。
今までのわたしから生まれ変わるつもりで、これからの人生を生きていこうと思っていた時、ソフィディーヌ様がわたしのところに現れた。
ソフィディーヌ様は、わたしがこの王国の人々を救う使命を持って生まれてきているということを伝えてきた。
これは衝撃的なことだった。
今まで周囲の人々に迷惑をかけてきたと言っていいわたしが、人々を救う立場になるというのだ。
前世を含めて、今までのわたしの生き方から百八十度変わることになる。
それだけではない。
過去世のわたしはそうしたことを行ってきたという。
その話を聞いて、わたしはより一層の衝撃を受けた。
一体、前世と今世の今までのわたしは何をしてきたのだろうと思った。
そして、どうして人々を救うという前世より前の過去世のようなことができなかったのだろうと思った。
ソフィディーヌ様が現れる直前のわたしも、生まれ変わる決意をしていた。
グラスジュール殿下の妃としてふさわしい女性になりたいと思うようになっていた。
しかし、それだけでは足りない。
これからは、自分の魔法のレベルをどんどん上げて、国民を救っていく必要がある。
そのことを含めて、わたしは生まれ変わらなければならない。
ただ、言うこと自体は容易なのだけれど、実際に行うとなると難しい。
わたしにできるのだろうか?
どうしても弱気な気持ちはある。
なんといっても、まず周囲の評判を良くしなければならない。
今までのわたしは、嫌味を言いまくり、傲慢な態度を取りまくっていた。
フィリシャール公爵家において、父と継母以外の人たちは、わたしよりも立場が下なので、言い返すことはなく、わたしに言われるままになっていた。
異母妹のコルヴィテーヌも同じ状況だ。
わたしはそういった人たちが悔しさを我慢しているのを見て、高笑いをしていたのだけれど、内心は悔しくてたまらなかったのだと思う。
わたしはそうして、フィリシャール公爵家の人々の心を苦しめてきたのだ。
継母は、義理ではあるものの母親だということで、立場はわたしよりも上。
その為、継母が先にわたしに対して嫌味を言ってくることの方が多かった。
とは言っても、わたしはすぐに反撃するので、一方的にやられることはない。
そのまま言い争いになることも多かった。
お互いに高笑いをし、嘲笑し合うことも少なくはなかった。
今思うとわたしたちはお互いに心を苦しめ合ってきたのだ。
こうした状況になったのは、継母がこの家に来てから、わたしに対して、衣食住で酷い仕打ちを加えてきたことが大きい。
父もそれを支持するどころか率先して推進するほどだったし、コルヴィテーヌも支持をしていた。
フィリシャール公爵家での地位は父と継母の方が上。
その為、抗議をしても全く受け入れられることはなかった。
そこで、この仕打ちに対して、
「他の誰にも負けない!」
と強く決意したことから、嫌味を言いまくり、傲慢な態度を取るようになった。
もともとわたしがわがままな面があったことも影響ているのだけれど……。
こうしてわたしは、前世と同じく、悪役令嬢という存在になっていた。
わたしの評判は悪くなる一方だった。
この状況を改善していく為には、大変な努力が必要だ。
そして、いくら父と継母から受けた酷い仕打ちが発端だからと言っても、自分の間違いは反省しなければならない。
気が遠くなってくる。
それでもわたしは進まなければならない。
ソフィディーヌ様はわたしに期待をしてくれている。
その期待に応えていきたい。
わたしは改めて、今の自分から生まれ変わろうと決意をした。
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