第三十話 グラスジュール殿下のこと
ソフィディーヌ様の期待に応えられるかどうかはわからない。
そして、今の魔法の力をどこまで高めていけるかということはわからない。
しかし、一生懸命努力するしかないと思っていた。
「それではこれで、自分の世界に戻ろうと思いますが、よろしいでしょうか?」
ソフィディーヌ様がそう言ってくる。
わたしはこの機会に一つ聞いてみたいことがあった。
「ソフィディーヌ様、申し訳ありませんが、一つ教えていただいてよろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
わたしは、
「ご存じであれば教えていただきたいのですが、わたしが婚約しようとしているグラスジュール殿下とわたしは、そのまま結婚することができるのでしょうか? 結婚できたとしても幸せになることができるのでしょうか? いい方向に進むかどうか、という方向性だけでもご存じでしたら襲えていただけるとありがたいです」
と言った。
それに対し、ソフィディーヌ様は、
「わたしはグラスジュール殿下のことを深く把握しているわけではありません。またリランドティーヌさんの運命についても、そこまで深く把握しているわけではありません」
と言った。
「そうなんですね……」
「リランドティーヌさんのように、大きな使命を持ってこの世に生まれ、そして、生きている方については、あの世にいるその方との関係が深いものの話を聞くことのできる態勢になった時、その使命についての話と、それについてのアドバイスを受けることができます」
「わたしが先程からソフィディーヌ様と話をすることができているのも、ソフィディーヌ様とわたしの関係が深いからなのですね」
「そうです。リランドティーヌさんがあの世にいる時は、わたしが教師でリランドティーヌさんが生徒の関係になっているのです。そこで、病気やケガの治療の魔法と、心の癒しの魔法の研究をそこで行っています」
わたしたちはそういった深い関係なので、ソフィディーヌ様はわたしのところに現れてアドバイスをしてくれたのだと思う。
前世でソフィディーヌ様と話すところまで行かず、処断されてしまったのは、とても残念なことだ。
申し訳ない気持ちで一杯だ、
ソフィディーヌ様は続けて、
「ただ、これからの人生のことについては、その方の人生の方向性しか情報は与えられていません。したがって、リランドティーヌさんのこれからの運命については、わたしもその方向性しか情報を与えられていないのです。その点は申し訳ありませんがご理解ください」
と言った。
「やはり、無理な話ですよね。こういうことを伺ってしまいまして、申し訳ありません」
これは仕方のないことだと思う。
聞きたい気持ちは強いのだけれど、方向性以外の情報を持っていないということなので、ここでそれにこだわるのは、わたしのわがままになってしまうだろう。
「ただリランドティーヌさんがそのことを聞きたいという気持ちは理解しています。前世でのリランドティーヌさんは婚約を破棄されただけではなく、家を追放された後、処断されてしまいました。今世ではそういうことは繰り返したくないと思っていると思います」
「おっしゃる通りでございます」
「それでは方向性について、リランドティーヌさんに話をしておきましょう」
「よろしくお願いします」
どういう話をソフィディーヌ様はしてくれるのだろうか?
「前世のオーギュドリュネ殿下と違って、今世のグラスジュール殿下は、リランドティーヌさんと理解をし合える可能性があります。今、リランドティーヌさんは自分を磨き、この魔法の力を強くする努力をしようとしていますが、そのことは、グラスジュール殿下にリランドティーヌさんを理解してもらうという意味でも大切なことです。リランドティーヌさんの方も、もちろんグラスジュール殿下のことを理解する努力をすると思っています。そうしたことを続けていけば、グラスジュール殿下と相思相愛になっていくと思っています。そして、婚約を破棄されるほどの悪評が立つことなくなり、人々に尊敬される立場になっていくことができます」
「自分を磨き、この魔法の力を強くしていく努力を行い、グラスジュール殿下とお互いに理解を深め合っていけば、相思相愛になっていき、婚約破棄をされることはなく、フィリシャール公爵家を追放されて、処断されることもなくなる、と思っていいということですね?」
「そう思っていいと思います。リランドティーヌさんが一生懸命努力をすれば、必ずいい方向に行きます。そして、聖女という尊敬される対象になっていくでしょう」
「ありがとうございます。それだけ教えていただいただけでも、とてもありがたいと思っています」
わたしはホッとした。
「ただ、これは可能性の話です。リランドティーヌさんの運命を切り開くのは自分自身です。そのことを心の中でいつも思っていてください。リランドティーヌさんが毎日一生懸命努力をしてこそ、運命は好転していくのです」
「ソフィディーヌ様のお言葉をいつも心の中で想うようにいたします」
「それではリランドティーヌさん。申し訳ありませんが、わたしは自分の世界に戻りたいと思います。わたしは、リランドティーヌさんが一番いい方向に進んでいくことを強くお祈りいたします」
「ソフィディーヌ様、ありがとうございます」
わたしはそう言って、頭を下げる。
すると、ソフィディーヌ様は、微笑みながら、
「わたしはあなたの幸せを誰よりも強くお祈りいたします」
と言った後、この場を去って行った。
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