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第二十七話 大聖女様のお言葉

 ソフィディーヌ様はわたしのことを褒めてくれている。


 それはうれしいことではあるのだけれど、わたしとしては前世より前の過去世のことも知りたいと思う。


「わたしは前世以前にも、生きていたことがあるということでしょうか?」


「もちろんです。人間というのは、あなただけではなく、遠い昔から転生を続けてきた存在なのです。人間は転生を繰り返すことにより、様々な経験をして能力を向上させていくのです」


 ソフィディーヌ様はそう言ったのだけれど、その点はどうも理解ができない。


 前世までは思い出すことができたので、その存在を知ることはできている。


 しかし、それ以前のことは思い出すことができない。


 思い出すことができれば、ソフィディーヌ様の話も理解できるのだけれど……。


 わたしがそう思っていると、ソフィディーヌ様は、


「過去世のことは、前世のことを思い出することのできたリランドティーヌさんのような優秀な方であれば、いずれ思い出すことができることでしょう」


 と言ってくれた。


 その言葉を信じたいと思う。


 わたしはソフィディーヌ様の言葉に対し、


「そう言ってくださるとありがたいです。そういう日が来ることを信じたいと思います」


 と応えた。


 ソフィディーヌ様は微笑みながら、わたしの言葉にうなずくと、


「さて、それでは今日、わたしがリランドティーヌさんの前に現れた理由を説明しましょう」


 と言った。


「よろしくお願いします」


 わたしがそう言った後、ソフィディーヌ様は説明をし始める。


「リランドティーヌさんは、先程も申しました通り、過去世においては、その能力を発揮し、人々を救ったこともありました。その時もこうしてわたしが目の前に現れて、力を増大させる為のアドバイスをしておりました、しかし、前世のリランドティーヌさんは、残念ながらその力を発揮する前にこの世を去ってしまいました」


「もしわたしが処断をされずにそのまま生きていたら、ソフィディーヌ様のアドバイスを受けることができたのでしょうか?」


「ただ生きていればいいというものではなく、その魔法で人々を救いたいという強い意志がなければなりません。残念ながら前世のリランドティーヌさんには、その強い意志がありませんでした」


 わたしは前世で「悪役令嬢」としての人生をおくっていて、人々を救う意志はなかったわけではないのだけれど、その意志は弱かった。


 ソフィディーヌ様のアドバイスを受けることができなかったのは、当然とも言えることだったのだろう。


「その点、今世でのリランドティーヌさんは、人々を救いたいという強い意志を持ち始めています。そこで、わたしは、過去世のリランドティーヌさんと同じぐらいまでリランドティーヌさんの力を増大させる為のアドバイスをしようと思いました。これがこの場に現れた一番目の理由です」


「わたしへのアドバイスをする為に、この場に来られたということですね。わたしはこの魔法の力の増大の仕方がわからなかったので、とてもありがたい話だと思っています」


「そう言っていただけると、わたしとしてもうれしいです」


 ソフィディーヌ様は微笑みながらそう言った後、話を続けていく。


「そして、この場に現れた二つ目の理由は、あなたへのお願いをすることです」


「わたしへのお願いですか?」


「リランドティーヌさんがこの魔法の力を増大させていけば、聖女になることができるとわたしは信じております。そして。聖女になった後は、この世の中の為に、この力を使っていただきたいと思います。その力が最大にまで到達することができれば、寿命を迎えている以外の人々について、どんなに重い病気やケガであっても治癒ができるようになります。最大にまで到達できなかったとしても、多くの人々をすくことができるようになります。わたしはリランドティーヌさんに、この世の中でつらく苦しい思いをしている人々をこの力で救ってほしいのです。そして、この地では認定されたことのない聖女を、リランドティーヌさんの手で養成し、将来も人々を救える体制を作ってほしいのです」


 とわたしに対して熱意を込めて言った。


 聖女。


 今のわたしにおとっては、はるかに遠い存在。


 まずわたしは聖女になれるのだろうか?


 そして、わたしはソフィディーヌ様に依頼をされるほどの能力を持っているのだろうか?


 そう思い、


「わたしのようなものが、聖女になり、人々を救うことができるのでしょうか? 自信がありません」


 とわたしが言うと、ソフィディーヌ様は、


「リランドティーヌさんならできます。過去世において、実際にリランドティーヌさんはしてきたことなので、自信を持ってください。いや、これはリランドティーヌさんでなければできないことなのです」


 と言ってくれた。


 そこまでの能力がわたしにあるのだろうか?


 その自信はなかなか湧いてこない。


 しかし、過去世のわたしがしてきたことであれば、できないことはないかもしれない。


 何と言っても、ソフィディーヌ様直々のお願いだ。


「大聖女」であるソフィディーヌ様にこれほどまでに期待をされている。


 ここで、その期待に応えないのは、後でおおいに後悔するだろう。


 この期待には応えなければならない。


 そう思ったわたしは、ソフィディーヌ様に対し、


「そう言っていただいて、うれしいです。まずは、わたしの力を向上させ、ソフィディーヌ様のご期待に沿うことのできるように、聖女を目指して一生懸命努力していきたいと思います」


 と応えた。


 ソフィディーヌ様は、少し涙声になりながら、


「わたしのお願いを聞いていただいて、ありがとうございます」


 と言ってわたしに頭を下げた。


 わたしも少し涙を流しながら、


「こちらこそ、わたしのことを高く評価していただいてありがとうございます」


 と言って頭を下げた。


 ソフィディーヌ様は、頭を上げ、涙を拭くと、


「それではアドバイスをいたしましょう」


 と言った。


「よろしくお願いします」


 わたしがそう言った後、ソフィディーヌ様は、


「リランドティーヌさんは今までどういう気持ちでこの魔法を使ってきたのでしょうか?」


 と言った。


「わたしはまだ自分にしか魔法を使ったことがないのですが、その時、『この病気が治りますように』『このケガが治りますように』という気持ちを持って、その魔法を使いました」


「その魔法によって、リランドティーヌさんの病気やケガは治りましたか?」


「わたしの魔法の力は弱いので、いずれも軽いものにしか効果はありませんでした」


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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