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第二十五話 希望

「悪役令嬢」として生きていた前世のわたしにとって、嘲笑されるということは、腹立たしいことこの上ない。


 ルラボルト王国の国王陛下や王妃殿下、そして、オーギュドリュネ殿下は、この魔法があるということ自体は認識していた。


 しかし、三人ともその魔法の意味を理解していなかったので、高笑いはしないにしても、決して高い評価をすることはなかったと思う。


 それどころか、


「余計な能力を持っている」


 と思われて、婚約破棄を促進することになったかもしれない。


 この力を持っていても、何の役にも立たないと思ったわたしは、この力を生かす方法を検討しないまま過ごしていく。


 そして、処断を迎えることになってしまった。


 今思うと悔いが残る。


 この力をただ持っているのではなく、世の中に役立てていければ、「悪役令嬢」的な悪評はなくなっていき、オーギュドリュネ殿下に嫌われることはなかったかもしれない。


 そして、オーギュドリュネ殿下とルゼリアが接近することもなく、婚約を破棄されること自体もすることはなかったのではないかと思う。


 そうすればボワデシャール公爵家からの追放もなく、処断をされることもなかっただろう。


 ここまで処分が重くなったのは、わたしの「悪役令嬢」的な態度を。周囲のほとんどの人たちが嫌っていたからだ。


 わたしの評判が、この魔法によって良くなっていけば、避けられた話だと思っているので、悔しさは大きいものになっていく。


 とはいっても、この力を生かすには、当時持っていた力では弱かったので、その力を増大させなければならなかった。


 前世では、この力を増大させる方法を検討しようとしても、書物があるわけでもなく、相談できる人もいなかった。


 あきらめてしまったのは、仕方のないことだったと思う。


 その状況は、今世のわたしもそれほど変わるものではない。


 今までのわたしは、周囲にその魔法を使える人がいないのと、自分でもこの魔法の能力が高くはないということを認識しているので、その能力を高めようとする検討どころか、その能力自体持っていても、ほとんど意味がないように思っていた。


 この魔法は、血筋で受け継がれるものではなく、その力が発生する条件もわからない。


 長い時間をかけて研究をしていけばわかるのかもしれない。


 でも、あまりにもその条件がわからなすぎるし、力自体も前世と同じで小さく、この力を大きくしようとしてもその方策もない。


 しかし、前世のルラボルト王国とは違い、このボランマクシドル王国の人たちの多くは、その魔法の存在を認識している。


 これは、前世のことを思い出したわたしにとって救いだった。


 認識している人たちが多ければ、ルラボルト王国とは違い、わたしがこの魔法を使っても受け入れてくれると思う。


 そして、その魔法の力を増大させ、効果的に使っていけば、人々の役に立っていくのでは、という気持ちが湧いてくる。


 これは、わたしにとっての希望だ。


 ただ、それにしても、もう少し力は強くしていきたい。


 そして、つらい思いをして苦しんでいる人たちを少しでも救えるようになりたいと強く思っていた。


「人の心を癒し、病気やケガを治療することのできる魔法」


 それは、つらい思いをして苦しんでいる人々を救うことができる可能性のある力。


 わたしが持っている魔法だ。


 この魔法の力を増大させて、その可能性をより大きなものにしていきたい。


 しかし、この魔法の力を増大する方法は、今はまだわからない。


 わたしにとって、それが今一番の悩みだ。


 でも悩んでいても仕方がない。


 練習をすれば、少しずつではあるものの、その力を強くすることができるかもしれない。


 とにかく練習するしかなさそうだ。


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