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第二十三話 治癒魔法

 そして、わたしは厳しい状況におかれているだけではなく、これからの人生に希望を持つことのできる力を持っていた。


 それは、


「人の心を癒し、病気やケガの治療をすることのできる魔法」


 だ。


 いわゆる治癒魔法。


 この世界では、人の心を癒し、病気やケガの治療する魔法を使うことができ、その能力を国家に認定された女性のことを聖女と呼ぶ


 今から三千年ほど前、その聖女であるソフィディーヌ様がこの地に出現し、多くの人々の重い病気やケガの治療を行うとともに、心を癒したという伝説が残っている。


 この方がすごいのは、聖女に認定された二十歳の時から、この世を去る二十五歳までの間のわずか五年でたくさんの人々を救ったところだ。


 特にすごいと思うのは、この方が二十五歳の時のこと。


 当時、この世界には恐ろしい病気が流行していた。


 この地も例外ではなく、その病気にかかる人たちが多く現れてきていた。


 その病気にかかってしまったら、この世を去る可能性は五十パーセントにも及ぶ。


 治ったとしても後遺症に苦しむ人たちが多かった。


 その病気は隣国を襲い、多数の犠牲を出した後、この地に流れ込んできた。


 その勢いは激しいもので、あっという間に平民や貴族を襲っていく。


 そして、当時この地を治めていた王室の方々も罹患するほどになっていた。


 この地はこの病気で苦しんでいる人たちで一杯になってしまったのだ。


 ソフィディーヌ様はこの状況に心を痛め、自分の力をすべて捧げて、


「この地の人々がこの病気から救われますように」


 と祈ると同時に、この病気で苦しんでいる人たちを治療していった。


 ソフィディーヌ様としては、この世界全体の人々をこの病気から救いたかったようだ。


 しかし、さすがにそれだけの力はない。


 そのことをとても残念がっていたということだ。


 わたしからすると、この地を救うだけでも気の遠くなる話。


 ソフィディーヌ様はそれを行った。


 尊敬以外の言葉は出てこない。


 ソフィディーヌ様の力で、この地は流行病から救われた。


 この地の人々は、喜びに沸き、王室からもおおいに感謝された。


 しかし、ソフィディーヌ様は力を使い果たしてしまった。


 自分の生命をこの地の人たちに捧げたのだ。


 病気の流行が止まった後、ソフィディーヌ様は病床の人になる。


 この流行病にかかったわけではなく、今までのソフィディーヌ様であれば、自分で治すことのできる程度の病気だったのだけれど、その力さえももうソフィディーヌ様には残されてはいなかった。


 人々は、ソフィディーヌ様の回復を願った。


 しかし、その願いもむなしくソフィディーヌ様は二十五歳の若さでこの世を去る。


 この地は深い悲しみ悲しみに包まれた。


 やがて、ソフィディーヌ様は自分の生命をかえりみず、流行病から人々を救ったことが人々の間でおおいに賞賛されていく。


 そして、ソフィディーヌ様は伝説の「大聖女様」と言われることになった。


 今でも、「大聖女様」と言えばこの方のことを言い、尊崇する人たちは多い。


 この方が出現して以降も、聖女はこの地に存在していたようだ。


 しかし、「大聖女様」とは違い、聖女たちは、ある程度の重い病気やケガを治療することはできるものの、重い病気やケガになると治療をすることは難しく、心を癒す力も弱かった。


 この地の人々の期待は大きいものがあったので、その期待と現実の乖離が進んでいく。


 やがて、大きな期待に応えられないことが人々の間で認識されてきたので、現実の聖女の存在は次第に小さいものになっていった。


 時代が経つに従って、軽い病気やケガ程度しか治療することができず、心を癒すこともほとんどできない人たちしかいなくなってしまっていた。


 その為、国家としても、こうした人たちを聖女に認定するのは困難になってしまったのだ。


 こうした状況の一方。この王国では、五百年ほど前から医療が進歩してきていた。


 医者の力がだんだん大きくなっている状況だった。


 そうした時に、医療を推進する勢力と魔法を推進する勢力の争いが発生した。


 しかし、既に衰退が進んでいた魔法を推進する勢力には、医療を推進する勢力に立ち向かう力はなく、圧倒された。


 以後、魔法を推進する勢力はますます衰退していく。


 そして、百年ほど前からは、この王国で聖女が認定されることはなくなった。


 能力自体は持っている人たちは今でもいると思われる。


 ただ、その能力はほとんどんの場合低いものでしかないようだ。


 高い能力を持っている人材がこの王国内にいる可能性はあると思っている。


 しかし、残念ながらその人材を生かす為の正式な教育機関は、王国にも民間にもない。


 ほんの一部の民間の人たちによって細々と支えられている状態だ。


 本来なら聖女を目指すべき高い能力を持った人材が、医療を中心とした分野に流れてしまっている。


 この状況は五百年ほど前から加速し始めた。


 そして、聖女の認定がされなくなった百年ほど前からは、高い能力を持った人材の全員がこうした分野に流れてしまっているのが現状だ。


 その為、このボランマクシドル王国では、百年経っても聖女がいない状況のまま続いている。


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