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居酒屋領主館【書籍化&コミカライズ進行中!!】  作者: ヤマザキゴウ


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161/293

161.新たな船出

 ロートシュタインの港町に、真夏の太陽が煌々と降り注ぐ。波止場には、潮風が運ぶ磯の香りと、人々の熱気が渦巻いていた。岩島へ向かう調査船を前にして、今回の未発見ダンジョン先遣調査隊の第一陣、選抜メンバーが今、勢揃いしていた。

 ずらりと並んだ顔ぶれを、ラルフは複雑な面持ちで見つめた。


 選抜メンバーは以下の通りだ。

 冒険者ギルドマスター代理の、ヒューズ。

 王国騎士団からは、厳格な風格を漂わせるマティヤスと、その娘であり女騎士ミラの、カーライル親子。

 冷静沈着な宮廷魔導士、ヴィヴィアン・カスター。

 炎のような情熱を秘めた火魔法の名手、パトリツィア・スーノ。

 海賊公社から、獲物を狙う鋭い眼光を持つメリッサ・ストーン。

 海の冒険者クラン"シャーク・ハンターズ"から、巨大な銛を肩に担いだ撃銛砲の名手、フィセ。

 そして、まさかの宮廷料理長サルヴァドル・バイゼル。

 最後に、この面倒事の元凶であり、大魔道士の、ラルフ・ドーソン自身。


 ラルフは、思わず口を開いた。


「うん。なんか、色々突っ込みどころがあるから。言っていい?」


 ヒューズは、その長い金髪を風になびかせながら、涼しい顔で「どうぞ」と答えた。まるで、ラルフの疑問を最初から予期していたかのような余裕ぶりだ。


「まず、なんか、女性が多いね?」


 ラルフの視線は、ヴィヴィアン、パトリツィア、ミラ、メリッサと、フィセ。メンバーの半数を超える女性陣に向けられた。その顔ぶれは、いずれも並々ならぬ実力者ばかりだ。


「単純に、今すぐに動かせる最高戦力を集めてみた結果です。何か問題でも? ……世の中、女性の社会進出の時代ですよ? ラルフ様」


 ヒューズが、呆れたような顔でラルフを見返した。まさか、この異世界でも、男女共同参画やフェミニズム運動、女性のエンパワーメントが叫ばれる時代なのか?! ラルフは感心というか、純粋に驚いてしまう。確かに、居酒屋領主館に集う常連客の冒険者にも、女性は多かった。この世界の多様性と、その中で生きる人々のたくましさを、改めて実感させられる。


「じゃあ、もう一つ。なんでサルヴァドルさんいるの? 宮廷料理長ですよね? 冒険者でもないし……」


 ラルフは、今にも飛び出さんばかりに目を丸くして、サルヴァドルを見つめた。その問いに、サルヴァドルは、マゴロク閃光包丁を肩に担ぎ直し、不敵な笑みを浮かべた。


「弟子は育ててある。問題はない!」


 その言葉には、一切の迷いも不安もない。ただ、自信と、そして底知れぬ実力が込められているかのようだった。


「いや、問題というか、魔獣との戦闘が想定されるんですよ……」


 ラルフは、思わず呻いた。魔獣との遭遇は、ダンジョン探索において避けられないものだ。料理人が、そのような危険な場所に足を踏み入れるなど、常識では考えられなかった。


「切れば良いのだろう?」


 サルヴァドルの返答は、あまりにも簡潔で、そして恐ろしかった。


「あっ、はい……」


 ラルフは、それ以上何も言えなかった。確かに、あの何でも切れる魔剣製作技術を流用した包丁は、もはや兵器と呼ぶにふさわしい代物だ。宮廷料理長であるサルヴァドルが、その包丁を携えてダンジョンに挑む姿は、もはや恐怖でしかなかった。


 ヒューズは、集まった冒険者たち、そして見送りに来た大勢の群衆に向けて、力強く呼びかけた。彼の声は、港町に響き渡る喧騒を切り裂くように、人々の心に届く。


「皆の者、準備はいいな? 先遣隊の後は、皆好きに突入してこい! マッピングを優先しろ! 何せ未知のダンジョンだ。どんな小さな事も見落とすな! 生存戦略! 生きて帰る確率を上げろ! そして、金を稼げ! 美味い酒を飲もうぜ!」


 そのヒューズの言葉に、港町に集まった冒険者たちは、「おぅ!!!!」と地響きのような声を上げ、士気を最高潮に高める。彼らの目には、未知への挑戦と、富への渇望が宿っていた。

 続けて、ヒューズは、長い金髪を海風に靡かせながら、腰のロングソードを抜き、頭上に高らかに掲げた。太陽の光が剣身に反射し、眩い光を放つ。


「我らが領主様は、……まだ何か不服なようだが、今日! 我々は、歴史に名を残す!!」


 その言葉に、冒険者たちは「ギャハハハっ!」と大笑いしている。彼らにとって、ラルフの不満は、もはやお決まりのジョークのようなものだった。


「歴史に名を残すのは誰だぁ?!」


「俺だッ!」

「いや! 俺たちだぁ!」

「私よぉ!」


 冒険者たちのボルテージは最高潮を迎える。彼らの声が、港全体を揺るがすかのようだ。


「前人未到! 未知のダンジョン! 新たな冒険! この言葉に血湧き肉躍るのは誰だぁッ?!」


「俺たち、冒険者だぁ!」

「冒険者! バンザーイ!!」


 熱狂の渦が、潮風さえも熱風に変えていくほどに感じられた。希望と興奮が、港町を支配する。


「さあ! ゆくぞ! 新たな船出だ!」


 ヒューズを先頭に、選抜された先遣隊のメンバーが、力強く船に乗り込んでいく。彼らの足取りは軽やかで、顔には決意と期待が満ち溢れていた。

 その光景を眺めながら、ラルフは心の中で呟いた。


(えっ?! 急に出てきたクセに、ヒューズの野郎、主人公してんなぁ?!)


 彼の心には、未だ拭いきれない面倒事への憂鬱と、しかしどこか、この狂騒的な状況への諦めが混じり合っていた。


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地球侵攻する上で絶対にやってはならないことで、ニホンジンに美味しいと認識されることってのがありますけどその魂を料理長持っていらっしゃる???切ればいいってのは極論的正論なんだけどそれ言っていいの大抵剣…
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