表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居酒屋領主館【書籍化&コミカライズ進行中!!】  作者: ヤマザキゴウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/293

150.港にて

 興奮と熱狂の渦が巻き起こったロートシュタイン・グランプリは、劇的な結末を迎えた。


 ロートシュタイン・グランプリ結果

* 一位: ミハエル - ネクサス2

* 二位: レグ - ロードスター

* 三位: リック・デューゼンバーグ - マーク・ワン


 波乱に満ちたレース後、出場者たちは健闘を称え合い、互いの功績を讃え合った。激戦を繰り広げたライバルたちではあるが、元々は魔導車を愛する者同士。すぐに魔導車談義に花を咲かせ、今度「走行会」なるものを開催すると盛り上がっていた。ラルフは、(また妙なイベントに駆り出されるのかなぁ)と、嬉しさ半分、面倒臭さ半分といった複雑な感情を抱きながら、その喧騒を背に港へと向かった。


 港には、伝説の海の魔獣ア・ベイラを討伐した船体、ウル・ヨルン号が停泊している。その威風堂々たる佇まいを一目見ようと、多くの人々で賑わっていた。かつて討伐戦を共に戦った冒険者クラン"シャーク・ハンターズ"の乗組員たちは、高級な召し物を身につけ、客たちに武勇伝を聞かせたり、サインに応じたりと、まるでスーパースターのような扱いを受けている。

 一方、共和国からの使者や帝国の大臣たちは、ウル・ヨルン号の驚異的な軍事力としてのポテンシャルに、冷や汗を流すばかりだった。


 桟橋から、バリバリッ! ズガァァァ!と雷撃のような音が響き渡る。


「ふむ! たまらん! 気持ちイイ!」


 爆式魔銛砲《バリスタランスMk-II》の試射をしているマティヤス・カーライル騎士爵が、恍惚とした表情で叫んでいる。


「カーライル騎士爵! 早く私にも撃たせて下さいよぉ!」


「まあ、待て待て! もう一発だけ……。どこからか魔獣でも現れてくれんかなぁ」


 まるで子供のような言葉に、ラルフは苦笑する。確かに、何もない海上にぶっ放すだけではつまらなかったか? 的当てのようなものを設ければ良かったかもしれない、とラルフは思ったが、まあ追々考えてみようと頭の隅に置いた。


 その時、海賊公社のメリッサ・ストーンが、ラルフの元へとやってきた。


「あのぅ、ラルフ様。ちょっとお願いというかぁ。わがままというかぁ、おねだりがあるのですがぁ」


 彼女らしくない、もじもじとした態度にラルフは目を瞬かせた。


「なんだ? ……正直、予想はついてるけどな」


「そうですか! そうですか! なら、……そのぅ。私も、あれ欲しいなぁ、なんて」


 メリッサは、ウル・ヨルン号を指差す。ア・ベイラ討伐戦では、海賊公社の彼女を招集し、操舵手を任せた。一度操船した船に愛着でも湧いてしまったのだろうか、とラルフは思った。


「いや。君たち、商船だからね? あんな過剰な武装、いる?」


 ラルフの問いに、メリッサはまさかの発言を繰り出した。


「じゃあ! 私、シャーク・ハンターズに加入します!」


「おお! 来い来い! 姉さんがいてくれたら最強だぜ!」


 シャーク・ハンターズの面々から歓迎の声が上がる。


「勘弁して下さいよぉ! 姉御ぉ!」


 対照的に、海賊公社の面々からは困惑の声が上がった。

 ラルフは「はぁ」と大きな溜息をついた。そして、


「わかったわかった。何か考えておくから……。あと、別に副業は禁止しないけど、本業に支障がないようにしてくれ」


 そう告げると、メリッサの表情がぱぁ!と華やいだ。彼女もまた、さすがは船乗りと言ったところか、根っからの船マニアなのかもしれない。ということは、……とラルフはふと辺りを見渡した。中には、ウル・ヨルン号を見上げて「かっこいいなぁ」と呟いている者たちもいる。なるほど、船オタクがいるな。ならば、船の小型模型でも作ったら売れるか? ラルフは新たなビジネスの着想を得て、思わずニヤリと笑みをこぼした。


 その時だった。


「ギャオオオオオオオ!」


 雄叫びを上げて、ラルフのペットである赤いワイバーン、レッドフォードが上空から現れた。そして、ドンっ!と港の縁に、巨大なサメを落とした。


「おおおおおっ!」

「いぇー! サメだサメぇ!」

「ははぁ、レッドフォード様ぁ!」


 魚好きたちが歓声を上げる。中には、レッドフォードに額づいて最大限の感謝の意を表明している貴族までいる。それでいいのか? とラルフは呆れ果てた。

かつてレッドフォードが退治したメガロドンには及ばないものの、かなり巨大なサメだ。その恩恵というか献上品に、港のお祭り騒ぎはさらにヒートアップしていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
バイクみたいなものが在って競馬が有って魔導船等言うべきものまである ・・・なんで競艇・ボートレース方向に逝かんの? 小中型魔導砲でも積んで小回りの利く海上戦力にして 警備するなり大型の海棲魔獣への牽制…
更新お疲れ様です。 走行会…そのうちこの世界でも、過給気派と自然給気派の激しい派閥争いが起きるかもしれない(笑) 機械射出式の銛かぁ……そう言えば某格闘系漫画の『地上最強の生物』さん、急所に当たれば…
海賊公社が武装商船団にバージョンアップするか? 大航海時代のスペインみたいに メリッサ船長の我が儘がどんな形で実現するのか、 次の展開が楽しみです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ