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【コミカライズ】ナイナイ尽くしの異世界転生◆翌日から始めるDIY生活◆  作者: ナユタ
◆第十三章◆

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*4* 一人と一匹と、おま、ちょ、待てよ!

『はいはい、おめでとうございます。今回はその齧歯類のせいでちょーっと苦戦しましたねぇ? まぁわたしとしては面白いので、別に良かったですが。でも貴方はただでさえ寿命が短いのに、齧歯類が戻るのを待っていたらお婆ちゃんになってしまいますし。特別にこれで許してあげます。わたし優しいので』


 いつ頃からか駄神のレベルアップを告げるメッセージが、業務内容の使い回しから、他の仕様と同じ馴れ馴れしいウザ絡みオジサン構文になっている。これでウザくないメッセージ最終防衛線が崩れてしまった。くそ……あの業務連絡だった頃を懐かしむ日が来るとは。


 ともあれ一度再生を中断し、スマホの音量を下げ、下敷きになった忠太を助け出して、直前まで荒ぶっていたせいで逆立った背中の毛を撫でつける。ほわほわした毛の手触りも、骨格も、尻尾の長さも、もうベビ忠太だった頃のものではない。


 シルクみたいな手触りの真っ白な毛と、時々突っ込みを入れてくる滑らかなピンク色の尻尾は、頼りになる相棒のそれだ。三週間ぶりにその感触に触れただけなのに、思わずちょっと泣きそうになった。


「忠太、大丈夫か……?」


【   はい   とりみ だして す みません】


「いや、取り乱すのはしょうがないって。やっと元の姿に戻れたんだから。それよりも問題は駄神のタイミングだろ」


 至近距離からの急襲に反射的に耳をたたんでしまった忠太は、片手で耳を伸ばしながら、空いた方の手で器用にフリック入力をする。


 しかしこのファンファーレは毎回狙ってるとしか思えない。まぁ今回に関してだけ言えば、悔しいかな、良いタイミングだったけど。


 あといつも駄神からの連絡時には音量を下げていたが、考えてみれば元々普段からそんなにスマホの音量を上げていない。だからファンファーレの音が毎回爆音なのは、駄神の力が働いているのだと思う。


 桜の塩漬けみたいになってしまった耳を伸ばしきった忠太が、今度は両手で【もしや れべるあっぷ ですかね】と打ち込む。


「ん……たぶんな。久しぶりだ。相談に乗ってくれるか?」


 感極まって少しだけ鼻声になった私に気付いて、やっと自信を取り戻した小さい相棒は、紅い双眸を笑みの形にして【ええ ええ もちろんです まり】と画面にそう打ち込む。両者の相互理解が出来たところで、再度駄神の読み上げメッセージを再生してみる。


『つきましては新製品の開発に一人で取り組み……まぁ、出来の方は至って地味、いえ、素朴の一言に尽きますが。そこは齧歯類に変わって℘₪℘₣■■₪₪₰℘(守護対象者幸福値)上げに勤しんだ貴方に、₫√₱▼▲▲₪₣℘◆(生存期待値)の加算をしてあげます。ただし不甲斐ない齧歯類を元の姿に戻した分のポイントは差し引いてあるので、微々たるものですが。代わりに新しいオプションを選ばせてあげます』


 あまり抑揚がない読み上げ機能アプリを使っていても、駄神の愉悦の雰囲気が感じられるのが腹立たしいが、思えば最近は向こうが与えるものを受け取ることが多かったから、こうしてオプションを選ぶのは久しぶりだ。


 ほんの少しわくわくしながらスクロールすると、駄神が加算したそれぞれの項目のポイントが現れた。


₪₪₱▼₫₣₪■℘℘(守護精霊値) 1PP+

℘₪℘₣■■₪₪₰℘(守護対象者幸福値) 100000PP+

₫√₱▼▲▲₪₣℘◆(生存期待値) 500PP+


 いや……1PP+って下手にマイナス評価されるより微妙に腹立つな。嫌がらせの天才か。でも忠太が元に戻ったことで私の幸福値はかなり上がっている。数字で見せられると自分がどれだけ浮かれてるのかが分かって照れくさいな。


 それで期待値の方は――これも確かに割と引かれているっぽい。でも忠太を元に戻してもらってこれだけ残るなら御の字だ。けれど当の忠太はそう思わなかったようで、しょんぼりと項垂れている。ついさっき伸ばしたばかりの耳が、早くもしわしわだ。


 再び駄神のメッセージを一旦閉じて【まり あし ひっぱって ごめんなさい】とフリック入力する姿に、不憫可愛さが止まらない。三週間幼児退行していたせいか、打たれ弱くなってる。無邪気可愛いベビ忠太には出せないこの大人忠太のビター加減。


「バーカ、どこ見てるんだよ忠太。お前が見るのはここだろ、ここ。私が喜んでるのに水を差すなよな?」


 照れくさいのを我慢して画面の幸福値を指せば、忠太の耳が少しだけハリを取り戻す。ただそれでもまだ疑わしい方が勝ったのか、この騒ぎの中で平然と膝に陣取っている柘榴に視線を移す忠太。


 不安気なハツカネズミの視線を受け止めて「うみゅぃ!」と元気に鳴くイタチ。そのドヤ顔を見るにたぶん肯定だと思われる。精霊同士ではそれで通じるのか、忠太もホッとした様子だ。分かってもらえたことに胸を撫で下ろし、駄神のオプションを見てみる。


 一↱レアアイテム拾得率の上昇。☆6

 二、一度作ったアイテムの複製☆8(一日二十四個まで.高レア品は不可)

 三、製品耐久力微上昇↵☆3

 四↳悪意ある第三者の干渉が認められる場合、守護精霊ポイントに加算。☆

 

 ——……意外と普通だ。というか無難だ。


 どれも今までに手に入れたオプションで、一応レベルアップ出来て嬉しい部類ではあるけど、別段目新しくはない。新しいとは一体何だったのか。肩透かしもいいところだ。思わず憮然としてしまうが、忠太は腕組みをして真面目に思案中っぽい。うーん、こういう姿勢は見習わないとだな。


 何にしても二人で選ぶのだし、レベルが上がることには違いないのだから真面目に考えよう。そう思って画面をじっと睨みつけたその時、視界がぼやけて。疲れ目かと目を擦った一瞬、何故か背中がぞわりと粟立った。


 見間違いかと思ってもう一度目を擦った私に向かい、頼りになる相棒は【まり これ ひっかけかも です】と打ち込んだ。ふと見れば、柘榴の鼻先にも皺が寄っている。私と忠太にシンクロしたらしい。


「マジか。ちなみにそれってどんなやつとか分かる?」


【たぶん えらぶと えらんだやつ ろすと するか れべる さがる てきなかんじ】


「ろすとって消えるってことか。で、もしくはレベルが下がる、と」


 どれも頑張ってレベルを上げたDIYの本命ばかりだ。あまりにも悪辣すぎる。やっぱり駄神の話を真面目に聞くのが間違いなのかもしれない。こちらの反応に忠太がフスンと鼻を鳴らして、またフリック入力をする。


【まり これ まだ すくろーる できます】


 そう得意気に打ち込まれたので画面の先を辿ってみる。かなり下の方まできても真っ白な画面が続くばかりだったが、ようやく文字列に突き当たった。そこには確かに一つだけ新しい、けれど選ぶのが非常にリスキーな選択肢が混ざった嫌な四択が現れる。


 一、守護精霊の攻撃魔法レベルアップ。

 二、守護精霊の回復魔法レベルアップ。

 三、守護精霊(ネズミ姿)と会話が出来るようになる。

 四、気になるあの文字を一部公開(今回限り。お見逃しなく)


 思わず沈黙してしまった私と忠太。だがそこにいつの間に戻ってきていたのか、シュッと小さな茶色の塊が飛び込んで。


「ちょ、待っ、金た――!」


 うちで一番好奇心に弱くいらんことしいのゴーレムは、慌てて止めようとした私達の手をすり抜けて、あからさまに怪しい四をタップしてしまった。

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