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【コミカライズ】ナイナイ尽くしの異世界転生◆翌日から始めるDIY生活◆  作者: ナユタ
◆第十二章◆

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✥幕開✥ゲームマスターの戯言。

 上下左右にブレる画面に映される景色や、何に使うつもりなのか分からない素材。時折挟まれる小さいクマのゴーレムと、巾着袋から顔だけ出す守護精霊や、特殊イベントにより仲間になったカーバンクルが、長閑なピクニック映像に程良い異世界感を添える。


 いつもは下級精霊をつけたところで、観察を怠れば二週間も保たずに死んでしまう弱い生き物。人間がハムスターというネズミを育てている動画を見たが、まさにああいう感覚に近い。一時の愛玩動物だ。


「ふむ、この部分は映えますね。ここも良い。あー……これはそんなに珍しくはないのですが、まぁこちらの世界にはありませんしねぇ。ほぅ、そんなものにも興味が?」


 先に編集をすると説明してはおいたものの、本当に編集の手間を考えず気まぐれに映される風景は、見慣れたものであるはずなのに不思議と面白い。特に興味のなかったものも違って見える。


「ふふふ、わたしへの不満が止みませんねぇ。それにこんな状況下でも℘₪℘₣■■₪₪₰℘(守護対象者幸福値)を上げてくるとは……期待通りです。思わず₫√₱▼▲▲₪₣℘◆(生存期待値)を大盤振る舞いしてしまいそうだ」


 他世界の時空軸にいた人間の異世界転生というものは、元々救済システムなどではなく、上級精霊の退屈しのぎだった。余程のことがない限り精霊王達の座は揺るがないが、各精霊王達の下にいる上級精霊達はそうでもない。


 ただ存在するだけで意識の形も保てないような下級精霊や、自我ははっきりと持てるものの自己欲求が薄い中級精霊とは違い、上級精霊は自我も自己欲求も高いがそれ故に退屈を極度に嫌う。消失する原因のほとんどは悠久とも言える時間の中で、自己を形成することに興味をなくすからだ。


 しかし上級精霊がいないと精霊王達の仕事は非常に大雑把なため、力を振るえば災害クラスの天変地異が起こる。なればこそと、上級精霊達の暇を潰そうと取り入れられたのが、この育成遊戯。


 精霊王達の愛する庭園・人間界。王達は人間が増えすぎると、時々と称した〝手入れ〟をして大きく数を減らしたりするが、その後の面倒は見ない。それをするのは中級や上級精霊の役目だ。下級精霊は微々たる力はあるものの、世界の修繕においてあまり役立つことがない。


 中級精霊の中にも、極稀に準上級精霊や上級精霊にまで成る者もいるにはいる。それとは逆に下級精霊が中級精霊に成ることはほとんどない。上級精霊が精霊王に成ることもだ。


 通常上級精霊達は自身の暇を持て余して消滅する以外で、その階級を落とすことはない。だが上級精霊が自身の担当した下級精霊に下剋上をされることがあるのが、この遊戯の醍醐味でもある。


 ただここで再び問題が持ち上がる。それは上級精霊達の飽きやすさと、弱い生物を育てることの下手さだ。命あるものに興味がないというのではなく、暇以外に存在を脅かされることがない上級精霊達にとって、ちょっとした不注意が死に繋がるということが理解出来ない。当然罪悪感もない。


 だからこそ、彼女のように下級精霊の中でも最も格の低い守護精霊を持つ者が、こうして一年以上も生きていることは非常に珍しい。


 それに初めて彼女を見た時、事故死であることを除いても、すでにかなり不健康そうで。せっかく千年ぶりに順番が回ってきたが、不良品を引いてしまった。どうせまたすぐに死ぬだろうと観察を怠っていたのに、それがまさかこんなに面白いコンテンツに成長するとは。


「おや、夕飯はあの泥水カレーですか。キャンプといえばカレーはこちらの世界では定番だそうですからね。しかしここであのカレーを出してくるとは、なかなか面白い。チュータがいなくともそれなりに知恵を働かせているようだ」


 彼女の通帳をそのまま使用するためにこちらの世界を少々を改竄し、彼女の住んでいた古い安アパートを引き上げて、新しく移り住んだオートロック完備のマンションの一室で、チャンネル視聴者から贈られた酒を嗜みながらの動画鑑賞は、なかなか楽しい。昨日届いたゲーミングチェアの座り心地も悪くない。


 配信機材も充実してきたので、編集でいらない部分は削ろうかと思っていたが、このダラダラした刺激のない動画も悪くないと感じた。こちらの世界の人間はあちらの世界の人間よりも、命の危険に直面すること自体は低いはずなのに殺伐としている。


 その代わりに娯楽の多さは向こうの世界と比べ物にならない程ある。だからこそ彼女がこちらの世界に持っているサイトの店は、ここのところ徐々に当初より人気を下げているのだ。複製ばかりで目新しい商品の補充をしていないのがいけない。


「まぁ別に食事を摂らずとも問題ありませんし、配信から得られる収入と彼女のフリマサイトでの収入を足せば、光熱費も家賃も賄える。通帳への振込金額はそこまで気にしてはいませんが……それでも売上が前月よりも二割も落ちていますからねぇ」 


 やっと手に入れたお気に入りの玩具だ。それを他の人間に評価を抜かれては面白くない。同じ上級精霊達から足を引っ張られる煩わしさもだ。どうしてもこの遊戯をやり直したいのなら、大人しく待てば良いものを。


「彼女達の邪魔をして良いのは、担当精霊のわたしだけです。まぁおかげで同胞を数柱ほど黙らせないといけなくなりましたが……せっかくここまで育ったコンテンツを、横槍如きで潰されては堪りませんからね」


 理不尽に与える試練に抗う姿も打ちのめされる姿も、悠久に揺蕩うわたしを楽しませてくれる。最高の娯楽だ。ともあれ、わたしのチャンネルにマリのフリマサイトのURLを貼れば、少しは広告になるだろう。これが親心というやつなのかもしれない。


 パソコンの画面に映り込むわたしの顔は、配信用のアバターとは別のものだ。ネットで拾った適当な人間の顔をAI生成にかけてそれらしく整えただけなので、絵師に依頼したアバターよりも思い入れはない。元より外見はこちらの世界で行動出来れば何でも良いのだ。


 色々と俗なことを考え始めれば、らしくもなく胸が沸き立つ。それこそこの時間をいつまでも終わらせたくないとまで思う。けれど終わるその瞬間こそ見たいという相反する感情も確かにあって。


「オーレルの森にいた救国の聖女の担当も、こんな気持ちだったのでしょうか。だとしたら……あぁ、マリの選択の時が今から楽しみです」


 その時を夢想しながら他愛のない映像を映すパソコンを眺めていると、ポコンという受信音と共に配信仲間からのDMが届く。内容はこの間と同じくインディーズゲームの制作の協力依頼だ。


 まぁ協力依頼とは言っても、わたしのチャンネルの異世界配信映像や〝マリ〟というキャラクターの使用許可なのだが。けれど――。


「これを請ければ……こちらの世界の敗者たる貴方でも、データの海の中で生き続けることが出来るのでしょうか」


 ゲームマスターが望む限りゲームは続く。

 ――そうでしょう?

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― 新着の感想 ―
えぇ…駄神がいいヤツな感じに… いや、報復とかもしてるけども(笑)
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