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【コミカライズ】ナイナイ尽くしの異世界転生◆翌日から始めるDIY生活◆  作者: ナユタ
◆第十二章◆

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*19* 一人、異世界YouTuber助手(仮)

『それではまず第一回目ということで、そう難しいことは頼まないので力まないで大丈夫ですよ。簡単に異世界だと分かるけど、適当に平和な探索動画をお願いします。夜の撮れ高も欲しいので、今夜はキャンプをしてくださいね。他の細かい指示はメッセージで送っておきます』


 駄神から一回目の動画撮影指定があったのは、サイラスと一緒に見た最初のメッセージから二日後。場所はどこでも良いけど日中の明るい時間帯で、出来れば異世界感があるところ――って、それはもう普通に指定だろとは思った。


 忠太が減って戦闘員が金太郎だけになった分、もしもの時のための装備は万全だ。エッダの腕輪、懐中時計型と札型の攻撃用魔宝飾具、結局どう使うのか分からない駄神にもらった魔力の塊らしい魔石製のブローチ。


 駄神の加護である〝ここを今夜のキャンプ地とする!〟が使えることも確認済み。以上から画面映えと敵がいないことから場所はトライド遺跡に決定。


 問題は落ちてるアイテムも大したことがない点だけど、そもそも前世の自然公園や城趾に翼が四枚ある鳥や、七色に光る蜥蜴や、向こう側が透けて見えるカエルはいないから、駄神の依頼内容的には適っているはずだ。


 それでも駄目っぽかったら、柘榴と金太郎の動画で撮れ高を作ろう。最悪CGぽくても不気味の壁を越えずに可愛ければ許される。その点で言うとベビ忠太はこの世のものとは思えない可愛さだが、前世のハツカネズミの子供と見た目は同じな分、異世界要素が足りない。


「金太郎、忠太の入った巾着の背負い紐は緩んでないか?」


 ――とはいえ、小さい巾着型のリュックから頭と尻尾だけ出してるベビ忠太は可愛いので、自分の待ち受け用写真は撮る。まだ少し眠いのか、とろんとしたあどけない表情が天使すぎだ。


 流石にじっとしていないことに定評のあるベルが妹なだけある金太郎。こちらに力強く頷き返してくれるその腰には、ベビ忠太が突然飛び出しても捕獲出来るよう、投網(百均の魚を掬う網を改良したやつ)をつけている。子ネズミに追いつける機動力もあるし、これ以上ないほど心強いシッターだ。


 たった二日ではベビ忠太に変化はないけど、籠ベッドで一人寝させるのは危なそうなので、小さい神様達のいる集合住宅(ビオトープ)で寝てもらっているのだが、深夜になると結構皆に可愛がられているっぽい。小さな神様達の姿は見えなくても、ベビ忠太を乗せたシーソーやブランコのミニチュアが、勝手に揺れているのを目撃した。


 勿論その貴重映像はムービーで残してある。この件に片がついたらDVDを作ろう。ちなみに今までに撮った通常忠太のものも大量にあるので、写真フォルダはスクロールしても最初の写真に辿り着くまでに、軽く三十分はかかる。


 何故なら忠太の写ってるやつは一枚も削除したことがない。このスマホがストレージ無限だからこそ出来る荒業だ。駄神の珍しく褒められる部分である。


「柘榴ははぐれると面倒だから鞄から出るなよ。でももしも敵が出てきた時に戦えるようなら戦ってくれると嬉しい」


 斜めかけにした鞄から顔を出した柘榴は、こちらの言葉に「キュルルゥ」とご機嫌に鳴いた。今日は私達しかいないので帽子を被せていないからかもしれない。額の魔石は太陽の光を浴びてその紅さを増したように見える。


 まだこいつが記憶の覗き見以外にどんな魔法を使えるかは知らないが、これまでの経験上、魔石の色から考えると発火系だろう。こいつも精神的にまだ子供っぽいから、森の中で無闇に使わせないように気をつけないと駄目だな。


 普段なら帰宅出来る距離でキャンプはあまりしない方だが、忠太が小さくなってしまった手前、エド達に帰ってきたことを伝えていない。余計な心配をかけたくないのと、あとはレティーの構いたがりから守るためもある。


 以前忠太が〝身体の大きさと中身は比例する〟的なことを言っていた。だとすれば今のベビ忠太の精神年齢は幼いはずだ。動物は大抵テンションの高い人間を怖がるし、万が一にも驚いて噛みついたりしたら両方が可哀想だ。


「よし、じゃあ行くか」


 私の声に頷く金太郎と、うとうとするベビ忠太と、鞄に潜ったり顔を出したりと忙しない柘榴を連れて、歩き慣れた森の道を進む。


 敵がいないのでただ歩くだけの盛り上がりがない、のんびりした絵になる。異世界感を感じさせるために植生を撮るけど、余程植物に詳しい人間でもないと分からないだろう。実際に私も街路樹の名前なんか全然知らなかった。


 時々スマホを鞄の柘榴に向けたり、ベビ忠太をあやす金太郎に向けたり、レア度の低い素材を採取してアップで映す。それを見た金太郎が宝石みたいに綺麗だけど、やたらと脚の多い虫を獲ってきてくれた。


 思わず「うおぁっ! 何だそれ気持ち悪!?」 と叫んでしまったが、音源は環境音以外はあとで編集するらしいので、きっとカットされるはずだ。せめて裏を見せる前に表を見せてくれ……事故映像だろあんなの。


 あといつもは忠太が探して拾って来てくれるから感じてなかったけど、私には素材を拾うセンスがあまりないらしい。拾った素材をベビ忠太の鼻先に持っていったら、ほぼ全部お断りされてしまった。流石は魔力保有量静電気。


 仕方ないので採取は金太郎に任せることにした。虫以外で。


 スマホの動画を撮影しながら歩くため、私が映り込むのは手と陰だけだが、それも編集でどうにかなるのだろう。こういうのに詳しくないから知らないけど、駄神の文明社会への順応力は向こう生まれの私より明らかに早い。


 いや、あの当時お金があれば私だって多少は……どうにか……ならないな。動画編集とかVTuberなんてそれこそ異世界の話だった。考えてみれば異世界に行ったこともないのに、どうやってゲームクリエイターとか漫画家とか、作家って異世界を思いつくんだろ。異世界を歩きながら考えることでもないけど。


「いや、待てよ――サイラスに向こうの話を聞かせて小説書かせたら、こっちの世界初の異世界物作家になるのか?」 


 そんな馬鹿なことを口走ってスマホを空に向けると、かなり上空を何かが飛んでいるのが見えた。スマホ画面をタッチして限界までズームにしてみると、ドラゴンっぽく見えなくもない。前世で謎の飛行物体だとUFOだけど、こっちだと魔物になるのか。


「こうしてると、改めて異世界で生きてるんだなぁ……」


 ポツリと零した独り言に、偶然だろうけど、ベビ忠太が「ちぃ」と可愛い相槌を打ってくれた。

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― 新着の感想 ―
ちょ、そのDVDどこで買えますか!?
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