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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
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大魔王サーツリーク、竜王ニール来店


 少し前からパラレルでは、カラーとパーマを解禁した。この世界での研究もある程度形になり、僕達の薬剤と合わせれば調整しやすく使いやすい為だ。オーパイさんや学生達の、目まぐるしい成長もかなりあるけどね。そして今日は一年生ではあるが、サハラ様も実習に来ている。



「キクチ先生!カップは妾が片付けるから置いておくのじゃ!」


「はい。サハラさん、ありがとう」



 サハラ様はちょっとうるさく言葉使いも変だけど、今は変に威張る事も無い。誰も呼び捨てにしないし、様も外している。僕達には、さん付けで呼ばれていて、学校ではサハちゃんと呼ばれているらしい。勤勉で、努力も凄くしているそうだ。美容師はとにかく、人を敬う事が大事な商売という事だ。そして今日はある二人が、来る事になっている。



※※※



「やっほー!来たよキクチ!待ってたかい?」


「ここがパラレルか、面白い所じゃのう。今日は頼む」


「はい。よろしくお願いします」



 大魔王サーツリーク様と、竜王ニール様だ。二人共、美人とイケメンに変身している。カナヤ様から、二人が行くという連絡はあった。でも…二人とも変身した状態だからなぁ。髪切っても意味あるのか?ニール様は元が竜だからまだわかるけど、サーツリーク様は元のオバサンになれば良いのに。変身が解けたら、元通りになるのでは?その姿はイメージの具現化だから、そもそも髪を切る必要も無いのでは?そんな事も質問はしておこう…。



「まぁそう言うな。私達も楽しみにしてたんだしさ。それに今後のイメージも膨らむってもんさ」


「一応、儂を切る訳じゃから、戻った時に変化もあるかもしれんしのう」


「まぁ良いですけど」



 そしてヘアスタイルはお任せなので、好き勝手しようと思う。では早速取り掛かる事にしよう。



「サハラさん、こちらのサーツリーク様をシャンプーして下さい」


「はいなのじゃ!…ってサーツリーク…?」


「おう!サハラじゃないか。久しぶりだねぇ」


「えっ?本当にサーツリーク様?姿が…魔力も…でも声は…」


「変身してるし、魔力も抑えられるようになったんだよ。学生だから、その辺の情勢は少し疎いのか?」



 サハラ様は、サーツリーク様に驚いていた。姿も勿論だけど、人前に普通に出れるという事に。多分魔力の高さを、不憫に思っていたのだろう。聞くと、サハラ様は良く遊びに行っていたそうだ。人を避けて生活していたからね。本当に嬉しそうだ。でも今知るとは思わなかった…。王妃だとしても、今は学生だから国の情勢を知る機会が少ないのか…。



「えっ?竜王様なんですか?」


「ああ、儂も変身してるし、魔力も抑えてるのじゃ」


「妾の知らぬうちに、どんどん世界が変わっているのじゃ…妾も早く美容師にならなくては…」



 まぁ、焦る必要は無いよ。しっかり技術を身に付けて欲しいしね。



※※※



「凄いじゃないか!私じゃ無いみたいだよ!」


「儂も本当の自分がわからないぞ!大満足じゃ!」



 二人共、そもそも今の姿が本物じゃ無いからね…。サーツリーク様は、元々のロングヘアを活かし巻き髪にした。緩くパーマをかけ、カラーも元の黒よりもツヤのあるダークアッシュにした。ニール様は、日本ではもう流行っていないツイストパーマを。誰もしてないヘアが希望だったからね。でもワイルドでカッコ良いと思う。でも二人が元に戻れば、良くいるオバサンと大きな竜だけどね。



「ニール!次は、服を買いに行こう!美容品も買いに行くしな!」


「そうじゃな!それと儂はご飯も食べたいのじゃ!」



 凄い喜んでくれてる。久々の街にも興奮してるんだろうなぁ。ニール様は竜だったんだから、尚更だろう。それなら…。



「サハラさん、折角だからさ、付いていって上げて」


「えっ?妾が?良いのか?仕事が…」


「うん。良いよ。お店は何とかなるしね。中々人前に出れなかったんだから、勝手がわからないかもしれないしね。手伝って上げて」


「わかったのじゃ!行ってくるのじゃ!」



 その後二人は、サハラ様に連れられて色々と遊んだそうだ。ショッピングに食事、漫画ギルドにも行ったそうだ。まだ発電機が完成してないから、映画やドラマが観れないしね。暇潰しには最高だったろうな…。



※※※



「またあの二人が来てるみたいですね!店長!」


「ああ…相当楽しかったんだろうね…」


「冒険者ギルドにも登録して、楽しんでるみたいですよ。薬草採取とかしてるらしいです」


「そんなに今まで暇だったのかぁ…確かに何百年だもんな…」


「そうですね…人里離れてずっと寂しかったんでしょうね…」



 あれから二人は、かなりの頻度で街に来る様になった。他の街にも行ってるみたい。暇だったからってのはわかる。確かにそうなんだけど、嫌な予感もある…。いや…間違いない!絶対にそうなる!



「サイトウさんに言って、発電機を急いで完成させて貰おう!」


「でもこの街とかを楽しんでるから、急がなくても…」


「その内ここにも来るはずだ!家電があるしね!髪をカットしなくても、二階に居座り始める!ただでさえ、今はタハラシ様も住んでるし、ジーク様達もいつも来てるのに、あの二人まで来たら…」


「間違い無く来そうですね…取り合えず、ご愁傷様です…まぁ何とかなりますよ!」



 それから僕はダッシュで鍛冶ギルドへ向かった…。そして、サイトウさんに土下座して頼み込んだ。サイトウさんも納得したのか、かなり無理してくれるみたいだ。頼む、リリーシュ様…。僕に平穏を…。



※※※



「いやー!このドラマは最高だな!面白い!」


「儂も続きが気になってしょうがないのう。上手く出来ておる」


「では、次は私ヤッカムの珠玉のオススメです。このミステリーで手に汗握りましょう!」


「いや、俺のアクション映画の方が…」

 

「ジーク様、それならドラマの方が…」



 タッチの差で間に合わなかった…。大魔王の家にも設置したし、DVDも大量に買って上げた…。でも先にこの部屋に辿り着いてしまった…。しょっちゅう来る様になったよ…。向こうにもあるのに、お菓子やジュースがあるから、こっちの方が良いそうだ…。



「それに私の家のDVDは、カナヤやキニユも使ってるからな。あいつら二人して、最近執務室としても使い始めたよ。まぁ両国が仲良いのは嬉しいしな」


「儂らも、そっとしておいてあげてるのじゃ」



 あの魔王達め…余計な事を…。このまま暫く続くのかなぁ…。僕にも一人の時間は必要だよ…。



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