漫画『がんばれ!タハちゃん!』、大ヒット
久々にタハラシ様が来られていた。最近までサロンの街を避けていたが、その必要が無くなったのだ…。母親のナヤマンさんのせいで、サロンの街ではタハラシ様のマヌケな噂が、かなり広まってしまった。でももう気にする必要はない。何故なら…世界に広がったからだ…。
「くそっ!この漫画のせいで、私は笑い者だ!」
「ぷぷっ、違いますよ…人気者ですよ…ぶふっ…タハちゃん…」
「キクチ殿まで…笑うなんて…!しかも私だけ…漫画化の話を知らなかったらしいじゃないか!」
「まぁそう言うなタハラシ、伯母上もそんなつもりではないのだから…」
「だから、困るんです!まさかあんなに売れるなんて…私はどこに行っても笑われる…」
そうどこにいても、同じになってしまった。大ヒット漫画『がんばれ!タハちゃん!』のせいで。『銀の翼』を超す勢いらしい。プルトンさんもナヤマンさんも、嬉しそうに報告しに来た。
「確かに事実かもしれないが、あんなに誇張されると…しかもたまに出てくる、ママ…いや母上の絵は何だよ!」
「それがヒットの要因ですよ。漫画はそういう物です」
「アントレンにもバカにされ…インペリアルガードの部下や、城内にいる皆にまで…いつも笑いを堪えてるんだ…屈辱だよ…」
「暫くの間ですよ…すぐ新しい物に、また目移りしますよ…」
「ならキクチ!私は暫くここに住むからな!ここなら皆の目を気にせず、仕事も出来るしな!決めた!絶対に住む!」
「えっ」
そんな我が儘な…。あっジーク様は我れ関せずだ…。まぁ部屋も余ってるし、暫くなら良いけど…。ずっとは勘弁してよね…。
「そうなると…俺も毎日来ないと行けないな…」
「そうですな…私もです…たまに寝泊まりも必要になりますね…」
「ジーク様…ヤッカム様…」
やられた…。タハラシ様は、基本ジーク様から離れない。王の守護が一番の仕事だから。そして優秀な人だから、王の側近としての書類仕事も多くある。だからジーク様と一緒にいるのが、普通なのだ。だからといってタハラシ様がここにいるから、ジーク様達も来るってのは話が少し違うよ…。絶対にDVDとか楽しみにしてるよ…。
※※※
その後も『がんばれ!タハちゃん!』は売れた。早く二巻を見せて!という声も凄く多い。ナヤマンさんもネタに困っていない様で、プルトンさんと二巻を製作し始めた。このままいくと、永遠に家から出ないよ…。そんな時…。
「小さい子供達の間で、裸で草むらを走る事が、流行っているそうです…」
「子供達の間で、お尻をプリプリさせながら、剣を振る謎の修業が流行り出しました…」
「川でお尻だけ浮かす謎の潜水術が…」
「鼻の穴から水を飲むという…」
子供達の間で変な流行が生まれ、漫画ギルドには苦情が届く様になった。そう…漫画のタハラシ様の行動が流行り、変な影響を与えてしまったのだ。日本でもこういう事あるけどさ…。悪質なクレーマーだけは注意ね。
「俺は別に構わないが…」
「私は構います!親には、軽蔑の目で見られる様になりますよ!子供には、謎の変態ヒーローでしょうしね!」
「キクチ…何かないか?」
「うーん、そうですね…多分これから教国と何らかの問題が起きそうですから、そこで活躍した漫画を描いて貰うとか…」
「それはいい案ですね!ジーク様、問題が起きた際は最前線に立たせて貰いますからね!」
「…好きにしてくれ…」
取り合えず、それくらいしか思い付かない。ジーク様もいい加減、少し呆れてるな。僕も同情出来る部分はあるけど、正直どうでも良いとも思ってるからね。タハラシ様、ごめんなさい。
「それで実際はどうなんですか?」
「密偵らしき奴は見付かっている。各国でな…だが物を買ったり話を聞くぐらいで、悪さまではしてなさそうだ。態度はかなり悪いらしいがな…かなり上から物を言っているそうだ…」
「そうですか…その内ここにも来そうですかね…」
「多分な…それならタハラシがいるのは、丁度良いかもしれんな…」
「そうですね…」
「私が蹴散らしてやりますよ!安心して下さい!」
急に張り切られても困るけど、安全は大事だし仕方無い。不幸中の幸いってとこだ。
※※※
「タハちゃん!お弁当持ってきたわよ!差し入れもあるわ!」
「ママ~!頼むから止めて~!」
「何を言ってるんですか!キクチくんやナナセちゃんの世話になるんでしょ!お弁当ぐらい用意しておきなさい!後、親としても挨拶くらいは、改めてしておかないとね!」
「そういうのが、私の噂になって、また笑い話になるんだよ~!」
「良いじゃない。タハちゃんは人気者になりたいんでしょ?」
「こういう事じゃないんだよ~!カッコ良くなりたいんだよ!」
それはもう無理かもしれない…。タハラシ様、頑張れ!がんばれ!タハちゃん!




