ダウタウーン公国訪問、感動と不安
「皆様ようこそ、ダウタウーン公国へ」
「ショークパ様、わざわざお迎えありがとうございます」
「いえいえ、私も楽しみにしてましたから…色々と…」
僕達はダウタウーン公国に来た。そして公主様に迎えられている。絶対にサイトウさんを早く見たかったからだ。後ろにいるサイトウさんの事を、しっかり見てるもんね…。
「俺達も大勢で来て、すまんな」
「いえ、ジーク様。私達の小さい島国に来て頂きありがとうございます。何も無いですけど、ゆっくりしていって下さい」
でもオースリー王国には無い、海や海産物がある!大きさなんて関係ないよ。
「ポンデリーンはご存知でしょうが、家族を紹介させて下さい」
「公子のメロンパ・ダウタウーンです。僕は漫画ギルドの管轄もしていますので、後程お願いします」
「第一公女のコローネ・ダウタウーンです。色々と勉強させて頂きます」
「改めまして、第二公女のポンデリーン・ダウタウーンです。本当に今日という日を、楽しみにしてました。よろしくお願いします」
皆、良い人そうで良かった。後ろには、クロワツ様も控えている。さて、まずは何からするのかな?明日の海水浴に向けて頑張ろう!
※※※
「うわー!キレイな街並みですね!」
「海もキレイね。気候も良いし。南国リゾートそのものじゃない」
「師匠!明日がもう楽しみで仕方無いです!」
「俺も最高だと思う…異世界来て良かった…」
「サイトウさん僕もそう思います…」
馬車の中ではしゃぐ僕達。違う馬車に乗っている、ジーク様達もはしゃいでるみたいだ。公国はそんなに大きくないから、しっかり区画整理してキレイに街造りをしているそう。移住してくる人も、結構いるらしい。確かにキレイで、住みやすそうな街だもんね。海外旅行で南の島に来たみたいだし、納得だ。
「まずは漫画ギルドだからね。仕事もちゃんとやるよ」
「付いては行きますけど、私は関係ありません!休みですから!」
「アタシも!」
「当然、私もよ」
「ははっ、キクチさん頑張って下さい」
何でだよ…。今日は皆で頑張ろうよ…。明日の為にさ…。
※※※
漫画ギルドに行くと、物凄い歓迎された。…サイトウさんがね…。
「ご婚約するんですよね!楽しみにしてますから!」
「『転生王女は、元旦那様を忘れられない!』は、最高でした。まさかサイトウさんに会えるなんて…」
「クロワツ様の描いた漫画ですけど、ここにサイン下さい!」
聞くと、クロワツ様の描いた漫画のモデルがバレてしまったそうだ。最初は隠してはいたが、ポンデリーン様とサイトウさんの恋物語という事を、ショークパ様が発表したらしい。
「いやぁ、クロワツを問い詰めましてね。娘の相手が、知りたいじゃないですか。最初は勿論驚きましたけど、漫画を見て、娘と重ね合わせたら…もう涙が止まらず、応援したくなって…もうこの際だから、発表しちゃえって…」
「私も姉として、誇らしいですわ。年齢と、世界を跨いだ恋…なんて素敵なんでしょう…私も憧れるわ…」
「一応、異世界って事は漫画でも現実でも、伏せてはありますけどね。知ってるのは僕達位です。それにかなり出来る男とも聞いてます。この国にとっても栄誉でしかありません」
サイトウさんも戸惑っているけど、概ね結婚の了承は取れた感じだなこりゃ。良かった、良かった。そしてこの後も漫画のアドバイスや、サイトウさんのサイン会をしていった。ただ、他の皆は漫画を楽しそうに読んでただけだ…。ゆっくりしやがって…。
※※※
そして美容講習も無事に終わった。かなり大好評だったよ。いつものへアセットやメイクに加え、美白のお手入れや、UVクリームの紹介をした。ここでは流石に、パラレルスタッフにも手伝って貰ったよ。折角なので、沢山のUVクリームも差し上げた。日焼けやシミを気にしている女性に、大人気だった。これからはダウタウーン公国でも、研究していくそうだ。ただディーテ様が、何故私達に教えてくれなかった、みたいな顔で睨んでたけどね…。
「いやぁ、大好評でしたね」
「ショークパ様、ありがとうございます」
「私も感動しました…こんなに私達には可能性があるんですね…」
「お姉様、だから言ったでしょ。凄いって」
「ポンデリーンも、料理の知識は凄いんですけどね。かなり公国を発展させましたし。でも美容方面はそんなでもなくて…」
「お兄様、それだけ美容師が凄いって事です」
ポンデリーン様は、記憶が甦ってから料理の知識を活かして、国内の食文化を向上させた。元主婦だしね。僕達の美容文化とは違う形で、この世界の発展をさせている。この後の夕食会は、僕達も楽しみだよ。
※※※
「う、美味い…」
「凄い!この世界に来てから、一番美味しいです!」
「海の幸を活かしきってるわね…参ったわ…」
「オースリー王国では無理か…レベルが違う…」
食事会では、豪勢な事に沢山の料理が、目の前に並べられている。色々と僕達に味わって貰う為だ。それを食べて良く理解する。ポンデリーン様は、この世界の料理レベルを五段階位すっ飛ばして、発展させてるよ…。美味過ぎる…。そして気付いた…サイトウさんが泣いている…。
「どうしました?サイトウさん…」
「いえ、キクチさん…懐かしくてね…ここに並べられてるのは、生前アスカが良く作っていた物ばかりで…それにこの肉じゃがは…」
「肉じゃが?」
「この肉じゃがだけは…多分アスカが作った物だろう…芋の切り方や味付けが全く一緒だよ…それに俺が一番好きな食べ物は…肉じゃがだ…」
「ありがとう…あなた…正解よ。それだけは折角だし私が作ったの…良く気が付いたわね…」
「ふふっ、忘れる訳ないだろう…ユウリも大好きだしな…あいつ、いつも真似出来ないって、小さい頃良く泣いてたよ…ママの味を作れないってね…」
「ユウリが…」
「ああ、アスカの変わりにママになるって…いつも言ってたからな…あっ!悪い、今はポンデリーンだったな」
「良いのよ…あなたの妻は、アスカだから…」
気が付くと、皆で号泣。泣かせるなよ…。アントレン様は泣きながら食うなよ…。美味しいけどさ。その後も楽しく食事は続き、見事サイトウさんは認められ婚約をした。というよりお願いされていたけどね。感動したんだろうな。家族の為を思えばって事だね。
※※※
「それで一つ報告というか、相談なんですが…」
「何ですか?」
「ラルベリマルサーヌピヨン教国の事です」
「教国か…」
「ええ、ジーク様…少し動きがありそうです。ダウタウーン公国も、昔は教国の一つの島でしたからね。何故か接触をしてきました」
聞いた事ある国だ…。ラルベリマルサーヌピヨン教国…。確か以前ナナセさんが、伏線と言っていた。そろそろ回収か?それに、リリーシュ教国にしろよ…。ていうか知らないのか?神の名が変わった事を…。
「約十五年前に、私が死んだ父と一緒にこの国を作りました」
「それは知っている…」
「ええ、私の妻と母が教皇に殺されました」
そんな事があるのか…。ダウタウーン公国の人達は、悔しそうな顔をしている…。
「今の教皇は、女性なんです。かなり我が儘で嫉妬深い女です。気を付けてはいたんですが…丁度妻達が殺された時、私はその場にいませんでした。婦人の集まりでしたからね…どうやら若く美しかった妻が許せなかったようで、難癖を付けて殺したのです…そしてそれを庇った母まで…」
「そんな簡単に…普通出来る訳…」
「キクチさん…普通じゃ無いんです…あの国は…。妻はどうやったら若さを保てるの?と聞かれ、美味しい物を食べれば良いのでは?と答えたそうです…そうしたら、妾が美味しい物を食べてないと申すのか!老けているというのか!と言って切られたそうです…」
「そんな馬鹿げた…」
ふざけてる…。そんな国があって良いのか?しかも国のトップだろ?
「それで、私達は国に帰った後、独立を宣言しました。本当は戦争しようとしましたけどね…でも軍力に差がありますし、国民には関係ありませんから…それでこの場所は、島国という事もあり上手く独立できました。教国内にも味方はいますしね」
「それで…今回は何があったんですか?」
「使者が来て、色々と聞かれました。一番はリリーシュ様について、二番は美容についてですかね。勿論色々とはぐらかしました。あの国はほぼ鎖国状態ですから、情報が欲しいのでしょう。おそらく密偵でも入ったんだと思います。急激に発展していくこの国に、興味を持ったのだと…それで使者を出した…」
「そうか…あの国は厄介だからな…ヤッカムどう思う…」
「あの国の上層部は、自分達しか認めません。国も大きいですから、戦争も可能性あるかと…」
「俺も同意見だ。それとキクチや俺達にも、接触してくるかもしれん」
「ええ、ジーク様。私達の国で情報を得られなければ、そちらの大陸に行くのが、目に見えています。おそらくもう密偵は放たれているかと…」
「そうだな…各国にも連絡を入れておこう」
「新しい物を手に入れる為に、無茶するかもしれません。使者を送るにしても、あの国は教国至上主義ですからね…かなり上から来ると思います…」
急に怖い話になってきたよ…。でもお店にいれば、加護もあるし大丈夫だけど…。皆もいるし、出掛けもするからな…。因みに、ラルベリマルサーヌピヨン教国は、僕達の住んでいる大陸とはまた違う大陸にある国で、大きさもこちらの大陸と同じ大きさ位で、かなり大きいらしい。
「でも大きいだけあって、完全に纏まってはいませんから、行動も遅いです。焦る必要はないかと」
「そうだな…そっちの大陸を統一して、こっちに来る気とかもあるのか?」
「どうでしょう…ドワーフの国、ドワッフルはそのままの様です。ドワーフには、色々と助けられてるはずですしね。南は砂漠や砂障壁もありますから、環境が大変なのであまり無理はしないかと。砂漠の王国には親しい者もいる様でしたし、多分攻めないでしょう。なら北上して…そちらの大陸に行く…そっちの方が現実的かもしれませんね…」
「可能性はありそうだな…」
「領土を広げる気なら…そうなりそうですね…」
「でも…領土を広げるとしても、新しい文化に触れてからでしょう。もしくは沢山手に入れてからか…」
そのまま少し暗い雰囲気は続いたが、急ぐ必要は無さそうなので、また普通に食事に戻る。ナナセさんも、また新たな伏線か…なんて言っていたよ。不安はあるが、まずは明日の海水浴を楽しむ事にしよう。皆も楽しみにしていたからね。海に入って、海の幸でバーベキューして、日光浴して、リゾートを楽しむぞ!




