アカサタナ帝国とイキシチニ帝国訪問、竜王降臨
皆は外に出ていった。残ってるのは、僕とナナセさん。それに、ゆっくりしているサーツリーク様だ。もし悪者や魔獣が外にいるなら、最悪この方が倒してくれるのでは…?皆が束になっても敵わないそうだし…。
「どうしますか?店長…」
「外に出るのも怖いけど、ここにいてもね…」
僕達は、戦闘に関して無力だからな…。
「大丈夫だよ。そろそろ私らも行こうかね」
「はい…」
サーツリーク様が大丈夫と言うなら、きっと大丈夫なのだろう。なので信用して表に出る事にしよう。そして表に出るとそこには…。
「どっドラゴン!?」
「うわー!凄く大きいです!」
少し先に、物凄く大きなドラゴンがそこにいた。そして他の皆が周りを囲むようにして、臨戦体勢に入っている…。きっかけ次第で、すぐ戦闘開始だろう。ドラゴンは相当強いのだろう。皆の表情で良くわかる…。そしてドラゴンが大きな口を開ける!ヤバイ!と思ったその瞬間…。
「おーい!サーツリーク!こいつらどうにかしてくれんか?」
ドラゴンは普通に喋り始めた。
「皆気にしないでちょうだいな。友達の竜王だよ」
「「「「「ええ~!?」」」」」
普通に友達が、遊びに来たみたいだ。皆の緊張感を返して欲しい。でも皆がホッとしている。
「早く言ってくれよ…死ぬかと思った…」
「世界は本当に広いな…こんなドラゴンもいるのか…しかも竜王とは…」
「まさかサーツリーク様と同等の力を、感じるとはね…」
「一日にこんなバケモノに、二回も会うか?普通…」
皆がそれぞれ愚痴っている。そりゃそうだ、それなら早く言ってくれれば良いのにね。
「ごめんなさいね。驚かせたかったから。で、さっき言っていたお願いってのが、竜王の事なのさ」
「えっ?僕が何を…」
「とにかく竜王は家に入れないから、皆自分のお茶持ってきてちょうだい。竜王もお茶菓子でも持ってくるから、ちょっと待ってて」
という事で、今度は外で話をする事に。竜王もそこに座り込み、皆も家にお茶を取りに行く。さて、どうなる事やら…。
※※※
「簡単に言うと、竜王は暇なのよ。いつも北の山にいるからね。皆もビビるから、遊び相手も私くらいしかいないの。それに私も暇だしね」
「儂はとにかく暇でのう。竜族ですら儂を避けたりするからな。強すぎるのも困ったもんじゃよ。最近はそれでも、お主等の考えた新しい魔法や、詠唱の話をサーツリークから聞いてな楽しかったんじゃ」
「なら、問題ないのでは…」
良かったじゃないか。暇潰し出来てる。
「それが、更に強くなり過ぎてのう…本当に誰も近寄って来なくなったんじゃ…」
「そりゃそんな魔力発してれば…当然だろ…」
「魔力を感知出来るなら、普通は皆逃げるぞ。俺達だって逃げたかったよ」
ジーク様とアントレン様の皮肉に、皆が頷く。
「サーツリークだって、同じ様なもんじゃろうが。でもサーツリークは、本も読めるし、料理だって出来る。でも儂はこの図体じゃからの、本も読めんし、料理も出来ない。暇なんじゃよ。最近では漫画っていうのも流行ってるんじゃろ?羨ましい限りじゃ」
「それでキクチに、暇潰しの案を聞きたくてな。私も同じだしね。ヒビってここに近寄る者は、少ないからね」
なるほど…。この二人の為の暇潰しか…。トランプやオセロみたいなゲームも、あの手と爪じゃやり辛いだろうしなぁ。
「サイトウさんに頼んで、映画とかドラマでも見れる様に出来るかなぁ」
「あれをか?どうやって?」
「DVDは、電力さえ供給出来れば、どこでも見れます。ここにテレビとかを設置して、常に見れる様にすれば…何とかなるはず…」
「それはどういう物なんじゃ?」
「僕も詳しく聞かせて欲しい!」
「俺も!」
オースリー王国以外の面々も、興味津々だ。それでしっかりと説明をする。
※※※
「それは良いね!ここで竜王と、楽しく過ごせそうだよ。竜王も良いだろ?」
「ああ!最高じゃな!」
「俺も国に置きたいな…」
「僕も…」
オースリー王国の人達は、僕の家で見れるから良いだろうけど、他の国は羨ましいだろうな。そしてそこで、ナナセさんのアドバイスが入る。
「そもそも魔力は、隠せないんですか?私達は、全く感じないからわかりませんけど」
「自然に発生する物だからな…」
「そうだな…俺達だって出ているもんな…」
「私が知る限りでは、出来るはずです!やって見ましょう!まず自分のお腹に溜めるイメージで、魔力を押さえ込んでみて下さい!」
そんな勝手な事を…いつもの様に適当に言うんじゃないよ。でも皆が揃って試し始める…。
「何だか…体の内部に熱が籠るな…」
「本当だ…」
「これはなんだ…したことないぞ」
「私の予想では、魔力は魔素を外部から吸収して、自分の魔力に返還しているはずです。なのでそれを感じて欲しいんです」
「そんな事出来るのか…」
「魔素か…初めて聞くな…」
「今はきっと体の中心に、魔力が溜まっているので、体の表面は魔素に敏感になっているはずです。きっと今なら魔素が感じられる。集中して下さい!」
本当かよナナセさん…。
「これは…体に入ろうとしている…」
「何じゃ…この感覚は…」
「それが魔素のはずです。とにかく侵入を遮断して下さい。もしくは、内部に今溜めてる魔力を表面に留めて下さい。放出させない様に。そうすれば入ってこれないはずです。さっき魔素を感じたのなら、今まで自然に行っていた魔力返還を操って下さい」
本当みたいだなナナセさん…。
「出来る…遮断出来る…」
「こんな事出来たのか…」
「産まれた時から、当たり前に魔力の循環をしていたからだと思います。魔素が入ってくるのも、魔力に変換されるのも、自然に魔力を放出するのも、全部当たり前だったんです。それを自分の意思でコントロールすれば、魔力の放出による威圧感も消せますよ。魔力が無くなった時の自然回復も、自分の意思で早める事も可能でしょう」
「マジか…」
「天才過ぎるだろ…」
あなたは何者なのナナセさん…。
「きっと練習すれば、もっと上手に、自然に出来るんじゃないですか?」
「ああ、儂でも出来そうじゃ…こんな驚きは何百年振りじゃろうか」
「これなら私も街に出られそうだね。ありがとうナナセ…」
「信じられないな…」
「ああ、でもあの魔力が、今は感じられないからな…」
「国に戻ったら、また研究だな…暗部も喜ぶな…」
「ああ気配は消せても、魔力放出は…集中さえすれば、ある程度の武人なら察知出来るからな…」
「また革命だな…」
あなたは革命家なのナナセさん…。
※※※
そのまま皆は、少し練習をしていた。僕達はお茶を飲んでる。するとナナセさんが…。
「そろそろ良いかな…」
「えっ?」
今度は何するの?
「竜王様。次の段階に入りましょう!」
「えっ!まだあるのか!?」
「当たり前です。魔力操作に慣れたら、第二段階です」
「ナナセって本当に魔法使えないの?完全に出来る人の言い方だろ?」
「ああ、あそこまで詳しいのに使えないなんて、嘘だと思いたいよ…」
「でも本当だろうな…魔力を感じられないもんな…」
本当にそうだよ。もうあの言い方は賢者だ。革命家であり賢者なの?
「魔力を自分の体内にしっかり循環させ、今度は体ごと小さくなるイメージをして下さい。私の予想だと、竜は竜人に変身出来るはずなんです!」
「えっ?儂は変身出来るの?」
「当たり前です!魔力の高い竜、更に竜王ならば確実に変身出来ます!とにかく体を小さくするイメージを!そしてそのイメージに魔力を重ね合わせ、体を魔力で包んで下さい!」
そうなの?それってライトノベルの世界でしょ?そんな簡単に変身なんて…。
「小さくなってる…」
「嘘だろ…」
簡単に小さくなった。あっさりと第一段階突破だよ…。
「よしっ!今度はそのまま、人間をイメージして下さい!出来ればカッコ良くしますよ!鱗も消して肌は人間の様に、髪と瞳の色は鱗と同じ色に、自慢の角を頭にさりげなく残して、服は店長の様な感じで、身長も私達位に、手足は指先までしっかり…」
「凄く細かいな…」
「ああ…」
「でもイメージは具体的な方が良いか…」
「でも趣味も感じるのは、気のせいか?」
気のせいじゃない…。間違いなくナナセさんの趣味にしていると思う…。
「そのイメージを自分と重ね合わせて、魔力で包み込め!」
「あっ!」
「おお!」
「これは!」
あっさりとまぁ…。変身したよ…。竜人に…。しかもカッコ良いよ…。
「ふうっ…どうだ?…おっ!手足は出来てるな!服も良さそうじゃ!凄い!本当に出来るんじゃな!」
「完璧です!家に入って鏡も見てみましょう!」
その後は、大騒ぎだ。今まで出来なかった事を、色々と試したりね。本を読んだり、ティーカップでお茶を飲んでみたりとね。その後も、竜王様に名前が無いことを知ったナナセさんが、「名前を付けましょう!うーんと『ニール』で!」なんて一幕もあった…。竜王様はメッチャ喜んでたよ。因みにサーツリーク様も変身出来た。若く麗しいスレンダー美人にね。昔の自分と言っていたけど、誰も信じてなかったのは内緒の話…。他の皆もガンバってはいたが、根本的な魔力が足りないのか出来なかった。
※※※
「じゃあ帰りますね」
「ああ、助かった!儂にもまだまだ可能性があるのじゃな!しっかり練習して、自然に街に行ってみせるぞ!ニールとしてな!」
「私もありがとう。これなら色々と遊びに行けるしね。でもDVDも頼むよ!ワクワクしてるからね!」
「はい。わかりました。時間は多少掛かると思うので、お願いします」
「ちゃんと私の言った通りに、練習して下さいね!そしたらまた次の段階です!」
最後に、またナナセさんからの爆弾発言でざわついたけど、何とか無事にワイバーンに乗る。その時やけにナナセさんは、ワイバーンになつかれていた。もしかしたら、いつかワイバーン達も変身する気なのだろうか…。そしてカナヤ様とキニユ様にも凄く感謝され、僕達は帰る事が出来た。
※※※
「今回も楽しかったですね!」
「ナナセさんは本当に楽しそうだね…僕は疲れたよ…」
ナナセさんは、相変わらずだ。僕も少しはナナセさんを見習って、気楽に過ごしたい…。きっと無理だけど…。




