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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
80/136

アカサタナ帝国とイキシチニ帝国訪問、竜王降臨


 皆は外に出ていった。残ってるのは、僕とナナセさん。それに、ゆっくりしているサーツリーク様だ。もし悪者や魔獣が外にいるなら、最悪この方が倒してくれるのでは…?皆が束になっても敵わないそうだし…。



「どうしますか?店長…」


「外に出るのも怖いけど、ここにいてもね…」



 僕達は、戦闘に関して無力だからな…。



「大丈夫だよ。そろそろ私らも行こうかね」


「はい…」



 サーツリーク様が大丈夫と言うなら、きっと大丈夫なのだろう。なので信用して表に出る事にしよう。そして表に出るとそこには…。



「どっドラゴン!?」


「うわー!凄く大きいです!」



 少し先に、物凄く大きなドラゴンがそこにいた。そして他の皆が周りを囲むようにして、臨戦体勢に入っている…。きっかけ次第で、すぐ戦闘開始だろう。ドラゴンは相当強いのだろう。皆の表情で良くわかる…。そしてドラゴンが大きな口を開ける!ヤバイ!と思ったその瞬間…。



「おーい!サーツリーク!こいつらどうにかしてくれんか?」



 ドラゴンは普通に喋り始めた。



「皆気にしないでちょうだいな。友達の竜王だよ」


「「「「「ええ~!?」」」」」



 普通に友達が、遊びに来たみたいだ。皆の緊張感を返して欲しい。でも皆がホッとしている。



「早く言ってくれよ…死ぬかと思った…」


「世界は本当に広いな…こんなドラゴンもいるのか…しかも竜王とは…」


「まさかサーツリーク様と同等の力を、感じるとはね…」


「一日にこんなバケモノに、二回も会うか?普通…」



 皆がそれぞれ愚痴っている。そりゃそうだ、それなら早く言ってくれれば良いのにね。



「ごめんなさいね。驚かせたかったから。で、さっき言っていたお願いってのが、竜王の事なのさ」


「えっ?僕が何を…」


「とにかく竜王は家に入れないから、皆自分のお茶持ってきてちょうだい。竜王もお茶菓子でも持ってくるから、ちょっと待ってて」



 という事で、今度は外で話をする事に。竜王もそこに座り込み、皆も家にお茶を取りに行く。さて、どうなる事やら…。



※※※



「簡単に言うと、竜王は暇なのよ。いつも北の山にいるからね。皆もビビるから、遊び相手も私くらいしかいないの。それに私も暇だしね」


「儂はとにかく暇でのう。竜族ですら儂を避けたりするからな。強すぎるのも困ったもんじゃよ。最近はそれでも、お主等の考えた新しい魔法や、詠唱の話をサーツリークから聞いてな楽しかったんじゃ」


「なら、問題ないのでは…」



 良かったじゃないか。暇潰し出来てる。



「それが、更に強くなり過ぎてのう…本当に誰も近寄って来なくなったんじゃ…」

 

「そりゃそんな魔力発してれば…当然だろ…」


「魔力を感知出来るなら、普通は皆逃げるぞ。俺達だって逃げたかったよ」



 ジーク様とアントレン様の皮肉に、皆が頷く。



「サーツリークだって、同じ様なもんじゃろうが。でもサーツリークは、本も読めるし、料理だって出来る。でも儂はこの図体じゃからの、本も読めんし、料理も出来ない。暇なんじゃよ。最近では漫画っていうのも流行ってるんじゃろ?羨ましい限りじゃ」


「それでキクチに、暇潰しの案を聞きたくてな。私も同じだしね。ヒビってここに近寄る者は、少ないからね」



 なるほど…。この二人の為の暇潰しか…。トランプやオセロみたいなゲームも、あの手と爪じゃやり辛いだろうしなぁ。



「サイトウさんに頼んで、映画とかドラマでも見れる様に出来るかなぁ」


「あれをか?どうやって?」


「DVDは、電力さえ供給出来れば、どこでも見れます。ここにテレビとかを設置して、常に見れる様にすれば…何とかなるはず…」


「それはどういう物なんじゃ?」


「僕も詳しく聞かせて欲しい!」


「俺も!」



 オースリー王国以外の面々も、興味津々だ。それでしっかりと説明をする。



※※※



「それは良いね!ここで竜王と、楽しく過ごせそうだよ。竜王も良いだろ?」


「ああ!最高じゃな!」


「俺も国に置きたいな…」


「僕も…」



 オースリー王国の人達は、僕の家で見れるから良いだろうけど、他の国は羨ましいだろうな。そしてそこで、ナナセさんのアドバイスが入る。



「そもそも魔力は、隠せないんですか?私達は、全く感じないからわかりませんけど」


「自然に発生する物だからな…」


「そうだな…俺達だって出ているもんな…」


「私が知る限りでは、出来るはずです!やって見ましょう!まず自分のお腹に溜めるイメージで、魔力を押さえ込んでみて下さい!」



 そんな勝手な事を…いつもの様に適当に言うんじゃないよ。でも皆が揃って試し始める…。



「何だか…体の内部に熱が籠るな…」


「本当だ…」


「これはなんだ…したことないぞ」


「私の予想では、魔力は魔素を外部から吸収して、自分の魔力に返還しているはずです。なのでそれを感じて欲しいんです」


「そんな事出来るのか…」


「魔素か…初めて聞くな…」


「今はきっと体の中心に、魔力が溜まっているので、体の表面は魔素に敏感になっているはずです。きっと今なら魔素が感じられる。集中して下さい!」



 本当かよナナセさん…。



「これは…体に入ろうとしている…」


「何じゃ…この感覚は…」


「それが魔素のはずです。とにかく侵入を遮断して下さい。もしくは、内部に今溜めてる魔力を表面に留めて下さい。放出させない様に。そうすれば入ってこれないはずです。さっき魔素を感じたのなら、今まで自然に行っていた魔力返還を操って下さい」



 本当みたいだなナナセさん…。



「出来る…遮断出来る…」


「こんな事出来たのか…」


「産まれた時から、当たり前に魔力の循環をしていたからだと思います。魔素が入ってくるのも、魔力に変換されるのも、自然に魔力を放出するのも、全部当たり前だったんです。それを自分の意思でコントロールすれば、魔力の放出による威圧感も消せますよ。魔力が無くなった時の自然回復も、自分の意思で早める事も可能でしょう」


「マジか…」


「天才過ぎるだろ…」



 あなたは何者なのナナセさん…。



「きっと練習すれば、もっと上手に、自然に出来るんじゃないですか?」


「ああ、儂でも出来そうじゃ…こんな驚きは何百年振りじゃろうか」


「これなら私も街に出られそうだね。ありがとうナナセ…」


「信じられないな…」


「ああ、でもあの魔力が、今は感じられないからな…」


「国に戻ったら、また研究だな…暗部も喜ぶな…」


「ああ気配は消せても、魔力放出は…集中さえすれば、ある程度の武人なら察知出来るからな…」


「また革命だな…」



 あなたは革命家なのナナセさん…。



※※※



 そのまま皆は、少し練習をしていた。僕達はお茶を飲んでる。するとナナセさんが…。



「そろそろ良いかな…」


「えっ?」



 今度は何するの?



「竜王様。次の段階に入りましょう!」


「えっ!まだあるのか!?」


「当たり前です。魔力操作に慣れたら、第二段階です」


「ナナセって本当に魔法使えないの?完全に出来る人の言い方だろ?」


「ああ、あそこまで詳しいのに使えないなんて、嘘だと思いたいよ…」


「でも本当だろうな…魔力を感じられないもんな…」



 本当にそうだよ。もうあの言い方は賢者だ。革命家であり賢者なの?



「魔力を自分の体内にしっかり循環させ、今度は体ごと小さくなるイメージをして下さい。私の予想だと、竜は竜人に変身出来るはずなんです!」


「えっ?儂は変身出来るの?」


「当たり前です!魔力の高い竜、更に竜王ならば確実に変身出来ます!とにかく体を小さくするイメージを!そしてそのイメージに魔力を重ね合わせ、体を魔力で包んで下さい!」



 そうなの?それってライトノベルの世界でしょ?そんな簡単に変身なんて…。



「小さくなってる…」


「嘘だろ…」



 簡単に小さくなった。あっさりと第一段階突破だよ…。



「よしっ!今度はそのまま、人間をイメージして下さい!出来ればカッコ良くしますよ!鱗も消して肌は人間の様に、髪と瞳の色は鱗と同じ色に、自慢の角を頭にさりげなく残して、服は店長の様な感じで、身長も私達位に、手足は指先までしっかり…」


「凄く細かいな…」


「ああ…」


「でもイメージは具体的な方が良いか…」


「でも趣味も感じるのは、気のせいか?」



 気のせいじゃない…。間違いなくナナセさんの趣味にしていると思う…。



「そのイメージを自分と重ね合わせて、魔力で包み込め!」


「あっ!」


「おお!」


「これは!」



 あっさりとまぁ…。変身したよ…。竜人に…。しかもカッコ良いよ…。



「ふうっ…どうだ?…おっ!手足は出来てるな!服も良さそうじゃ!凄い!本当に出来るんじゃな!」


「完璧です!家に入って鏡も見てみましょう!」



 その後は、大騒ぎだ。今まで出来なかった事を、色々と試したりね。本を読んだり、ティーカップでお茶を飲んでみたりとね。その後も、竜王様に名前が無いことを知ったナナセさんが、「名前を付けましょう!うーんと『ニール』で!」なんて一幕もあった…。竜王様はメッチャ喜んでたよ。因みにサーツリーク様も変身出来た。若く麗しいスレンダー美人にね。昔の自分と言っていたけど、誰も信じてなかったのは内緒の話…。他の皆もガンバってはいたが、根本的な魔力が足りないのか出来なかった。



※※※



「じゃあ帰りますね」


「ああ、助かった!儂にもまだまだ可能性があるのじゃな!しっかり練習して、自然に街に行ってみせるぞ!ニールとしてな!」


「私もありがとう。これなら色々と遊びに行けるしね。でもDVDも頼むよ!ワクワクしてるからね!」


「はい。わかりました。時間は多少掛かると思うので、お願いします」


「ちゃんと私の言った通りに、練習して下さいね!そしたらまた次の段階です!」



 最後に、またナナセさんからの爆弾発言でざわついたけど、何とか無事にワイバーンに乗る。その時やけにナナセさんは、ワイバーンになつかれていた。もしかしたら、いつかワイバーン達も変身する気なのだろうか…。そしてカナヤ様とキニユ様にも凄く感謝され、僕達は帰る事が出来た。



※※※



「今回も楽しかったですね!」


「ナナセさんは本当に楽しそうだね…僕は疲れたよ…」



 ナナセさんは、相変わらずだ。僕も少しはナナセさんを見習って、気楽に過ごしたい…。きっと無理だけど…。



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