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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
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ナヤマンとナシコレン、偶然の出会い


 美容室やどこかに行くと、偶然知り合いに出会う事もある。誰でもそんな経験が、あるのではないか。



「あれっ?ヌーンポット婦人じゃないですか!」


「あら?ナシコレンくんじゃない!久し振りね!」



 ナシコレン様は、アントレン様の弟で、ハカサナイの当主だ。アントレン様が排爵し、正式に当主となり領を任されている。まぁ元々アントレン様は騎士で忙しかったし、殆ど変わらないらしいが。アントレン様が以前連れてきて、それからたまに来てくれる様になった。それにしてもヌーンポット?聞いた事あるような…でもナヤマンさんじゃないか。



「お二人は、お知り合いですか?」


「キクチさん…もしかして、知らないんですか?この方を…」


「ナヤマンさんじゃ、ないんですか?」


「ふふっ、それで良いのよ」


「全く…ヌーンポット婦人らしい…こちらはナヤマン・ヴァン・ヌーンポット様です。前国王の妹君で、現国王の伯母様、そしてタハラシ様のお母様ですよ」


「えーっ!」



 タハラシ様が、ジーク様の従兄弟なのは知ってるけど、ナヤマンさんがそんな方だったなんて…。そしてその話が聞こえてた店内は、急にピリつく…。そりゃそうだ、いきなり王族の登場だからね…。



「それは…ナヤマン様、今まで失礼をしていた様ですいません…特にナナセさんなんかは…」


「良いのよ!今まで通りナヤマンさんでお願い!ナシコレンくんもそうして!皆さんも気にしないで!」


「それはありがとうございます…でもビックリしました…」


「僕もですか?ていうか、何故黙ってたんですか?」


「その方が楽で良いのよ。誰とも気さくにしゃべりたいわ。特に王女の頃なんて最悪だったんだから、友達も出来にくいし」



 元王女って凄いな…。確かに良く見るとタハラシ様に似てるし、髪の色も近いな。でも凄く若く見えるし、タハラシ様みたいな、息子がいるとは思えない。それに…。



「でもここに来られ初めてから、二年近く経つから…タハラシ様より先に来られてますよね…全く気付かなかった…」


「そうね。私は噂を聞いてすぐ来たしね。タハちゃんにも黙ってたから」


「ブフォッ!タハちゃんて…ククッ、笑わせないで下さい…」


「ヌーン…いやナヤマンさん、ププッ、タハちゃんて…」



 店内が笑いの渦に包まれた。他のお客様も笑っている。ナナセさんは大爆笑。オーパイさんや学生ですら。タハラシ様はイケメンだし、騎士の憧れでもある。実際カッコつけだしね。それが急にタハちゃんなんて言われたら…笑っちゃうよ…。



「そんなにタハちゃんが面白いの?」


「すっすいません…あのタハラシ様からは想像出来なくて…」


「いつも僕の兄と張り合ってますけど、それでも強くカッコ良い騎士の見本ですからね」


「そうなの?あんなに可愛いのに…小さい頃なんてね…」



 そこから、タハラシ様の小さい頃の話を聞かされた…。



※※※



「アーッハッハ…もうダメ…死ぬ…ププッ」


「ヒィーッヒィーッ…お腹痛い…ナヤマンさん…勘弁して…ヒィーッ」


「そんなに面白いの?最近だって…」



 店内は爆笑の渦に包まれた。そして最近の話も聞かされる…。



※※※



「ヒューッヒューッ…もう息が…本当に…死ぬ…」


「フーッフーッ、精神統一すれば…だめだっ…ブフォッアーッハッハ!」



 店内が大爆笑の渦に包まれた。もう仕事にならない…。ナヤマンさんは何気なく喋るが、話の天才じゃないか?タハラシ様のエピソードも最強過ぎる!



「ナヤマンさん!」


「あら?ナナセちゃんなぁに?」


「カットが終わったら、私に時間を下さい!」


「良いけど何かしら?」


「後のお楽しみです!」



 そしてカットが終わったら、ナナセさんはナヤマンさんを連れて、お店を出ていった。



「あー面白かった。こんな所で会うのも珍しかったけど、こんな展開は更に稀だね」


「本当ですよ。ナシコレン様が気付かなかったら、さっきの話は一つも聞けませんでしたから…ふふっ」


「本当にね!偶然て怖いね…ククッ」



 その後、何故かナシコレン様は店内の皆に感謝され、握手を求められた。ナシコレン様はそれに堪え、気持ち良く帰られた。そしてナナセさんとナヤマンさんは…。



※※※



「嘘でしょ?」


「いえ本当です!」


「漫画にするの?」


「はい!プルトンさんも大爆笑のノリノリでしたよ!ナヤマンさんもノリノリで、二人で盛り上がって、すぐ決まりました!」



 ナヤマンさんとプルトンさんの共著で『がんばれ!タハちゃん!』の制作が決まった。タハラシ様の面白エピソードが満載の、この世界初のギャグ漫画だ。プルトンさんの描く上手な漫画に、たまに出てくるナヤマンさんの下手な絵が魅力の作品だ。後に銀の翼と同じくらい大ヒットする事になる。その話はまた後日…。



※※※



 ある日の営業終了後。今日はジーク様、タハラシ様、ヤッカム様が二階で仕事をしている。



「次はどの国だ?」


「来週、デリタム王国にナナセさんと行って来ます…ププッ」


「そうかナナセも行くのか」


「はい!私も軍の名前を付けなきゃ…ふふっ、いけませんから…ふふふっ…」


「なんだ…?どうした…」


「いっいえ、ブフォッ」


「わっ私も別に…ププッ」


「タハラシも変だと思わんか?」


「タハラシ…タハちゃん…ダメだっ…アハッアハハハッ!」


「もう無理っ、イーヒッヒッヒィーッ!」



 もう無理だ。タハラシ様を見ると、笑ってしまう!許してくれ!



「タハちゃん?…そういえば昔、タハラシが伯母上にそう呼ばれてたような…」


「ヒィーッヒィーッ、ジーク様…それ、今も…呼ばれ…エーッヘッヘ!」


「ナナセさん…それ、フヒッ…言っちゃダメ…フハーッハッハ!」


「まさかタハラシ、今もそう呼ばれてるのか?」


「まっまさか、母上が…来たのか…ここに…」


「ずーっと前から…プクク…来てますよ…それに…ママですよね…ヒャーッハハハッ!」


「ナナセさん…だから言っちゃ…グフッ…ダメ…ブハハハッ!」



 もうダメだ。タハラシ様には後で怒られよう。目一杯謝ろう!



「お前!まさか…」


「ジーク様!先に帰らせて頂きます!」



 その後もナナセさんが、ナヤマンさんが来られた時のエピソードを話し、ジーク様とヤッカム様も含めて、また大爆笑。タハラシ様はナヤマンさんの元へ、急いで確認しに行った…。そこで全部聞き、絶望したそうだ…。但し、ナヤマンさんは、漫画化の事だけは秘密にしたそうだ。出来上がったら見せて驚かしてあげるんだってさ…。つまりタハラシ様の真の絶望は、まだ先って事だね…。可哀想だけど、漫画は楽しみだよね…。プククッ…。



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