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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
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ゲーイジューツ皇国訪問、漫画と美容


「まずはゲーイジューツ皇国か…」


「はい…ジャンケンでその様に決まりました。来週行ってきます」


「アントレンは貴族を排爵したしな…タハラシ、護衛で付いていけ」


「はい、ジーク様。よし…これで漫画になる何かきっかけを作れれば…」


「タハラシ様…そんな危険な事は、起きませんよ…」


「わからんぞキクチ…各国の首脳陣は、神の声を一緒に聞いたし、最近では交流も多いから、信用はある程度出来る。しかし他の貴族や商人は、まだまだ未知数だ。どこから手が出てくるかはわからんぞ」



 いきなり怖い事を…。まぁ確かに僕は外国を知らないしな、一応肝に命じておこう。



「まぁあの国は、武力に重きを置いていなかったから、タハラシ一人でも充分対応出来るだろう」


「その言い方は、私がアントレンより弱いみたいですよ…」


「実際に負けたじゃないか…まぁ良い。それで内容はどんな感じだ?」


「早朝から行って、内容は…侍女への美容技術の指導と、漫画ギルドの訪問。後は皇太后様とも面会があります」


「そうか…アキハバーラ皇太后とも会うのか…」


「…何か問題でも?」


「いや…俺も十年以上前に会ったきりだが…面白い方だったよ…」



 何か面倒臭そうな気配が…。まぁ行けばわかる。



※※※



「これが転移陣ですか…」


「はい。各国で協力し、完成しました。ナナセ様は素晴らしいですね。次の発案が楽しみです」



 魔法学者がそんな事を言う。次を期待せず、自分達でも頼むよ。でもこの魔方陣は、僕は良くわからないけど凄いのは何となくわかる。各国様にいくつも描かれている。様々な紋様と文字、魔石等も使われている。きっと苦労したのだろう。建物も王都とサロンの街の中間にあり、厳重な警備もされている。建物自体もそれなりに大きく、頑強な様だ。



「では行くぞ」


「はい。お願いします」



 僕達は、タハラシ様の他に『聖本の騎士』マガジャさんもいる。カリスマ漫画家だ。護衛も兼ねて一応参加してもらった。それとヤッカム様だ。外交でもあるしね。最近では良く利用しているらしい。



「希望の土地へ、我らの誇りと、体と、この想いを届けよ!翔べ、ゲーイジューツ皇国へ!」



 ナナセさんの考えた詠唱を、ヤッカム様がすると僕達は何かの光に包まれ、一瞬にして別の部屋に移動していた。何が起きたかもわからない…。



「待っていたよ。キクチ」


「私もですわ」


「あっ、ありがとうございます。そんなわざわざ迎えなくても…」



 そしてそこには、まさかの皇帝夫妻のお出迎えだ…。後ろにも護衛や側近もいる…。しかもワクワクが伝わってくる…。どれだけ楽しみにしてたんだよ…。まだ七時位だぞ…。



「では早速向かいます。漫画ギルドへ!」


「展開が早いなぁ…」



 そのまま用意された馬車で、皇都へ向かう。



※※※



「街並みが、オースリー王国とはまた違って良いですね」


「ありがとうございます」



 以外と皇都は近く、すぐに着いた。街並みはカラフルでポップ。まさにファンタジーだ。オシャレが流行った事で、より美しく変わっているらしい。まさに芸術の街だ。遠くには、海も見える。こっちの世界で、いつか海も行ってみたいなぁ…。



「お菓子の家みたいだなぁ…」


「なっなんですか?そっそれは!」


「えっ…いやお菓子をモチーフにして作られた家で…クッキーやケーキとかで彩る感じかな…中には本当に食べれたりして…ミニチュアで作ったら、子供とかも大喜びみたいな…」


「くっ詳しく教えて下さい!」



 ヤバッ、早くも地雷を踏んだみたいだ。ゲーイジューツ皇国が、ざわつきだした…。この国は様々な文化を愛してるから、情報は大切だろうな。そしてギルドに着くまで、そんな話で終わった。



※※※



「皆、頑張ってますね」


「はい。良かったら見てやって下さい」



 案内された漫画ギルドは、オースリー王国と同じ様に、出版や印刷も行っている様だ。でも今は漫画家が足りないので、皆で描いたり、意見を出し合ったりする場でもあるみたい。



「こういった内容なら、もう少し派手に描いても…」


「人物描写が弱いからつまんないな…」


「本人に寄せるよりも、デフォルメして可愛くした方が…」


「史実ばかりでなく、創造した物語が…」



 とにかく沢山見せられる…。僕はプロじゃ無いからね…。



「マガジャさんも見て下さいよ…折角ですから…」


「僕もよろしいのですか?それは嬉しいですけど…」


「失礼ですが…そちらの方も、漫画に詳しいのですか?」


「何を言ってるんですか…『銀の翼』作者の『聖本の騎士』マガジャさんですよ…知らなかったんですか?」


「「「「「えっ!」」」」」



 気付いてなかったんだ…。そしてそこからは大変だった。どこから持ってきたかはわからないが、いつの間にか銀の翼を持ち込み、サイン会だ。皆、涙を流してたよ。そして皆も、漫画のアドバイスをマガジャさんから貰い、天にも昇る勢いだ。ていうかサインあるんだね、マガジャさん…。



「くそっここでも、銀翼の騎士団が私の邪魔を…サインも考えねば…」


「タハラシ…残念だったな…きっと次はお前が活躍するさ…」


「ヤッカム様…次も同じだったらどうするんですか…」



 皆に囲まれるマガジャさんを見て、悔しがるタハラシ様…。いつか日の目を浴びますよ…。多分…。



※※※



 そして惜しまれつつも、漫画ギルドを去り皇城で美容指導だ。侍女だけでなく、アイドーラ様や貴族子女淑女の方々もする様だ。



「ではまず、簡単なへアセットから始めましょう。その後は、夜会やお茶会に合ったセットをしましょう」


「「「「「はい!」」」」」



 三つ編みや編み込み、ピンを用意して刺し方や留め方を教える。ヘアアイロンの魔道具の使い方も。巻き髪や、癖の伸ばし方まで教える。そしてどうやったら小顔に、派手に、清楚に等、時と場合を変えて教える。髪飾りも作り方や生花の刺し方等、細かく教える。僕が一人をモデルにして、皆がモデルと実技を交代しながらやる。とにかく忙しい。



「とまあ、こんな感じですが、まだまだやり方はありますし、先は長いです。今後も練習して下さい」


「「「「「はい!」」」」」


「では次にメイクの授業に入ります」



 そして次はメイク。先程と同じ様に、年齢や場面事の使い分けをしっかり説明しながら行う。どうやったら若さ、可愛さ、美しさ、慎ましさ、派手さ、格好良さ等を出せるか、パーツ事に教えていく。自分をどう見せたいか、さっきのヘアスタイルや服装も含めて教えていく。そして今回もちゃんとモデル実習だ。



「どうですか?全然違いませんか?ちゃんとした物と使い方を学べば、男達は一コロですよ!」



 自分の変化に感動している皆さんも、その言葉でさらに目の色が変わる。



「見下してくる旦那様や男はいませんか?」



 見学している男性陣がビクッとする。



「女性の美しさ、そして強さや逞しさ、そして誇りを見せ付けてやって下さい!」


「「「「「はい!」」」」」



 その後も、ヘアスタイルやメイクの質問等に答えながら、授業をする。



「質問は、全て答える時間がありませんから、まとめて貰えれば書面でお返しします。また来る機会もあるでしょうしね。ではお疲れ様でした。ありがとうございました」


「「「「「ありがとうございました!」」」」」



 大盛況だった。皆さんは自分の姿に惚れ惚れし、何度も鏡を見ている。ノートに書いたメモや、僕が渡した資料も見直している。それと何故かマガジャさんが、銀の翼の作者とバレて囲まれたりもした。その結果、またタハラシ様は落ち込み、嘆いていた…。



※※※



「では僕の母に会いに行きましょう」


「皇太后様ですね…オターク様、どんな方ですか?」


「会えばわかりますよ。なぁアイドーラ」


「フフッ、そうですね。会えばわかります。ヤッカムさんなら、ご存知でしょ?」


「ええ、知っています。前回お会いしたのは十年以上前ですが、面白い方ですね…今日も…」



 今日も?どういう事だろう。僕はまだ会ってないけど何かありそうだなぁ…。



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