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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
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首脳陣の順応、転移陣完成


 正月休みも、もう三日目。明日までしか休みは無い。でもまだ帰らない人達がいる…。



「いつまでいるんですか?仕事は?王国は大丈夫ですか?」


「一応、仕事道具は持ってきてある。合間にちょこちょこやってるしな。それに何かあれば、ここに来るよう伝えてある」


「ジーク様…いつまでいる気ですか…」


「あっキクチさん!お風呂借りました!いやーこの家のお風呂は本当に良いですね。父上、城にも同じ様なお風呂作れませんか?」


「続きのアニメ見たい…お母様、また日本に借りに行っても良い?」


「キクチが良いって言ったらね。それに私も色々見たいわ。ラブロマンス映画も最高よ!」


「ディーテ様…お言葉ですが、アクション物ドラマの方が面白いかと…ジーク様もヤッカム様も好きですしね」


「私は最近、推理物のドラマや映画も好きだ。本もそうだ。以外と勉強にもなる」


「俺はヒーロー系の映画だな。見ていてスカッとするぜ。戦ってみたら良い勝負出来るんじゃないか?」



 そう、オースリー王国首脳陣と二人の子供だ。他の皆は帰ったけど、この人達は帰らない…。去年一年で、こちらの文化に大分慣れてしまった。ルード様とマリー様も、たった二日で家電の使い方はマスターした。皆、異世界に無い言葉や単語まで、覚えてしまった。順応力の高さが仇となり、居心地の良さを堪能されている…。王国も新年の休みはあり、王族でも多少ゆっくり出来るらしい…。勘弁してよ…。仕方無いけど…。



「じゃあ、DVD借りに行きましょう…それとスーパーに食料を買いに…では行きたい人は、手を挙げて元気良く返事!」


「「「「「ハイッ!」」」」」



 全員、元気良く手を挙げる。昨日からこれを何回した事か…。結局ジャンケンになるんだけどね。そして必ず二人しか連れていかない。席が空いていても、はしゃぐ人が多いから嫌なのだ。僕が疲れるからね…。



※※※



「マリー様はジャンケン強いですね。必ずいますもんね。ヤッカム様はやっとなのに」


「私はジャンケン王になるっ!後はアニメ王にもなるっ!」


「待ちに待った、私の出番…推理映画を多く借りますよ」



 そしてはしゃぐ二人を抑えながら、皆の希望DVDを借り、スーパーで沢山買い物をした。でもマリー様みたいな子供のはしゃぐ姿は見てられる。アニメやお菓子でワクワクしている姿は、どこの誰が見てもかわいいだろう。実際、「カワイイー!」って声掛けられたしね。でもヤッカム様はちょっと見てられない…。どう見ても外国人の大人だし、そんな人が洋画のDVDで興奮してるのは、どう見ても可笑しいよ…。まぁそんなこんなで、またパラレルへ帰る…。



※※※



「だからインペリアルガードは、駄目なんだよ!」


「くそっ少し本が売れたくらいで、良い気になるな!」 


「まあまあ、良いじゃないですか…」



 帰ると、タハラシ様とアントレン様が喧嘩…。良くある事だ…。ルード様になだめられてるし…。



「俺達は常に戦ってるからな!」


「私だって、王の護衛を…」



 漫画『銀の翼』は全七巻で完結し、大ヒットした。マガジャさんは続編になる『闘神』を執筆中だ。ラヤマ平原の武闘大会から、世界武闘大会までを描くらしい。そしてインペリアルガードも、定食屋のプルトンさんに新漫画『真実の盾』を描いてもらった。結構面白いし、銀の翼程では無いが売れてもいる。



「地味だからなぁ、あの女の子が苦労する訳だ。でも俺達と違って、二巻で終わりだもんな」


「プルトン殿は確かに頑張ってくれた。しかし貴様に言われる筋合いは無い!これからまた出版するつもりだ!」



 でもアントレン様が言う通り、少し地味なんだよなぁ。基本王の護衛だから、前線に出る機会も少ないし、エピソードも弱い。プルトンさんも頑張って描いたが、全二巻でひとまず終わってしまったのだ。



「俺なんて…描いてすら貰ってないぞ…」



 そこで冷めたジーク様の声…。そうなのだ、ジーク様は描き手が見付からず、未だに困っている…。



「わっ悪い…」


「すいません…」



 ひとまず落ち着いた。そして気が付けば、マリー様がテレビを占領し、アニメを見ている。ヤッカム様も、いつの間にかパソコンを起動して映画を見始めている。ディーテ様も、ポータブルDVDプレイヤーで、恋愛映画を観賞中。ルード様も、買ってきたお菓子を取り出し、もう漫画を読む体勢だ。凄いね、異世界って…。



※※※



 そしてあっという間に夕食だ。僕はいつも色々と作らされる。誰も手伝ってはくれない。そう、他の事に夢中だからね…。僕は、損ばかりする男なのさ…。



「あっそうだ、キクチ。転移陣が完成したぞ」


「えっ」


「すっかり言うのを忘れてた」



 夕食中ふと思い出したかの様に、そんな事を言う。他の面々もそう言えばそうだった、みたいな顔だ。結構大事な話じゃないかい?



「基本は、王族や高位貴族ぐらいしか使わん。ちゃんとした施設にしたし、警備も置いた。勝手に使われても困るしな。各国共に同じ意見だ。少し城から離れた場所に頑強な建物を作り、中に各国分の転移陣を設置した。これも各国同じだ」


「それはそうでしょう、変な人が悪く利用しそうですもんね」


「ああそうだ。でもナナセのおかげで、悪人には使えない様にしたからな」


「そんな事まで…ナナセさんは…」


「それと多分、結構パラレルに来るぞ。各国の王族とかな。そして行く事になるだろう」


「えっ何でですか?」


「何を言ってるんだ。キクチ達が武闘大会の時に、遠くに行きたいとか、手段さえあれば他国にも行くとか言っていただろう」



 ヤバい…。あんまり覚えて無い…。



「宴会でも、各国に色々頼まれたりしただろ?その時もキクチは、行ける様になったら是非!なんて言っていたぞ」


「そうでしたっけ…」


「各国にも面子はあるしな。ちゃんと応えてやれよな。愛想良くしてばかりいるから、そういう事になる」


「はい…」



 珍しく、説教されてしまった。でもその通りだ…。これは忙しさが、跳ね上がるな。でも今年から美容学生も常勤するし、なんとかなるかも。嫌…それを踏まえても…大変だな…。新年早々挫けそうだよ…。



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