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異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
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異世界美容室、二度目の忘年会と新年会


 今年ももう、大晦日。今日からは四連休だ。去年は一人で色々やってる内に、皆が来て大変な事になった。今年も嫌な予感が無い訳ではない。でも今年は最初から三人いる。



「いやー、誘ってもらって悪いね!こっちに来たばかりだからね、寂しいもんだよ」


「俺も今年は、一人だと思ってたからラッキーだぜ!」


「ふふっ、今は一人者どうし、仲良く昼間から飲みましょうよ」



 そうサイトウさんとカズヤさんだ。こっちに来たばかりで、もしかしたら寂しいかな?なんて思って誘ってみた。



「ユウリも来たがってたよ。でも今年は向こうの実家に行かなきゃだしね」


「俺も両親が、海外旅行だしね。会おうと思えば、いつでも会えるしな!」



 そんな感じて、三人で楽しく飲む事に。



「でも家電や無い物も多いから、不便じゃないですか?」


「多少の不便はあるけど、俺はアスカの事もあるし、何よりも自分で色々と作ってやろうって、思ってるからね」


「俺も不便は不便だけど、それも含めて楽しいよ。案外簡単に帰れるし」


「そりゃそうだ。ははっ」



 楽しく会話をしていると、去年と同じく彼が来た。



「おう!キクチ今年も来たぜ!」


「アントレン様…やっぱり…」


「やっぱりってなんだよ!寂しいと思って来たのに…って、カズヤじゃねーか!…とサイトウだったっけ?」


「お世話になってます。折角だから、仲良く飲みましょうよ」


「そうだね、俺とも仲良くしてよ。ア・ン・ト・レ・ン」


「なんだ!その言い方は…まあ良いや。取り合えず飲もうぜ!」



 微妙な関係でも、お酒があれば大丈夫!



※※※



「そうか、あの車ってのが、こっちでも出来たら面白いな!」


「魔力の弱い方には、最高の移動手段だからね。ディンドンも、張り切ってるよ。本当に俺が来て、かなり嬉しいみたいだ」


「僕は電機関係は専門外ですからね、難しい質問には答えられませんでしたから」


「僕もマイやキクチとは違う感性らしくてさ、学生が喜んでくれてるよ」


「カズヤさんの感性は、刺激的でしょうね。僕もマイさんもそうでしたから」


「何っ?マイもだと?」


「そんな事で焦らないで下さい!」



※※※



 お酒で大分皆が饒舌に成ってくる。そして盛り上がった。そしてアントレン様が真面目な話を急にしだす…。



「何で、カズヤはマイと別れて美容師辞めたんだ?」


「…それ聞きます?」


「良いじゃないか。皆、腹割って話そうぜ。別に憎い訳でもないしな、嫉妬はするけど」


「ふふっ良いね。じゃあ話してやろうか」



 そしてカズヤさんは話し出す。少しサイトウさんは戸惑ってたけど、まあ大丈夫だろう。



「マイから話を聞いたんだろうけど、まあ簡単に言うと病気になり、子供が産めなくなり、自分のせいだと思い、離婚を決意したっていう事だ」


「ああ」


「そんな事が…」



 サイトウさんは驚いている…。サイトウさんも一度奥さんを亡くしているから、わかる部分もあるだろうな。



「マイと俺は高校からの知り合いだ…高校といってもわからないか…大体16歳位からの知り合いって事だ。で、その頃から付き合いだした。マイは小さい頃からの夢が、美容師になる事で、人を綺麗にする事が大好きなんだ」



 皆が黙って聞く。



「で、そんなマイが休み時間とかに、友達の頭をセットしたりして遊んでんの。無邪気にね。それを見て、なんか憧れたんだ。そして俺も美容師になりたいってね」


「そうか…」


「それで、同じ美容学校に行って一緒に学んでた。働き先は違ったけど、ずっと一緒に切磋琢磨してたんだ。彼女だろうが、コンテストでは容赦しなかった。実際、負けた事も無いしね。それで結婚した。ずっとこの仕事をしたいと思ってたし、いつかマイと一緒に店を出してなんて思ってた…けど…」


「病気か…」


「そう病気だ…とにかくあいつはまず、子供を産もうとした。その為に一回美容師を休んだ。子育てに集中する為にね。そして出来るだけ早く現場復帰をしようとしてた。その頃には俺も一人立ちして、店を構えるつもりでいたよ。そして二人でやっていくつもりだったんだ…でもマイの病気で子供は…」


「でもそれと、お前が辞める理由は違う…」


「そうかもしれない。でもそうじゃ無かった…。俺はマイに憧れ、マイと一緒に勉強し、マイと同じ夢を見てた。でも俺はマイをなぞってただけで、俺自身の道じゃ無かったんだ。気付いた時に驚いたよ…マイがいないだけで、こんなにやる気が下がるなんてね。お客様が大事と言いつつも、嫁さんすら大事に出来ずに仕事も出来ない…いつだってマイは俺の前にいたんだ。隣じゃなくね。マイが離れて良くわかったよ…俺はあいつを綺麗にしたい、喜ばせたい、褒められたい、いつか隣に立ちたい。そんな気持ちで一杯だったんだ…」


「それで…」


「ああ、辞めた。引き留めはかなりされたよ。自分で言うのもなんだけど、売れっ子だしね。でもそれで良かった。別れたのは残念だけど、早く病気を発見する事でマイの命を救えた…病院に行こうって言ったのは俺だしね。そこだけは感謝して貰いたいよ…なんてね」



 カズヤさんの話は終わった…。そんな事が…。自分の美容師としてのモチベーションが、かなり他人に依存してたんだろうな…。



「でも何で、この仕事を…」


「それは、なんか異世界って面白そうじゃん!マイとは関係無く、誰に頼まれてもやるよ。こんな仕事無いからね!美容業が嫌いになった訳でなく、その時はそういう気持ちだったって事!今はやりたいよ!自分自身の夢としてね!」



 やっぱり少し軽いよね。でもきっと少しはマイさんの為でもあると思う…。



「私も一度は、妻を早くに亡くした身ですからね、わかりますよ。喪失感はね…」

 

「そうでしたね…でも…」


「そう、ここで出会えた。転生してね。なら異世界に来るっきゃないでしょ!とにかく今が良いなら、辛気臭いのは止めよう!新しい俺達の門出に乾杯!」


「そうだな、俺も貴族を捨てた身だしな、新しい門出だ!乾杯!」


「勿論俺も新人教師だしね!乾杯!」


「じゃあ僕も取り合えず、男達の新しい門出に乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」



 その時、裏口のドアが開いて誰かが出ていった気がした…。何となくアントレン様も気付いた様だ…。様子を見に来た、マイさん…?もしかしてね…。



※※※



「で、その時にマイが…ブフォッ…オナラを…クックックッ」


「ダメだっ!面白過ぎるぞっ!あのマイが…ガーッハッハ」


「ヒィーッヒィーッ!もう無理です!俺は今日笑い死ぬかも…」


「じっ実は、ナナセさんにもっ、フハハッ、同じ様なオナラの話がありまして…プククッ」



 また下品な話で盛り上がる。他人の失敗談なんかは最高の酒の肴だ!



「へぇ、誰のオナラの話で盛り上がってるの?」


「店長、まさか早死にしたい訳じゃ無いですよね…」


「「「「ギャー!」」」」



※※※



 まさかの大陸最強の鬼神が二人揃っているとは…。酷い目に合った…。さらに大量の酒と食料をまた買い出しさせられたよ…。マイさんとナナセさんは、大晦日に暇なのかよ…。



「下手な事は言わない方が、身の為よ」


「ホントです!卑怯です!私のいない所であんな話で盛り上がるなんて!」


「「「「すいません…」」」」



 そしてまた飲む。昼間っから飲めるのは最高だね。



「おーい!来たぞー!今年は去年の失敗を活かして全員連れてきたぞ!」



 ジーク様が首脳陣全員連れてきた…。子供達も…。まさか全員泊まらないよね…。



※※※



 とにかく飲んだ。朝までね。年越しの瞬間は去年と同じ様に皆でハマナンさんの魔法花火を見たけど、とにかくずっと飲んだ。全員そのままバタンキューだ。そして最後まで残ったのは、僕とマイさんだ。



「明日までいそうですね…」


「去年もそんな感じだったしね…まぁいいんじゃない?」


「そうですね…ところで…マイさんさっき話、聞いてたんでしょ?」


「さぁなんの事?わからないけど…色んな想いと考えはあるって事よ」


「照れちゃって…嬉しかったくせに」


「なんの事やら…」



 まぁ良いけど…何となく僕達はグラスを合わせて乾杯をした。因みに案の定宴会は翌日まで続いた…。とにかく今年も頑張るか!



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