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異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
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マイとアントレン、今と未来


 アントレン様はジーク様の前に立ち、そして跪く。



「ジークフリート・ヴァン・オースリー陛下、このアントレン・ハカサナイの発言をお許し下さい」


「許す」



 急に緊迫ムード…。周りの人達も背筋が伸びる。いきなり公式の場として行動に出る二人…。



「今、私の伯爵の爵位を、返上をお願いします」


「アントレン!」


「タハラシ黙っていろ」



 いきなり何を…。



「アントレン…一度爵位を返上したら、二度と貴族には戻れないが、わかっているのか」


「はい」


「領地はどうする」


「今も弟が管理しております。私は不要でしょう」


「騎士団はどうする」


「陛下の判断にお任せします。除隊でも構いません」



 そこまでマイさんに…。貴族というだけでマイさんと不釣り合いとされるなら、それすら要らないのか…。まだ付き合ってもいないのに…。マイさんも戸惑っている…。タハラシ様やヤッカム様もだ。ただディーテ様だけ少しワクワクしてない?



「弟達は納得するか」


「何か言われるかもしれませんが、納得させます」


「今の住まいはどうする」


「どこか探します。使用人達も納得させ、他を斡旋します」


「そうか」



 ジーク様も悩む。話も話だからな…。急すぎるし、少し時間が掛かるかもしれない。この国の一大事だ。一人の恋で、国が左右されるのはよろしくない。



「ヤッカムどう思う」


「陛下、私としては問題はそんなに無いかと。領地で元々アントレンは、殆ど働いていません。団長職もそのままで良いかと。むしろ職を外す方が、騎士から不満が出るかと」


「そうか…アフロディーテはどうだ」


「私も同意見です」


「タハラシは」


「はっ、多少不満はありますが、元々アントレンは縛られて動くタイプではありませんので、かえって動きやすくなるかと。良くも悪くも」


「わかった」



 皆もアントレン様の味方なの?良いの?結構大事な事でしょ?



「最後にマイはどう思う」


「私は…アントレン様の想いに応えるとは言ってません。でもその想いは嬉しく思います。なのでなんと言って良いか…」


「だそうだ、アントレン」


「私は結婚する為に言っている訳ではありません。本気の想いを伝えたいから、行動にしました。この想いが届かなくとも、後悔はありません。仮にカズヤと再び結婚しようとも、それで良いのです。それが私の今までの生き方であり、これからも変わりません」



 貴族である事が枷になるなら、簡単に平民になろうとする…。ふざけた人ではあるけど、凄く信頼出来る人がアントレン様だ。カッコ良い。何故か応援したくなる。ナナセさんもそうだろうな…。マイさんはずっと戸惑っているけど…。



「わかった。爵位の返上を認めよう。たった今からお前はハカサナイの名を外し、ただのアントレンとなる。仕事はこのまま団長としておく。各所の連絡等、速やかに行え。皆も頼む」


「「「「「はっ!」」」」」



 終わった…。あっさり決まった気がする…。



「じゃあ終わり!」


「よっしゃあぁぁ!」


「やったわねアントレン!感動したわ!」


「クソッ!アントレン貴様、少し仕事が減るじゃないか!羨ましい」


「宰相の仕事を増やしやがったな!」


「俺も久々に真面目な顔をしたよ。楽しかった。ありがとうアントレン」



 皆さん?ノリ軽過ぎない?その程度の事なの?ハイタッチまでして…。流石にこっちサイドは引いてるよ…。



「お姉ちゃん…良かったのかな…?」


「さあ…取り合えず、友達からって事でいいかな?」


「この世界は…まぁ良いか…」



 その後、マイさんはアントレン様と改めて友達として付き合う事を約束し、首脳陣は意気揚々と帰っていった…。



※※※



「凄かったなぁ…」


「本当にね…私の不幸話が馬鹿みたいじゃない…でも嬉しくもあった…何を気にしてたんだろ…」


「お姉ちゃん…もっと私達を頼ってね!嫌だよあんな大事な事も知らないで…」


「ゴメンね…でもカズヤだったから…私は救われたし、今がある…今度あいつにも感謝しなきゃね…」


「でもさっきみたいに、自分を蔑む様な事は二度と言わないで下さいね。聞いてて悲しいですし、またアントレン様に怒鳴られますよ…」



 皆、色々な事を考えさせられる一日だった…。因みにディーテ様が、このエピソードをマガジャさんにお願いして後に漫画にする。その時、アントレン様もノリノリになり、マガジャさんも張り切り、大ヒットする事になる。その結果、再びマイさんに鬼神が降臨し、アントレン様とマガジャさんは本当に酷い目に合う。ディーテ様も震え上がり、土下座する羽目に。でもマイさんが、少し嬉しそうだったという事は、まだ先の話…。



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