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異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
60/136

転生公女ポンデリーン、再会と再開


「ユウリ、お帰り」


「うん。って誰この人達?こんなに…外国人もいるし…」


「アスカの知り合いだ。生前お世話になったらしい」


「こんなに若い人達が?私より年下そうな人もいるじゃない。もう二十年近く前よ?」



 鋭い。誤魔化しづらい。



「生前母がお世話になりまして…お線香だけでもと思いまして…」


「ふうん…どこの国の人?日本語流暢過ぎるでしょ」



 凄い怪しまれている…。皆泣いてるしね。加護で日本語はベラベラだし。でもポンデリーン様は嬉しそうにしている…。観察力の高い成長した娘に感心している場合じゃないぞ!



「でも良い人達だぞ」


「簡単に信用しないでよ…昔ママにも怒られたでしょ…私を変な人達から守れって、病院のベッドの上で…」


「そうだったな…沢山言われたよ…ユウリを守れ、ユウリを幸せにする人を探せ、ママの変わりを探せ、そして幸せになれ…だ」



 また僕達は涙。ポンデリーン様は懐かしむように…。



「まぁ変な人達かもしれないけど、悪い人達では無さそうね…」


「だろう?俺もそう思ってたんだよ」



 それからは皆で話をした。これからの結婚の話、アスカさんが亡くなってからの話、そして僕達の話…。僕達は美容師だったり、学生だったりと嘘と本当を混ぜて喋る。ほとんどポンデリーン様が喋ってるけどね。しかも質問ばかり…。よっぽど嬉しいんだろう。慌ててるせいか、話に矛盾がありそうだよ…。母親との関係もはぐらかし方が下手だよ…。



※※※



 会話は結構盛り上がった。サイトウさんはお酒まで出してくれて、皆で飲んでいる。まぁ僕は車があるから無理だけど…。ポンデリーン様も未成年だから飲めず。そして…。



「ねぇアスカさん」 


「はい?」


「今、何歳?」


「18歳です…」


「そのピンクの髪は自毛?」


「はい。珍しいとは思いますけど…」


「ちょっと待ってて」



 ユウリさんはどこかに行った。僕達もどうしたんだろなんて思っていたら、すぐ帰ってきた。あるものを持って…。



「これ見て」


「えっ」



 そこには一枚の絵があった。そこには小さい子が描いたであろう、上手ではないが可愛い女の子が描かれていた…。ポンデリーン様と同じ、ピンクの髪をした女の子が…。



「こっこれは…」


「これはね…私が昔、良く描いていた女の子…」


「それが何か…」


「ママが死んで…私は…ママが次の人生で、可愛い女の子に生まれて欲しかったの…」


「はい…」


「それで…小さい時、良く描いていたの…このママを…」


「えっ…」


「これは…生まれ変わったママなの…」



 衝撃が走る…。そんな事があるのか…。そっくりだし、皆も驚いている…。そしてポンデリーン様は固まっている…。



「これから言う質問は、本気で聞きます」


「はい…」


「アスカさんはママじゃない?」



 ユウリさんはズバリ聞いてきた…。嘘みたいな話なのに…。真剣だ。そう思える結論まで、導く洞察力が凄い…。ポンデリーン様は、さらに固まっている…。



「ユウリ…なに言ってるんだ…そんな訳あるはず…」


「パパ…気付かないの?全く一緒でしょ。話す時の仕草…顔に手を当てて頷く姿なんて全く同じだし、慌てて喋る所もそう、嘘を付いたときの首を掻く癖、さっきトイレに行った時なんて場所教えなくても大丈夫だったわ、私が知っているママと全く同じよ」


「そう言われたら、そうかもしれんが…たまたまじゃないか」


「7歳の時にママは死んだけど、私は全部覚えてる…パパは忘れたの?後でビンタね…」


「えっ!」



 鋭い考察…。いつから気付いてたんだろう…。そして誰も喋れない…。全く否定出来ないのだ…。それにユウリさんは以外と暴力的…。



「ほら、この人達は誰も反論しないし、ママも固まったゃったし、ゴキブリが出た時と全く一緒よ…嘘もバレバレだし…ねぇそうなんでしょ…ママなんでしょ…?」



 そこでポンデリーン様は、僕達の方に顔を向ける…。助けを求めて来た…。仕方ない…。



「…ユウリさん…あなたの言う通りです…そちらの方は…あなたの母親の生まれ変わりです…」


「きっキクチさん!」


「良いじゃないですか…もう無理ですよ誤魔化すのは…」



 そこでユウリさんとポンデリーン様は向かい合い、手を握る…。



「ユウリ…すぐ言えなくてごめんね…本当に…気付いてくれてありがとう…」


「ママ…やっぱりママなんだ…話始めた時から…もしかしてって…うっうっうわーん」



 二人は立ち上がり、お互いに抱き締め、涙を流す。僕達もだ。そしてサイトウさんは…。



「ほっ本当に…アスカなのか…?」


「ええ…改めて…久しぶりねあなた…私もずっと愛してたわ…」


「なんて事だ…」



 そして三人で抱擁しあう…。本当に嬉しい…。でもその時、今ポンデリーン様は血の繋がりが無いし、18歳だから不純異性交遊じゃないかと思ったのは、黙っておこう。魂は繋がっているしね。



※※※



 その後も、話は続いた。お酒もガンガン飲むし、いつのまにかポンデリーン様も飲み始めた。向こうでは良くても、日本ではだめなんだぞ!やはり僕だけは飲めない…。車のバカヤロー…。



「ふーんポンデリーンて名前がダサいから、アスカって名乗ったんだ」


「なんかこっちの世界じゃ、恥ずかしいじゃない」


「こっちの世界…?…って事は異世界転生者かっ!」



 あっさり色々とバレていく。もうどうにでもなれ…。ユウリさんは、ライトノベルが好きみたいで、ナナセさんとも話が盛り上がってるよ…。その後もアントレン様が調子に乗って、魔法を見せたりして…。



「本当にそんな世界があるんですね…」


「サイトウさんすいません…変な事になっちゃって…」


「いえ、こうして姿が変わっても妻に会えましたから…」



 そのまま僕達の信じられない話を、正直に伝える事にした。ここまで来たら、しょうがないしね。そしてそんな楽しい会話も、ずっとは出来ない。僕達も帰らなくてはいけないからね…。



※※※



「次は結婚式に来るわ…改めて結婚おめでとう。今度は旦那様を楽しみにしているわ」


「旦那にママって紹介出来ないのが、残念だなー」


「ユウリ…仕方ないさ。こんな秘密…誰にも言えないよ…」


「そうね…私は良いとして、それでパパとママはこれからどうするの…?」



 ポンデリーン様は結婚式に行く事が決定した。つまり僕が送り迎えする事に…。まぁそれは良い…。問題はサイトウさんとポンデリーン様だ…。



「仕方ないさ…アスカにも向こうの生活がある…それにこんなに若い…俺を犯罪者にする気か…?」


「昔…私が描いた絵を見て、こんな奥さんならまた結婚したいなって…言ってたじゃない!」


「あの時は…お前を思って…」


「ユウリ…私も残念だけど…世界が違うから…それにあなたが来る前に、ずっと愛してたって言葉も聞いたから…もう向こうでも結婚するつもりも無いし、たまにこっちに来るだけでも儲けものよ!」



 少し、クロワツ様が反応する…。流石に公女が生涯独身はまずいしね…。それなら提案だけしてみるか…。



「もし…もしですよ?解決出来る方法があるって言ったら聞きます?」


「「「聞きます!」」」


「ポンデリーン様は公女ですから、国からは早々離れられません…。でも…サイトウさんはどうですか?」


「どうって?」


「仕事を辞めて、こっちに来る気はありますかって事です」



 皆が戸惑う…。当然だ。



「まず、パラレルの近くに住んでもらって、あちらの世界の行き来がしやすい状態にします。なんなら向こうに住んでも良いです。それから向こうで仕事を探し、それなりの結果を出してもらいます」


「そんな事して大丈夫なのか?」


「多分問題無いです。こんな人達ばかりですからね」


「俺を見て言うんじゃない!」



 アントレン様は不満そう。でも事実だ。



「多分間違い無く、結果を出せると思います。サイトウさんは、車の開発を行っていたと聞きました。その知識は絶対に活かされます」


「そうなのか…」


「で、ポンデリーン様が婿をとるなり、嫁に行くなりすれば良いです」


「私が向こうで…結婚出来るの?」



 皆も驚いている…。



「簡単では無いかも知れませんが、サイトウさんはきっとそれなりの地位になる事でしょう。爵位も貰えるかもしれません」


「俺がそんな事に…」


「それにもうすぐ転移陣も作られるはず…そうなれば…もし結婚出来なくても、ダウタウーン公国とも行き来しやすくて、会いやすいです」


「店長!名案です!」


「お嬢様!これならダウタウーン公国にも新しい文化が!」


「パパ!良い話なんじゃない?」



 大分皆も乗り気になってくる…。後はサイトウさんだ…。



「ユウリ…この家はお前にやる。すぐは無理かもしれないが…会社も辞める…アスカ…俺…行っても良いか?」


「あっ当たり前じゃない…でも本当に良いの…?顔も世界も違うのに…」


「顔や世界は関係無い…アスカと過ごす時間が好きなんだよ…気にするな。そして今度は俺が先に死ぬよ、アスカの幸せな姿を見ながらな…」


「あなたっ…!」



 そして二人はまた抱擁しあう。皆も納得だ。その後は、ユウリさんも異世界に遊びに行くと張り切り、何故かアントレン様とクロワツ様もこっちに来ると張り切っていた…。面倒臭いなぁ…。



「店長…無事解決ですね!」


「本当に無事かはわからないけどね…でも良かったよ…」



 そして僕達は帰っていった…。サイトウさん一家は何度も手を振り、次の再会を楽しみにしながら…。でも都合良く話が進み過ぎている…。丁度休みだったり、結婚するタイミングだったり…。もしかしたらリリーシュ様のお導きかもね…。因みにその後、『銀の翼』や漫画の影響をもろに受けたクロワツ様が、このエピソードをアレンジした『転生王女は、元旦那様を忘れられない!』という漫画を描く事になる。そしてこれが大ヒットするのは、また別のお話…。流石だよ異世界…。



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