転生公女ポンデリーン、日本に転移
「私は18歳ですが…皆さんの話を聞いた限り…死んですぐ、この世界に産み落とされたんじゃないかと思います…」
「そうですね…漫画や知っている知識が二十年前位ですから…」
「それに日本人でした…名前はアスカです…」
「漫画詳しいから、絶対日本人だと思いましたよ!」
ナナセさんが言うには、ライトノベルなら日本人ばっかりだから、当然だそうだ。
「そして35歳で白血病で死にました…。旦那と7歳の娘を残して…」
「そうですか…」
「あっ、でも幸せでした。気にしないで下さい!早く死んではしまいましたが、今はこうして生きてますし…」
確かに今生きている人に、ご愁傷様ですとは言いづらい…。
「それで、もし叶うなら…今のあの人の、娘の現在を知りたい…父や母も…」
「そうですよね…」
「再婚してても構わない!私を忘れてても良い!ただ…知りたいんです…私が死んでからあの人達が、少しでも幸せなら…」
もしかしたら知らない方が良かった、なんて事もあるかもしれない…。最悪亡くなっていたら…。
「良いじゃない。キクチくん!協力して上げましょうよ!」
「師匠!お願いします!」
「でも、もし良い結果じゃなかったら…」
「店長!その時は、その時です!」
「…わかりました…」
「あっありがとうございます!」
ポンデリーン様も嬉しそうだし、仕方ないかな…。確かに断りづらいしね。
「調査費用はお渡ししますので、是非お願いします!覚悟してますので、出来れば嘘なくお伝え下さい!」
「なに言ってるんですか!一緒に行くに決まってるじゃないですか!ねぇ店長!」
「まぁそうかも…ね」
連れていく事は、正直考えて無かったけど…。ほらポンデリーン様も驚いてるじゃないか…。
「ほっ本当にっ、ありがとうございます!無理は言いません!一目だけでも…」
「まぁ案内がいると、早く辿り着きますしね、一応ジーク様達にも確認取ってから行く事にしましょう」
そして僕達は、次の休みに行く事にした。ジーク様達にもすぐ確認は取れ、了解は簡単に得られた。さらには一緒に行きたいとごねる始末。ポンデリーン様に話を聞いた所、場所が都合良く隣県だった為、日帰りで行けるしね…。そしてお二人はその日まで、この街の宿に泊まる事に。第二公女は大分融通が効くらしい。凄く楽しみにしている様だしね。そりゃ死んで会えなくなった、家族に会えるかもなら尚更だ…。良い結果になる事を祈る…。
※※※
「ジーク様、皆様本当にありがとうございます」
「ああ、気にするな。ダウタウーン公国とも、交流が出来て嬉しく思う」
「では行ってきますね」
簡単に挨拶を終え、僕達は日本に行く。メンバーは僕、ナナセさん、ポンデリーン様、クロワツ様、アントレン様だ。皆僕達に合わせて、着替えて貰った。ポンデリーン様も、久々の服装が嬉しそうで良かった。因みにアントレン様はオースリー王国首脳陣じゃんけん大会で優勝し、この場にいる。他の皆は泣いてたよ。ただアントレン様はマイさんと一緒に行きたかったみたいだけどね。
「では車に乗って下さいね」
「久々の車…なんか感動ね」
アントレン様は何回か日本に来てるから、慣れたもんだ。ポンデリーン様は久々の車に興奮している。クロワツ様は案の定驚いている。
「凄いな…これが日本か…私達の世界とは全く違うのだな…」
「クロワツ、私も久々で興奮しているわ。二十年で車もそうだけど、街並みも大分発展しているみたい」
「キクチ!前やったドライブスルーってやつしようぜ!」
「アントレン様…」
「皆、楽しそうで良いじゃないですか!」
そのまま僕達は隣県に向かい、ポンデリーン様…つまりアスカさんの住んでいた家に急いで向かう。でも皆、途中ドライブスルーやサービスエリアで、多少はしゃいではいたけどね。
※※※
「本当に私が住んでいた街じゃないみたい…大分変わったのね…」
「でも住宅地はそんなに変わってないんじゃないですか?」
「それでも…二十年近く経っていますから…」
そんな会話をしながら目的地に近付いてくる。
「そこの角を右に行って!その先を少し進めば、家が…そのままなら…家があるはず…」
「わかりました…ここを右ですね。どこかに車を停めましょう」
近くに車を停め、そして一軒の家に辿り着く…。そこにはサイトウと書かれた表札がある…。
「あった!家がある!良かった…表札も…そのままだ…」
「後はどうなってるかですね…このままここにいても不審者ですから…」
「お嬢様どうしますか?」
「少し様子を伺って…」
「行きましょう!」
「俺もナナセちゃんに賛成!」
ナナセさんとアントレン様の勢いに押され、家に向かう事になった。確かに他にする事はないし、ナナセさんは自信満々だし。なので取り合えずナナセさんに任せる事に…。
「じゃあ行きましょう!」
「お願いします!」
そしてインターホンを鳴らす。留守でなければ良いけど…。
「はい、どちら様ですか?」
「あの私達はアスカさんに生前お世話になった者でして、出来ればお線香だけでも上げさせて貰えないでしょうか?」
「アスカの?何故急にまた…こんなに経ってから…」
「実は今は遠くにいまして、中々来ることが出来ず…大変申し訳ありません」
「まあせっかくだ、上がって下さい」
インターホン越しにそんなやりとりをする。でも、この時点でポンデリーン様はもう泣きそうだ。そしてドアが開く…。
「えっ!こんなに外国の方々が?…アスカと知り合いなんですか?」
「はいそうなんです」
五十を過ぎたであろう男性が出てくる。でも素敵なおじさんだ。そして少し不安な顔をされる。そりゃそうだ。僕が見ても不審者に見える…。そして居間に通して貰った。ポンデリーン様も旦那さんや家を、嬉しそうに懐かしそうに見回している…。
「じゃあお茶でも用意してきます」
「すいません、お気を使わずに…これはつまらない物ですけど、良かったらご家族でどうぞ」
「ありがとうございます。その間に線香でも上げてやって下さい」
そして僕達はお線香を上げる。アントレン様とクロワツ様も真似している。ポンデリーン様は自分にしている…。少し変だけどしょうがない。遺影を見ると、凄く素敵な女性が写っている。これが生前のアスカさんだな…。
「ここからはポンデリーン様、頑張って下さいね!」
「えっ!?そんな!」
「色々と知りたかったんでしょ!しっかりね!」
そして旦那さんはお茶を持って、戻ってくる。これからは、ポンデリーン様と旦那さんの時間だ。僕達は一歩身を引いて、フォローしなきゃね。
「すいません、アスカとはどんなご関係で?」
「私の…亡くなった母が…生前色々と良くして貰って…仕事で付き合いがあったようです…それで私もアスカと名付けられました…」
「そうなんですか…アスカと…名前まで…」
嘘設定だけど、ポンデリーンと名乗るのは恥ずかしかったみたいだし、別に良いよね。
「今日はお休みなんでしょうか…いきなり来てしまったもので…」
「ああ、今日はたまたま用事があって、休みでしてね。ここにいて良かったです。アスカの大事な方々を迎えれましたからね」
「ありがとうございます!でも…用事の邪魔に…」
「いえいえ、大丈夫です!娘がもうすぐ結婚するんですけど、その打ち合わせに娘が来るんです。今日しか時間がお互いに合わなくて」
タイミング良く休みなんて、運命を感じる。そしていきなり素晴らしい情報ゲット!皆も驚いていて、嬉しそうにしている。でも…。
「…結婚…ユウリが…うっううっ…」
ヤバイ!喜び過ぎだよ!不審がられたら…。
「どっどうしました?そんなに嬉しいのですか?娘の名前も知ってますし…」
「いっいえ…すいません…生前母から名前は聞いていて…自分の事の様に…うっうっ」
胡散臭いよ!気を付けて!
「あっありがとうございます…」
「すっすいません、ちょっとアスカは涙脆くて…そうだサイトウさんは、その後再婚なんかは…」
ナナセさんがフォローに入る。情報をゲットする為とはいえ、強引な会話だよ…。
「再婚か…そんな話も、前は良く言われました…お見合いさせられそうになったりね。でもアスカを愛してますからね。今でも…」
ヤバイ!ポンデリーン様は限界だ!嗚咽が止まらない…。
「アスカも生前…「私が死んだら素敵な女性を見つけてね」なんて言ってましたけど…無理でした。母親がいてくれたら良いな、と思う場面はかなりありましたけどね…」
もう僕も泣きそうだ。ていうか皆、号泣じゃないか…。アントレン様…汚い…。
「娘もアスカが大好きでしたからね…今でも「私の目標はママみたいなママになる事だから」なんて言ってますよ…まぁ早死にだけは真似して欲しくないですけどね…気持ちはわかるんです。私もずっと好きですから…」
はいアウト。涙が止まりません。死んだアスカさんが転生して、目の前にいるこの状況はヤバイ。こんな話聞いたらもう…。
「皆さん大げさですよ…そんなに泣かなくても…」
「すいません…嬉しくて…本当に…わた、いやアスカさんが亡くなってからの想いが聞けて…」
今、一瞬「私」って言いそうになったけど、言ったら変に思われるだけだからね…。そして…。
「ただいまー!パパー!靴が沢山あるけど誰か来てるの?」
そう言いながら、女性が入ってくる。間違いない。娘のユウリさんだ…。さてこれからどうなる…。




