表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
58/136

美容コンテストの準備、新たな来訪者


 僕達は最近、やっと少し落ち着いた日常を過ごしていた。でも、すぐに騒がしくなってくる。美容コンテストを行うからだ。薬剤の問題も完璧では無いが、解決されてきたしね。だから参加するオーパイさんと美容学生は、日々準備と練習に明け暮れている。話を聞いた服飾ギルドと雑貨屋マリサリも、無償で協力してくれている。モデルも多くの方が協力してくれるそうで、立候補もいるそうだ。特にユニクさんやギルドの面々は、今までと違う衣装のデザインに、興奮し張り切っている。本当に祭事が好きな世界だ。



「凄いね、学生は。色んなヘアスタイルのデザインを聞かされて、私達も刺激を受けたよ」


「ユニクさん達も、苦労してるんですね」


「そのイメージに負けず劣らずの、衣装を提供したいからね」


「それにしても…色んなヘアスタイルがあるもんだ」



 ヘアスタイルは、組み合わせだ。ボブやレイヤーを、角度や長さで変えたり、部分カットで繋がりを変えたり、すきを入れて重さ軽さを変えたり、カラーやパーマで印象を変える。さらに人によって、髪質によって、骨格によって変える。それを徹底的に作り込む。そして全ての技術は、基本ベーシックだ。だから大事なのは、基本技術を繰返し練習する事、色々なものに触れセンスを磨く事、それをイメージしてデザインに興す事、そして最後に形にする事。どんなスタイルもこれだけだ。だから奥が深く、終わらない。



「そうね…服もそうだもんね。以外と上手くいかないときって、基本的な事を外してたりするもんね…」


「そうなんですよ。学生にもベーシックはほとんど教え終わってますしね。後は組み合わせ、そして修練あるのみってね」



 美容師は終わりがない。どんな仕事もそうだろうが、常にファッションは流行があるし、流動的だ。一生新しい物を作り続けるから、勉強も一生だ。常に刺激を求めるし、与えなければいけない。皆にもこの世界で、頑張ってもらわなきゃね。



※※※



「師匠はこのバランスどう思いますか?」


「キクチ殿、このカラー変じゃないですか?」


「キクチさん、メイクのアドバイスを…」


「キクチさん…」


「キクチ先生…」



 勘弁して欲しい…。連日これだ。マイさんも大変らしい。毎日誰かしらカットウィッグを持って、アドバイスを求めてくる。気が付いたら、服飾ギルドの方々や薬剤の研究者達まで…。僕だって忙しいのに…。



「私も大変よ…ハマナンさんが張り切って、会場設営し始めたし…ディーテ様も招待客選んでて…」


「えっ?ちょっと待ってマイさん…学校内でやるのでは?」


「…もう勝手に動き始めてるのよ…止められない…キクチくんもわかってるでしょ、この世界の人達を…」


「…下手なもの…見せられなさそうだね…」


「ええ…私達も…デモンストレーションでもしなきゃかな…?」



 はぁ…。この世界はそう。気が付いたらいつも舞台に立っているんだよ…。



※※※



 そんなまた忙しくなった日常の、ある日の営業終了後。ドアの開く音と鈴の音がする。またいつものように学生かと思っていたが、その日は違った…。



「すいません…キクチさんですか?」


「はい…そうですけど…」



 いきなりやって来たのは、身なりが整っている二人の男女。見覚えはない…。



「私はダウタウーン公国の第二公女、ポンデリーン・ダウタウーンと申します。隣は護衛のクロワツ・ナイナインです」


「クロワツ・ナイナインです」


「どうも…キクチです…」



 ダウタウーン公国…聞いた事はある。確かゲイジューツ皇国から、海を渡った島国のはず…。それが何故ここに…。しかも公女…。他のスタッフも不思議そうにしている…。



「それで…ご用件は?」


「単刀直入に聞きます…。キクチさんは日本人ですか?それとも元日本人ですか?」


「…えっ!」



 どこでそれを…。それをこの世界で知っているのは、オーパイさんとオースリー王国の首脳陣位だ…。確かに各国にバレても、おかしくはないくらい活躍してしまってはいるけど…。



「答えなくても、皆さんの反応でわかりました…」


「はい…どこでそれを…」


「…先日、ゲーイジューツ皇国に訪問し…その際、新しい文化を目の辺りにしました」


「はい…」


「最初は新しい物に浮かれて、服を着替えたり、シャンプーやお化粧をして楽しんでたんです」



 この世界の人には新鮮だもんね。でもそれがなんで…。



「その時、ふと違和感を感じたんです…心が、頭が…何故か…」


「それは何故…?」


「気にしない様にしてたんですけど…その後手に取った『銀の翼』という漫画を見た時に…甦ったのです…」


「甦った…?」


「はい…記憶が…甦りました。地球で生きてた頃の…」



 記憶?地球の?ということは…



「転生者だ!転生です!」


「ナナセさん!?急に叫ばないでよ…で転生者?」


「きっとそうですよ!」



 ナナセさんが興奮している。でもそうなのかもしれない…。



「転生…?というのですかこれは…とにかく私はそれで記憶を取り戻しました。すぐに調べたら、全てここから発信されている事がわかり、勢いそのままここに来てしまいました。迷惑も考えず、すいません」


「構いませんけど…それで何かわかりましたか?」


「同じ文化を知る人、私と同じ境遇の人がいると思ったら…懐かしくなって…話を聞きたくなって…でも」


「でも…?」


「キクチさん達を見ると…日本人そのままで…今まで見た事が無かったので、私とは違うと思いました。お店の外観から店内も、まるで異質ですし…」



 確かに状況は違う…。僕達も同じ様な容姿をしている人は、見た事が無い。この世界の人は皆、髪色が多彩な欧米人という感じだ。ポンデリーン様もキレイなピンク色の髪をしている。



「キクチくん…言っても良いんじゃない?ヤバかったら店の加護で弾かれてるだろうし」


「そうだね…そうしようか…」



※※※



 そうして僕達は、二人に今までの経緯を話す事にした。二人共信じられない、といった表情をしている。



「そっそんな事が…」


「信じられません。お嬢様の話も正直、半信半疑でしたから…でも」


「わかりました。二階に行きましょう」



 二人を二階に上げ、文明を見せて上げた。さらに驚きが高まる。



「てっテレビが、こんなに薄く!あっこの漫画こんなに続いてるっ!これはケータイ?」


「お嬢様は本当に…嘘は付いていないのか…」


「クロワツ!だからそう言ってるでしょ!」


「すっすいません!」



 その後は二人共大興奮だ。ポンデリーン様も、色々と地球文化を懐かしんだり、驚いたりしていた。



※※※



「まさかこの漫画が、あんな展開になっているとは…」


「これがテレビ…凄い物ですね…」


「理解して貰って良かったです。それと何回も言いますけど、周りに言いふらさないで下さいね。トラブルは困りますから」

 

「「はい」」



 これで大人しく帰ってくれるのか、それとも…。でも転生者というポンデリーン様の話も、聞いてみたい…。



「…キクチさん!お願いがあります!」



 これからポンデリーン様のお願いを聞かされる事になる。その後、詳しく話を聞いた僕達は、その願いを叶える事にする…。コンテストの準備で忙しいけど、そんな話を聞かされたら断れないよ…。むしろ手伝いたくなったしね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ