カリスマの誕生、新たな繋がり
武闘大会も終わり、一週間の休業を終えたパラレルは、また通常営業に戻っていた。
「学生達も、刺激を受けたせいか張り切って勉強してるよ」
「うちのオーパイさんもそうですしね」
「騎士の皆さんも、凄い特訓してるって言ってました!」
参加した各国で、良い影響を与えているそうで、ホッとしている。そしてこんな注文が増えてくる。
「エルメスさんと同じヘアスタイルにしたいんですけど…」
「カナヤ様みないな感じにしたいです!」
…と。誰かの真似をしたいという声が、多くなった。特にエルメスさんと、カナヤ様だ。エルメスさんはミディアムレイヤー、カナヤ様は編み込みのコーンロウだ。その忙しさで、手が回らなくなってきた結果、まず…。
「ナナセさんをスタイリストにします」
「えっ!?やったー!良いんですか?」
「モデルカットや頑張りも見てきたしね。もう充分だよ。それにお店も回らなくなってきてるから」
「姉御!おめでとうございます!」
「ナナセ、しっかりやりなさいよ!」
ナナセさんを昇格させた。実力はあるしね。これでお店も機能しやすいはずだ。
※※※
これからナナセさんに指名客を増やし、頑張って貰おうとした時にちょっとした問題が起きる。エルメスさんからお願いをされる。
「ナナセさん…髪を切るのを止めてくれないか…」
「えっ?エルメスさん、何でですか?」
「私の人気に拍車が掛かる…良い迷惑だよ…」
僕がナナセさんに、意図的にエルメスさんとカナヤ様のヘアスタイルにしたい方を回したらだ。同じヘアスタイルを作ると精度とスピードも上がるし、良い経験になると思ったのが裏目に出たようだ…。
「変なファンクラブも出来てるみたいだし…漫画化までする計画があるそうだ…」
「そう言われても…お客様の希望ですからね…私も困ります…」
皆がエルメスさんと同じヘアスタイルにする事で、より強固な団結力となり、勢いも止められないそうだ。いくら自分で言っても、納得させられず困っているそう。弓術戦で優勝してから本当に大変らしい。特に女性ファンが凄く、お姉様と慕われているらしい。服装も真似されるらしく、カリスマファッションリーダーになっている様だ。
「もうエルメラーですね!」
「どういう意味ですか?」
「いや、私達の国では、『~ラー』ってなると凄いんですよ!」
「…もう勘弁して下さい…」
結局エルメスさんは、ショートボブにカットする事で真似を回避をした。でもそのショートボブがまたすぐ流行る…。イタチごっこだ…。そして誰が聞いていたのかわからないが、エルメラーという言葉もすぐに浸透し、女性はエルメラーに憧れる様になった…。エルメラーは流行語だ。エルメスさんごめんなさい…。
※※※
「そうか、あのエルフも大変なんだね。僕は嬉しいけどねえ」
「カナヤ様達と違って、シャイですからね。ディーテ様やジーク様も羨ましがってましたよ」
「ははっ、あいつららしいね」
カナヤ様は、コーンロウが増えて嬉しいらしい。それで折角だから、新しいデザインでコーンロウをしに来た。こっちのカリスマファッションリーダーは、現状を楽しんでいる。サハラ様も鼻が高いだろう。
「サハラ様は頑張ってますか?」
「ああ、各地に行って、不満や希望を聞いて回ってるよ。そして解決に向けて行動している。転移陣も完成させようと努力してるしね。あれがあれば、国との距離も無いから、美容学校に留学しやすくなるだろうしね」
「そうですか…上手くいくと良いですね」
サハラ様も頑張っている。最近は話す事も少ない。きっと留学の願いを言う時まで、堪えているんだろうな…。
※※※
「各国から留学の願いが届いている。美容学校は勿論だが、鍛治ギルドや服飾ギルド、出来たばかりの漫画ギルドまでな。中には銀翼の騎士団に入りたいと、国籍を変えようとしている騎士までいる」
「ジークの言う通りで、少し多すぎてな…困っている」
「何故、銀翼の騎士団ばかり…」
いつものようにお店の二階で、そんな話を聞く。タハラシ様は…まぁ、仕方ない…。
「きっと凄い意気込みなんでしょうけど…受け入れるなら、今いる美容学生の様に覚悟を持たす事。それとサハラ様と同じ様な事にならない事ですかね」
「私も宰相としては頼み憎いですが…来るなら貴族の権威や、他国の特権を行使しない事を条件に出していきますか…」
「そうだな…そうしよう。ヤッカム、まずそれでどれだけ減るか見て、対応を考えよう」
そうして世界とパラレルは、新たな関わりを作っていく…。間違いなく忙しくなるな…。




