第一回世界武闘大会、開催前日
今僕達は、ラヤマ平原に馬車で向かっている。明日から始まる、第一回世界武闘大会を見に来たからだ。その為、一昨日から一週間の長期休業だ。美容学生も、修学旅行みたいな形で一緒に来ている。そして護衛と移動速度を上げる魔法の為、多くの騎士も付いてきてくれている。
「師匠!見えてきましたよ!」
「うっ嘘でしょ…」
「凄い!大きな町ですね!」
二ヶ月前の会談の時は、平原だったのに…。街が出来てる…。確かにスタジアムと宿泊施設は作るって聞いていたけど…。お店や居住地も、明らかにある。
「あれが、スタジアムか大きいですね!」
「何人入るんだ…?」
そこで、護衛として付いてきてくれている、タハラシ様が教えてくれる。
「大体五万人ですね。折角だから交易拠点にしようと思って、ヌーヌーラ共和国と協力して街にしました。今はラヤマの街です。今後も武闘大会を続けやすいですしね」
「やり過ぎでしょ…」
この世界の人の行動力は、わかったつもりでも超えてくる。呆れながらも、その後はまず宿に向かう。
※※※
「じゃ私達は色々と見て回って来ますね!」
「うん。いってらっしゃい」
パラレルのスタッフ達は、街を探索しに向かう。学生達も同様だ。皆、楽しみにしていたんだろうな。でも僕は…。
「開会宣言と閉会宣言か…何て言おう…」
「キクチ殿も大変ですね…」
「タハラシ様…だったら代わって下さいよ…」
「ご冗談を…」
僕は明日の準備の為、部屋に残る。タハラシ様は部屋が同室なので、付き合ってくれている。
「明日からは、どんな戦いになりますかね?」
「それは予選で負けた…私に対する嫌味ですか?」
「まっまさかそんなつもりは!」
「ジーク様ならともかく…アントレンに敗けるなんて…くそっ!」
タハラシ様は闘神戦の予選準決勝で、アントレン様に敗けた。僕は見ていないが、かなり激戦で惜しくも敗けたらしい。因みに決勝はジーク様とアントレン様で戦い、アントレン様が勝った。これもかなり名勝負だったらしい。てか国王が参加するなよと言いたい…。
「他の国も強いんですか?」
「デリタム王国とアカサタナ帝国、そしてヌーヌーラ共和国には、ナナセさんの魔法の考え方が伝わってますからね…後はエルフ達も知ってるでしょう…どこも強敵です。中でもデリタム王国の獣王ライオトーラ様、そしてアカサタナ帝国の魔王カナヤ様は別格です。以前の私達では多分勝てないでしょう」
そうなのか…元々の潜在能力とかもあるんだろうな。ていうか、気軽に王様が参加するなよ…。
「とにかくオースリー王国に、多くの栄光を与えて欲しいものです」
「そうですね…」
今回の参加国は七国だ。オースリー王国、デリタム王国、アカサタナ帝国、ヌーヌーラ共和国、エルフの里エルフィ、ゲーイジューツ皇国、イキシチニ帝国。最後の二国は知らないけどね。
「ゲーイジューツ皇国は、戦いを得意としてません。その他の文化を高めるのに、力とお金を注いでいます。イキシチニ帝国はアカサタナ帝国と対なる魔族国家です。遠い親戚ではあると思いますが、かなり昔から仲が悪いみたいです。もし戦争になると、その大きな武力と魔力でどちらも破滅ですから、まず戦争は起こりませんが…」
「…そうですか…なんか揉め事…大会中に起きませんよね…」
「…さあ?」
嫌な予感…。それはともかくとして、闘神戦は各国二名の参加、それ以外の部門は各国一名だ。年少の部は闘神戦のみで、各国一名。部門は、魔法でも武器でも何でもありの闘神戦、己の体のみで闘う格闘戦、剣と盾の剣闘戦、槍と盾の槍闘戦、弓の命中率を競う弓術戦、馬の技量を競う馬術戦、この五部門だ。
「皆が無事であれば良いですけどね…」
「しっかり救護班もいますから、まぁ大丈夫ですよ。勝利を祈りましょう。…アントレン以外の…」
タハラシ様…。でも知っている人が、多く出ているしね、応援はするよ。闘神戦のジーク様とアントレン様、格闘戦のヤルキアールさん。エルフィからも剣闘戦でギルデさん、弓術戦でエルメスさん。アカサタナ帝国からは闘神戦にカナヤ様。…と多い。冒険者のリダリーさんや、インペリアルガード副隊長のサブリーさんは、惜しくも敗けたみたいだけどね。後は年少の部でルード様も。こちらはかなり圧勝だったみたい。因みにマリー様は出させて貰えなかった。かなり拗ねてたみたい…。
「どの国も予選が、かなり盛り上がった様です。今まで、こういう催し物がありませんでしたからね」
「それは良かったです」
「だからキクチ殿は、かなり感謝されていると思いますよ。開会宣言等も任されてますからね」
ありがた迷惑だけどね…。でも盛り上がるに越した事は無い。僕もしっかり考えよう。さて明日からはどうなる事やら…。




