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異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
44/136

オースリー王国、ヌーヌーラ共和国と武闘大会


 今は作戦会議中だ。メンバーの人選は皆さんに任せているが、僕なりのアドバイスを送りたいと思っている。人選は、アントレン様とタハラシ様と銀翼の騎士団副団長ダンフクさんが闘神戦。剣闘戦がインペリアルガードの副隊長サブリーさん。格闘戦が銀翼の騎士団第二部隊長ヤルキアールさん。ジーク様も参加したかったようだが、遠慮してもらった…。当然だよね…。



「俺はこの五人が最高のメンバーだと思う」


「私もです。キクチを守る最高の布陣です」


「ありがとうございます。では、僕からのアドバイスです。そもそも僕は、一人も負けないと思っています…」



 そこで参加する騎士達、そして見守る者達は、何を根拠にという顔をする。



「キクチ…もちろん我々は負けるつもりはない…だが根拠のない話を、素直に聞く事も出来ない…」


「わかっています。ジーク様…ですが、自信があります。根拠は、魔法を使った闘いはナナセさんのおかげで、100%有利です。これで三勝は確実です。先の二戦に負けても、問題ありません」



 皆がハッとしている。強くなった事を忘れるなよ…。



「そして闘いに出る者は闘いの直前に、開口一番に名乗って下さい。アントレン様なら「我はオースリー王国、銀翼の騎士団団長、王の雷槍アントレン!いざ参る!」ですね。これで気合十分、相手もおののくでしょう」


「そんな事まで出来るのか…素晴らしい!」


「うわっ俺も名乗りたい!」


「すげぇカッコ良いじゃないか!」


「俺も闘いたい!」



 評判は上々だな。この国の人は、こういう事で力を発揮するから間違いないだろう。



「僕は完全勝利を求めています。何とか勝ったではなく、傷一つ負わず、完膚無きまで叩きのめします。剣なら勝てた、魔法なら勝てたというような言い訳は一切出させません。そして今後戦争を起こす気にもさせません」


「そこまで考えているのか…」


「ヤッカム様…それだけではありませんけどね。また勝った後に色々と言わせて頂きます。ではまず向こうをビビらせましょう!」



 もう皆はノリノリだ。僕の言う事を信じてくれている。基本的に脳筋だし、とことん中二病だ。僕もやってやろう。



※※※



「じゃ僕の言った通りやって下さいね。アントレン様、任せました!」


「おう!声の大きさでは負けないからな!やるぞテメェら!」


「「「「「おう!」」」」」



 向こうも準備が終わった様だが、まず戦う前に相手を引かせてやる。前哨戦だ。



「我が手に持つのは!」


「「「「「我が王の剣!」」」」」


「我が胸に秘めたる物は!」


「「「「「我が誇り!」」」」」


「我が戦うのは!」


「「「「「我が国民の為!」」」」」


「我が守るべきは!」


「「「「「弱き者達!」」」」」


「我は!」


「「「「「強き者!」」」」」


「我は!」


「「「「「戦う者!」」」」」


「我は!」


「「「「「勝利する者!」」」」」


「敵を蹴散らすぞ!」


「「「「「おうっ!」」」」」


「「「「「ウオォォー!」」」」」



 少しだけ僕は恥ずかしかったけど、こちらの軍はもう勝った気分だ。皆が興奮している。向こうは意気消沈し、心なしか見惚れている。



「凄いなキクチ…こんなに鼓舞できるものか…王としては少し悔しいぞ…」


「ジーク、私もです。戦わないのに、魔力も上がりました。キクチの勝算は素晴らしいですね」



 舞台は特に無いが、ある程度のスペースを取り皆が周りを囲むように見ている。さあ、試合の始まりだ。



※※※



「ではキクチお願いします」


「はい」



 何故か試合進行は僕だ。まぁ発案者だからしょうがないか。審判は各国から一人づつ出ている。



「第一試合の格闘戦を始める。両者前へっ!」


「「おうっ!」」



 でもここで…。



「我はオースリー王国、銀翼の騎士団第二部隊長、牙突のヤルキアール!いざ参る!」


「おっ俺は…ラクショだ…!」



 勝ったな。もう完璧だ。蛇に睨まれた蛙状態。



「第一試合、始めっ!」


「せいっ!」


「ぐっ…」



 一瞬だった。開始と同時にヤルキアールさんが前へ詰めボディに蹴り。ラクショさんは吹っ飛ばされながらも何とか立ち上がるが、そこへ飛び付き式腕十字固めで、腕を折る。こんな所でも漫画の知識が活きているとは…。そのまま顔面に上からパンチを叩き込み、失神KO。僕の言った通りに、完膚無きまで叩きのめす。



「この勝利をオースリー王国に捧げる!」


「「「「「ワアァー!」」」」」



 皆、絶叫。ここまで盛り上がるとはね。それに対してヌーヌーラ共和国は…。完全に終わった感が…。でも…。



「まっまだ始まったばかりだ!次の闘いだ!」



 タオシマ様の檄が飛ぶが…。果たして効果はどうかな?



※※※



 結果、あっさり三勝してしまった。もうオースリー王国は狂喜乱舞だ。ヌーヌーラ共和国は、もう見てられない。僕でも涙しそうな雰囲気…。



「終わってしまいましたが、どうしますか?闘いますか?どうせ負けますけど…」



 僕は徹底的にやりたいので、あえて挑発するように言う。



「あっ当たり前だ!せめてロシミ様の仇だけでも!」


「おっ良いねぇ。俺も闘いたかったからな」



 闘いは続く。そして相手の心を折る…。そんな闘いだ。



※※※



 そしてまずタハラシ様があっさりと勝利し、アントレン様も決着目前だ。



「はあっはあっ!なっなんでそこまで強くなった…!俺達だってかなり強くなったはずなのに…」


「ああ…そうだな…あの頃の俺になら勝てたかもな…ロシミよりはかなり強いだろう…」


「ならっ、何故っ!」


「俺達はナナセちゃんて女神と…キクチがいるしな…悪いが、これで終わりだ」



 そのままアントレン様は強烈な魔法剣で斬りかかる、タオシマ様はぶっ飛び気絶する。五戦全勝で、オースリー王国の完全勝利だ。



「「「「「ウオォォォー!」」」」」



 その後は怪我人をしっかりと回復させる。治癒魔法もオースリー王国の方が強力なので、かなり手伝った様だ。そこでも実力差を思い知らせる。そして小休憩を挟み、また会談だ。



※※※



「キクチはそれでいいのだな」


「はい。お願いします」


「わかった。皆もそれで良いな?」


「「「はい」」」



 今後のヌーヌーラ共和国との付き合い方を決め、会談に向かう。向こうも準備は出来ている様だ。



「すまん。待たせた」


「いえ、我々は敗けましたからね。完膚無きまでに。あそこまでタオシマ様達が完敗するとは、思っていませんでしたから」


「私も戦争にならなくて、良かったと思います。もし戦争だったら…考えるだけで恐ろしいです」



 マダマダ様とサッパーリ様は心から納得しているのだろう。タオシマ様も悔しそうだが納得はしているはずだ。



「ではこちらからの要望を出す。…国交をまず再開しよう。賠償金等も要らん」


「「「えっ」」」


「どうせ密輸とはいえ、商品が出回っているなら同じだ。これからは堂々とやれば良い。その金が我が国を潤すであろう」


「いっ良いのですか?」


「ああ。キクチの希望でもあるからな…」


「そっそんな、キクチ様、あっありがとうございます!」



 ヌーヌーラ共和国側は驚いている。当然だ。賠償金の要求は普通当たり前だ。でも実際の戦争にはならなかったし、被害は無いも同然だ。



「それと提案がある。キクチからな」


「提案ですか?」


「はい。出来れば今後もこういう武闘大会しませんか?」


「「「えっ?」」」


「こういう大会を年に一回位すれば、軍の鬱憤も晴れませんか?」


「確かにそうかもしれませんが…」



 少し皆は不安そう。オースリー王国の人達にも詳しく話せてないしね。でも騎士達はワクワクしてそう。



「それにこの二国だけではなく、アカサタナ帝国やデリタム王国とかも参加してもらいます。了承はこれからですけどね。部門もさっきみたいに三部門に分けて、何なら他にも案があるなら部門も増やせば良いです」


「そんな事が出来るのか?」


「出来る出来ないじゃなく、やります。させます。文句は言わせません。勝ったのは僕達ですから」


「確かにそうだが…」


「各国には予め予選をしてもらって、本選のみどこかでやります。何ならギルドの強者でも構いませんよ。場所はここにスタジアムを建設しても良いですね」


「「「「「……」」」」」


「国や地位等も関係無く、善悪も無く、男女も関係無い、ただ武を競い合い、その年の最強の者を決める大会。手に入るのは、ただ名誉のみ。己の誇りと、今まで培ってきた能力を試す最高の舞台だと思いません?」


「素晴らしいじゃないか!」


「ただ己の武を…」



 皆の反応は良し!特に騎士達はもう参加する気満々だ。ここで商人にも…。



「そして観客等を集めるんです。入場料を取り、露店を出し、何なら事前にオッズを決めて賭け事にだって出来ます。何なら参加費だって取りましょう。そのお金を賞金や賞品にしても良いですね」


「それは…完璧ですね…」


「今すぐ全てを決めるのは難しいかもしれませんが、やってみる価値はあると思いますよ」


「すぐ準備に掛かりましょう!」



 開催決定。これでお互いに仲良くなれればいい。この世界の人は、行動力と決断力が凄いから、あっという間に決まるだろう。



※※※



 そして会談も途中だが、僕だけ一足先に帰る事に。役目も終わったし、営業もあるからね。



「キクチ…感謝する。大分吹っ切れたよ。あそこまで完敗するとはね。そして楽しみだ、大会がね」



 タオシマ様は良い顔をしていた。完敗する事で、目標も見えた様だ。余りにも戦力差があるので、詠唱の事等を教えても上げた。もちろんジーク様にも了承は得た。大会も盛り上がるだろうしね。一方的に強いと、それこそ侵略戦争でも起きかねないから。



「キクチ様、また改めて色々とお話を聞かせて下さい。キクチ様は商売の才覚もお持ちの様なので」



 マダマダ様には変な目を付けられた。でも他国にオシャレを普及させる為にも、商人の力は絶対に必要だから仲良くすべきだろう。



「キクチ様、ヌーヌーラ共和国でもリリーシュ教として進めていきます。今日もきっとリリーシュ様のお導きだったのだと思います」



 サッパーリ様は完全な僕の信者だ。闘いを勝利に導くどこかの神、とでも思っているのかもしれない。そして最後に何故か…。



「キクチ殿、ありがとうございます。作者は僕なのに…」



 『銀の翼』作者のマガジャさん…。そもそもの原因はマガジャさんの漫画だから、本当に感謝して欲しい。ていうか、今まで何やってたんだよ…。一応騎士なんだから、積極的に前に出てこいよ…。そしてロシミ様の戦死するシーンの美化を、一応お願いしておいた。向こうの不満が減る事を祈る…。



「じゃキクチ気を付けてな。今日は本当に助かった」


「はい。ジーク様」


「キクチのおかげで、銀翼の騎士団がさらに目立ったぜ!俺も大分満足だ!はっはっは」


「アントレン様もお疲れ様です」


「じゃタハラシ、キクチを頼む」


「はっ!」



 その瞬間、ラヤマ平原が光に包まれる…。



「キクチ…そして皆さん…この世界に平和を…ありがとう…リリーシュ…私のこの世界を…守って下さいね…」



 そして光は消えていく。久々のリリーシュ様、降臨だ。そしてさりげなく自分の名前をアピールしたな…。



「いっ今のは。リ、リリーシュ様!」


「神の声だ!」


「何て事だ…」



 その後は、また狂喜乱舞だ。両軍勝ったような喜び方しているよ…。それも良いよね。平和が一番だもの…。



※※※



 そしてその場を後にした。帰り道は、僕を送っているタハラシ様とインペリアルガードの人達による、銀翼の騎士団への不満を聞かされながら…。要するに自分達も目立ちたいのだろう。はぁ終わったのにまだ疲れる…。早くパラレルに帰りたいよ…。でも戦争にならなくて本当に良かったと心から思う、そんな帰路だった…。



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