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異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
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オースリー王国、キクチ戦場へ向かう


 今僕はタハラシ様の馬上だ。二人乗りでラヤマ平原に向かっている。他の騎士達の馬にも交代で乗り、効率良く進む事が出来ている。



「良し!ここで夜営するぞ。馬と魔力を回復させろ。ここなら魔物も大丈夫だろう」


「「はい!」」



 ラヤマ平原から往復しているせいか、かなり疲れているのだろう。馬に飼い葉を与え、自分達も水分等を補給している。



「キクチ殿、疲れてませんか?」


「いえ僕は大丈夫ですよ。少しお尻が痛いくらいかな。皆さんの方が大変でしょうし」


「ははっ、お気遣いありがとうございます」


「でも何で僕なんでしょうかね?」


「そうなんですよね…」



 僕がラヤマ平原に向かっているのは、ヌーヌーラ共和国が僕を呼んでいるからだ。店の皆には止められたが、この世界に何かしらの影響を与えている以上、責任もあるだろうし行く事を決めた。でもヌーヌーラ共和国が戦争を起こす程の事は、していないと思う…。



「キクチ殿が広めてきたオシャレが、何かしらの原因だとは思いますが、でも戦争までは…向こうもキクチ殿を出せの一点張りで…それだけで、国境付近に軍を布陣していますから」


「戦いは起きているんですか?」


「ちょこっとした小競り合いくらいは何度も…でも両軍本気は出してません。怪我くらいでしょう。死人が出始めたら、本気の戦争が始まります」


「それでも、怪我人が…」


「訓練の延長とでも思えば、何でも無いですよ」



 そうは言っても、いい気はしない。僕が原因で死人は困る。



「因みに前回の戦争は勝ったんですよね?なのにまた向かってくるんですか?」


「前回は、アントレンが早い段階で、向こうの大将のロシミを仕留めましたからね…比較的に両軍共、戦死者は少なかったんです。でも…裏を掛かれて、少しピンチもありました…あの時は、悔しいですが騎士団に助けられましたよ」



 それは、聞いた事がある。確か今の副団長はその時の功績が認められて、その地位にいるはず。



「その時の近衛の隊長と、騎士団の副団長がジーク様の守り方を考えていたんです。ジーク様は気にしていませんでしたが、その責任を取る形で二人は騎士を引退しました。まぁ歳も結構いってましたしね。私もそれで、隊長となりました」


「そうだったんですか…」


「正直アントレンにも感謝してますよ。敵の大将ロシミはかなり強かったですから…アントレンもかなりギリギリでしたしね…」


「向こうの王様は武闘派だったんですか?」


「いいえ、ヌーヌーラ共和国に王はいません。ロシミは軍の大将でした」



 そうか、共和国だもんね。王様がいなくても問題ないか…。



「向こうは、軍、各ギルド、商人、教会等で協力して国を動かしています。今回はもしかしたら軍の単独行動かもしれませんし、他の関係者も動いているかもしれません」


「権力が分散しているから、良い事もあるんだろうけど…僕達からするとわかりにくいのかな…」


「そうかもしれませんね…」



 そんな会話をし僕達は就寝した。騎士達も順番に見張りをしながら休息を取る。そして早朝から、僕達はラヤマ平原に向かった。



※※※



「キクチすまない。このような場に…」


「構いません。向こうが呼んでるなら仕方無いです。これで戦争が止められるなら、当然です。っていうかジーク様もこんな前線にいるんですね」


「そう言ってくれると助かる。それに俺はこの国でも魔力がかなりあるし、強さもトップクラスだからな。戦争ならお手の物だ」


「ジークは戦いたがりですからな。キクチ、宰相としても感謝する」


「良し!ではヌーヌーラ共和国との会談の場を設ける!すぐに準備しろ!」


「「「「「はい!」」」」」



 大分早い時間だったが、丁重に迎えられた。そしてジーク様とヤッカム様との挨拶を簡単に済ませ、すぐに会談の準備が始まった。早くこの状況を終わらせる為だ。



※※※



 会見場の設営が終わったと聞き、最前線へ出る。向こう側にはヌーヌーラ帝国の大軍が見える。見た目は、オースリー王国の昔の騎士達の様に、野蛮でダサく見える。そして両軍の間には、簡易なテント等が設営されている。あそこで会談をするのだろう。



「おう!キクチじゃないか!悪いな面倒な事頼んで」


「アントレン様…まぁしょうがないです…」


「はっはっ!でも安心してくれ、俺が全力で守るからな!マイやナナセちゃんを、泣かせる訳にはいかないからな!」


「ふふっ、そうですね。期待してますよ」



 会見場に向かう準備をしている。こちらはジーク様、ヤッカム様、アントレン様、タハラシ様、数人の護衛、そして僕だ。そして向こうの前線にも出てくる人達が見える。



「あれは…教会の者もいますね…後は新しい騎士団長とギルドか商会の者でしょうか…」


「教会もいるのか…それにギルドや商会まで出てくるとなると…怪しいな…何を考えている」



 ヤッカム様とジーク様の会話に、不穏な空気が流れる…。



「良し、行くぞ!一番の護衛対象はキクチだ。何があっても守れよ!」


「「「「「はっ!」」」」」


「ジーク様!そんな僕ばっかり…」


「大丈夫だ。俺は自分で対処できる」


「キクチ心配すんな!俺達はジークも含め、この国を守る精鋭だ。誰にも指一本触れさせねえよ!なあ皆!」


「「「「「おう!」」」」」



 そして準備を終えた僕達は会見場へ向かう。同時にヌーヌーラ共和国の人達も会見場へ向かっている。そして会見場の少し手前で足を止める。向こうも同じ様だ。そこで話が始まる…。



「この度は会談の場を設けて頂き、誠に感謝しています」


「構わん」


「早速、なぜこのような経緯になったかも含めて、話し合いをしましょう」


「ああ」



 向こうの代表の一人とジーク様の軽い会話の後、僕とジーク様とヤッカム様の三人が着席する。後は護衛だ。そして向こうも、最初の会話をされた方と教会の方と騎士の一人の三人が着席する。これからどのような話を聞かされ、話をさせられるのだろうか…。戦争を止める為にも出来るだけの事はするけど…。



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