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異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
30/136

美容学校、無事開校


「私が校長のマイです。主に技術指導を中心に、美容師としての心構えを教えていきます。ハッキリ言って私は厳しいです。私に負けないよう頑張ってく下さい」


「「「「「はいっ!」」」」」



 今日は入学式だ。マイさんの簡単な挨拶を終えてこれから授業が始まる。お店の定休日に合わせてもらったので、僕も特別教員として、今日は参加している。因みに、一応僕も入学式の挨拶があったのだが、ディーテ様の挨拶が長すぎて…短めにした。マイさんも同様に短めにしていた。



「まずは、授業態度から見てみるか」


「そうね。キクチくんのまとめた教科書が、どれ程役に立つかも見極めなきゃ!」


「マイさんも、一応チェックしたでしょ…」


「まあね、授業する学者さん達が、どれだけ理解しているのかも知りたいしね」



※※※



 その結果、僕とマイさんは素直に関心していた。皆の真剣さが凄い。15人のメンバーは、元影でエルフのミナラーさん以外、全員貴族だった。しかし厳しい環境で成果を出し、短期間で美容師になる為にも、爵位を返上した。平民としてこの街で過ごすのだ。寮暮らしとはいえ、自由になるお金も無い。身一つでやって来た彼らは、やはり覚悟が違ったのだ。



「これは、鍛えがいがあるね。後ろから授業見ているだけで、覚悟が伝わってくるよ」


「本当ですね。午後からのマイさんの技術指導も楽しみにしてますよ」



 学者の先生も凄く良かったと思う。僕やマイさんに何度もアドバイスを求めていたし、何より自分達が理解したいというその姿勢が素晴らしい。生徒も教師も貴族というような驕りがない。本当に素晴らしい人選だったと思う。



※※※



「「「「「いらっしゃいませ!」」」」」


「もっと大きく!声と動きはまず大袈裟なくらい大きくやれ!小さい声や動きをいくら練習しても意味がない!何故なら大きく出来ないからだ!最初から大きくやれば、小さい事は何でも出来るようになる!これから習う技術は全部そうだ!」


「「「「「はいっ!」」」」」



 最初からハードだなぁ。僕が習った時と同じ…スパルタマイだ。



「ただ、タオルやクロスを巻くんじゃない!どうやったら相手から好印象に見えるか考えろ!モデルをしてる方も、何か気付いたらすぐ言ってやれ!」


「「「「「はいっ!」」」」」


「丁度いい。今日はたまたま特別教員が来ている。キクチ見本見せてみろ!」



 やりますとも軍曹!怖っ…いつの間にか呼び捨てになってるし…。



「ひたすら腕を振れっ!私が良いと言うまでだっ!姿勢はそのまま!シャンプー訓練に入る為にも、まず柔軟な手首と腕、そして何人来てもやり続けられる姿勢と体力を身に付けろ!」


「「「「「はいっ!」」」」」


「ハッキリ言って近道は無い。やった回数、それも真剣に取り組んだ回数が結果に出る!集中だ!」


「「「「「はいっ!」」」」」



 結局、昼過ぎから六時間…途中休憩があるとはいえ、これは大変だ。僕達でもそうそうない。これが続くのか…皆、頑張れ…



※※※



「かなりやり込んだね、マイさん」


「うん。皆真剣だしね。キクチくんもいたし張り切ったよ!」


「久々にスパルタマイを見ましたよ」


「ふふっ止めてその言い方」



 皆凄く疲れていた。でもここまでやっても、まだシャンプー台に辿り着かない。挨拶や声出し、クロスやタオルの付け方と畳み方、腕振りの練習、これだけだ。明日も同様だろう。途中でミナラーさんに聞いたら、影の訓練よりよっぽどキツイそうだ…。



「今日はここまで!お疲れ様!」


「「「「「お疲れ様でした!」」」」」



 皆は疲れながらも、満足気に帰っていく。しっかり慣れてくれれば、きっと大丈夫だろう。



※※※



「マイ、今日は大変お疲れ様。キクチもありがとう。初日としてはいかがでしたか?」


「ディーテ様、私はとても良かったと思います。私も凄くやりがいがありました」


「僕もそう思います。順調な滑り出しかと」


「そう。ありがとう。これからも頼みますわ」



 ディーテ様と今後の打ち合わせを少しして帰路に付く。今日、生徒だった彼、彼女らは本当に本気だった。背水の陣で挑む姿は、僕達も見習わなくてはいけないな。明日オーパイさんやナナセさんにも伝えてあげよう…。もうすぐ抜かれるかもよって。特にオーパイさんは油断出来ないな…。頑張れっ!



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