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異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
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美容室パラレル、二年目開始


 とうとうパラレルをオープンして丸一年経った。今日は両親の命日でもあるので、早朝からお墓参りをしてきた。その為、少し遅刻しながらお店に向かう。本当に濃厚で大変な一年だった。でも次の一年も大変なのは容易に想像が付く。そんな事を考えながら店に入って行く…。



「おお!キクチおはよう!」


「キクチ殿、おはようございます」


「…ジーク様、タハラシ様おはようございます…」



 新年会以降、ジーク様はやけにお店に来るようになった。二階の僕の部屋で、今はくつろいでいる。



「またですか?ディーテ様やヤッカム様に怒られませんか?」


「まぁ、そう言うな。ここは仕事も捗るからな」


「はぁ…」



 全てはあの日ミスったのだ。新年会の夜だ。結局皆遅くまで飲んでしまい、仕方なく二階の僕の居住スペースに皆が泊まっていったのだ。そしたらテレビやDVD、漫画等この世界の人にとっては珍しいものばかり。要するに気に入ってしまった…。



「このドラマを見終わったら、仕事だ」



 二人してソファーに座り、今ハマっているアクションドラマを見ている。しかもポテチとコーラを側に置き、完璧な体勢で…。異世界の飲食にハマったな…。確かに一応大量の書類なんかも持ってきているが…。



※※※



「すまないキクチ。ジークが迷惑を掛ける」


「いやまぁいいんですけど。いつも来られると…オーパイさんなんかはかなり緊張するので…」


「これは、迷惑料だ。受け取ってくれ」


 スカルプケアをしに来たヤッカム様から、沢山の金貨を頂いてしまった。一応断ったのが、断り切れなかった。食事代、お菓子やジュース代も含まれているらしい。確かに僕達が使いっ走りで、買ってきたり作ったりする事もあるしな。場合によってはコンビニ等に付いてくる事もある。流石に観光までは出来ないが。迷惑な部分は確かにある。



「という事で、ジークの様子を見てこよう。上がらせて貰うぞ。いやぁ宰相は辛いなぁ」


「ヤッカム様…」



 スカルプケアを終えたヤッカム様が、そんな事を言う。自分も居座る気だな…このやろう。ヤッカム様はウキウキしながら二階に上がっていく。最近はナナセさんの考えた詠唱魔法のお陰で、身体強化魔法を馬と自分に使えば、15分で王都からここまで来れるらしく、かなり来やすいらしい。まぁそれでもヤッカム様やジーク様達みたいに魔力の強い方じゃないと、かなり大変らしいが…。



※※※



「店長、大分気に入られちゃいましたね!」


「ナナセさんとマイさんのせいだからね…あの時、泊まってけば良いなんて言うから…」


「キクチが悪いよ。私やナナセのいない所で、楽しんでて悪口まで言ってたんだから」


「師匠のせいで、緊張します!」



 俺のせいなのか?くそっ。あれは仲間外れにしたわけではなく、成り行きの展開じゃないか!まぁ確かに悪口は言ってたけど…。



※※※



 営業終了後、二階に上がると三人はメチャクチャ働いていた。やる時はやるんだな。タハラシ様はインペリアルガードなのに、護衛以外もするんだな。ジーク様もかなり真剣だ。ヤッカム様も書類とにらめっこしてる。そんな中、一応声を掛ける。



「お疲れ様です」


「おっキクチか、仕事は終わったのか?」


「営業は終了して、今は皆、下でトレーニングしてますよ」


「もうそんな時間か…」


「そうですね確かにお腹も空いてきたかも…」


「私もそうですねぇ…」



 そんな事を言いながら、三人がチラチラと何か言いたげに、目で合図をしてくる。まぁわかってるけどね。



「…夕食ですか?何か食べたい物でも?用意しましょうか?」


「悪いなキクチ殿、催促したみたいで。私もジーク様もヤッカム様もそんなつもりは無いのだが」


「催促してましたよ…そんなつもりしか感じませんでした…でも外出は無しですからね」


「「「えぇー!」」」



 不満が出たが文句は言わさない。買いに行くのも面倒なので、宅配ピザと寿司を取ることにした。せっかくなので下でトレーニングしているスタッフにも差し入れをしよう。一周年記念を兼ねて、社長の奢りだ。まぁ社長って感じでもないけどね。



※※※



「店長!ありがとうございます!」


「師匠!一生付いてきます!」


「キクチくんも、できる大人になったのねぇ」



 ナナセさん達も二階に上がってもらって、食事会だ。皆喜んでくれてよかった。お三方も初めて食べるピザと寿司に感動している。



「この寿司という食べ物は良いな。鼻に抜ける辛味も良い」


「ジークの言う通りだ。美味い。この国でも生魚の食べ方を考えてみよう」


「私はピザですね、これなら食べながら仕事も出来ます」



 各々が感想を言いながら、店の話しになる。



「そうか今日で一年なのか」


「はい。ジーク様」


「あっという間でしたよね!店長」


「確かにね。色々ありすぎて気が付いたら今日だったよ」


「私も気付いたら、毛が生えてたしな!はっはっは!」



 本当に色々あったと思う。今日の朝もそう考えていた。



「次は美容学校ですね、キクチ殿。もうすぐ開校ですよ」


「私の出番も近いわね。このお店で働く時間が減るのは少し寂しいけど」



 そうなのだ。来週には美容学校が始まる。建物も出来上がり、設備も整った。後はスタートするだけだ。マイさんも午前のみの勤務になり、僕達もちょくちょく行く事になる。



「そのうちアントレンが入学したりしてな!あっはっは」


「それはないでしょう、ジーク。くっくっく」


「私はそんなに魅力的かしら?ふふっ」



 皆は冗談ぽく言ってるけど…無い話では無い。影のミナラーさんだって入学するし…。



「まぁそんな事より、早めに帰って下さいね!」


「そっそうなんだが、ドラマの続きがちょっと気になってな…」


「私も王の護衛だから…」


「ジークがハマっているなら一応チェックしておくか…」



 こりゃ駄目だ。そのうちディーテ様が来るかもな…。まぁとにかく、この一年大変だったけど楽しかったよ。そして去年一年の立役者に声を掛ける…。 



「ナナセさん、一年お疲れ様。これからもよろしくね」


「はい!店長今年もよろしくお願いします!」



 グラスを合わせてお互いを労う。そんなこんなで、二年目がスタートする事になった。




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