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異世界美容室  作者: きゆたく
一年目、異世界王国飛翔篇
25/136

騎士カルバンと宿屋のポニョン、結婚式開催


「本当に一気に冷えてきなぁ」


「姉御、この国ではそういうもんです!」


「ナナセさんもマイさんも、風邪気を付けて下さいよ」


「キクチくんこそ。でも確かに、この急激な寒暖差は大変だね」



 ハマナンさんの言ってたとうり、急激に寒くなってきた。少し雪も降るらしい。でも一ヶ月もすれば暖かくなって、新年を迎える。その頃には美容学校もスタートする予定だ。その為、やる事も多いので、体調を崩す訳にはいかない。



※※※



 体調崩しそうだよ…。いつもそうだけどさ、何でこんな事に…。



「店長!文句言わずに練習して下さい!」


「そうよキクチくん、私達も忙しいんだから」



 なんで安請け合いしちゃうんだろう。僕達って何でも屋じゃないのに…。



※※※



 事の始まりは、少し前。宿屋のポニョンさんの結婚話から始まる。



「へぇー来週結婚ですか!おめでとうございます!」


「私は結婚を失敗したけど、結婚式は楽しかったなぁ。二次会も盛り上がったしね」


「お姉ちゃん!縁起悪い事言わないで!」


「マイさんの様にはなりません!ところで結婚式って何ですか?」


「結婚式知らないの?」



 こちらの世界では一般的に結婚式をしないようだ。領主に報告して終わり。それだけだ。王様の結婚ですら、少しお披露目があるくらいのよう。そこで結婚式がどんなものか説明してあげる。因みにお相手は、平民出身だが銀翼の騎士団のカルバンさん。この店で出会ったのだ。



※※※



「やりたい!出来る限りのお金も払いますから!」


「簡単な結婚式位なら出来るんじゃないですか?」


「うーんそうだね。ヘアとメイクは協力出来るけど…」


「ドレスなら私が結婚式で着たドレスあるし、キクチくんもスーツ貸しなさいよ!」



 嫌な予感はあった。ポニョンさんが結婚式の説明を聞いている時の表情で、これはする事になるなと、思ったよ…。その後も話は女性陣だけで盛り上がる…。簡単な式って言ってたのに…大きくするなよ…。しかし気付いたら街全体を巻き込み、ハマナンさんにも伝わり、大イベントになってしまっていた…。誰だよ教えたの…。



※※※



 今、僕は何故か神父の真似事をさせられ、台詞の練習中だ。マイさんとナナセさんは、マイさんのウェディングドレスをリメイクしている。髪飾りなんかも作る予定だ。マイさんは自分の式でレンタルドレスを使わず、知り合いのデザイナーや友人と一緒に自分達で作り上げた。自分の世界観がある美容師の、面倒臭いエピソードだ。モード系でアバンギャルドだからね、尚更だろう。話は変わるけど、離婚した人の手作りって、少し縁起悪い気しない…?



「キクチくん…何か失礼な事、考えてない?」


「まっまさかっ、とっとんでもない!当日の流れをっ改めて確認してっしていたっだけです!」


「店長慌て過ぎですよ!」



 そんな徹夜な日々が続き、寝不足で当日を迎えることになる。体調崩しそうだよ…。



※※※



「私…お姫様みたい…」


「まだ、泣かないでね!メイクが崩れちゃうよ!」


「はい!」


「ポニョンさんの、愛しの騎士様も終わったようね!」



 当日は朝から大忙しだ。僕が二人のヘアセット、ナナセさんがメイク、マイさんがドレスやスーツを着せる。因みに僕のスーツも勝手にリメイクされている…。これから店を出て大通りを進み、教会に向かう。まず表に出ると、人だかりが出来ていた。騎士の方も沢山来てくれているようだ。そして普段とは違うポニョンさんとカルバンさんを見て、皆が驚いている。仲良しのマリベルさんは、もう涙を流している。



「キレイ…」


「カッコいい…」


「あの野郎っくそっでもおめでとう!」


「おめでとうー!」


「カルバンのバカヤロー!」



 皆から羨望の眼差しでみられ、多くの祝福を受ける。若干の冷やかしと恨みの声は、ご愛嬌だ。そこからお願いしていた近所の子供達にドレスの裾を持ってもらい、大通りを進む。子供達も大喜びだし、大通りは大フィーバーだ。



※※※



「ポニョン…あんなにキレイに…」


「ああ最高の娘だ」


「俺達の息子は最高の奥さんを手に入れたのだな」


「あなた…カルバンも素敵ですよ」



 教会では両家のご両親が待っていた。喜んでる様で良かった。ご両親にも、お呼ばれ用の衣装を用意してあげた、ヘアメイクもマイさんとナナセさん協力の元に行った。新郎新婦より早く支度して教会で待ってもらっていたのだ。



「お父さん…お母さん…本当に今まで育ててくれてありがとう。これからもよろしくね」


「親父、お袋…騎士になったりして、色々心配掛けたりもするけど…これからもよろしく…俺を生んでくれてありがとう」



 そこで、ご両親号泣。周りで見ている人達もだ。特にマリベルさんはもうグシャグシャだ。見たことのない演出に、皆が感動する…。簡単だなぁ…まぁ僕もグッときたけどね。そして皆が教会に入っていく。



※※※



「これから結婚式を始めたいと思います…これから二人には生涯の愛を誓って頂きます。証人はここにいる全ての人と、リリーシュ様です」


「「はい」」



 僕は今、神父の格好をさせられ神父の真似事をしている。本来ならば本物の神父様にしてもらいたいのだが…。本物の神父様はやった事なく不安だそうで、何故か僕になった。僕もやったことないのに…。だが、僕の横で本物の神父様とシスターには、しっかり付いてもらっている。何故なら覚えてもらわないと、困るからだ。これから結婚式やる人は絶対に出てくるはず…。この国はそういう国だ。



「カルバン、あなたはポニョンを妻とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


「はい。誓います」


「ポニョン、あなたはカルバンを夫とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


「はい。誓います」


「ではカルバン、ポニョンに誓いのキスを」



 そこでポニョンさんの口に、優しくキスをする。その瞬間、会場に大歓声が上がる。冷やかしの言葉や口笛何かも聞こえる。二人も照れ臭そうだ。そしてマリベルさんは卒倒した。



「では、二人をリリーシュ様の名の元に夫婦として認める!」



 その瞬間、女神像から優しい光が広がっていく。そしてどこからともなく…。



「カルバン、ポニョンおめでとう…心から祝福しますわ…」



 そして、光が収まっていく。



「いっ今の声は!」


「何だ…あの光は…」


「リリーシュ様が…」


「凄いっ!なんて事だ!」



 リリーシュ様が、やってくれたよ。最初ポカンとした皆だったが、気付いたら会場は狂喜乱舞だ。神父様とシスターも号泣だ。皆が感動し、涙し、祝福しあった。リリーシュ様…いつも突然っていうか二回目だけど、ビックリさせてくれるなぁ。以外とお茶目な神様なのかもしれないな。



※※※



 その後は飲めや食らえやの、大宴会だった。皆が二人を祝福し、リリーシュ様に感謝した。僕達も皆に声を掛けられた。褒められたり、感謝されたり、私の時もやってとか、何故私の結婚時にいなかったなんて不満もあった。ハマナンさんも見に来ていたらしく、かなり感謝された。やはり神の声は絶大だ。神父様やシスターも同様で、何度も感謝された。夫婦の誓いの言葉もすごく感動したらしく、これから実行していく気満々といった所だ。



「皆さんありがとうございました。本当に結婚式をして良かったです」


「本当に…こんなに皆に祝福してもらって…神の声まで…感謝してもしきれません!」


「全然いいよ。皆喜んでくれて良かったね!」


「私も感動しました!泣いちゃいましたよ」


「私も自分の時より良かったわ。また、結婚しようかな。なんちゃってね!」


「笑いにくいなぁ…マイさん…」



 そして宴は遅くまで続いた。実際は日本でやるような結婚式よりも大分簡略化したし、指輪交換や披露宴もしていない。スピーチも友人の出し物とかも無い。でも一週間でここまで準備し、実行できたのだから褒めていいだろう。今後、色々な結婚式が行われるかもな…。



※※※



 そんなこんなで大成功だった結婚式だが、自分の知らないところで、また問題が起こっていく。まず見に来ていた騎士から話が広がり、知らなかった王族が怒ったのは予想の範囲内だ。だが教会の神父とシスターから広がっていった話で大問題が起きる。どうなることやら…。



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