異世界人三人、地球観光
裏口から出て来た三人は、見慣れない風景に少し戸惑う。でもここは街の中心から少し離れた住宅街。驚くのはこれからだ。因みに普段僕達が住んでいる街は、首都とは離れた某県某市だ。
「これが異世界か…」
「建物の雰囲気は全然違いますけど…そこまででもないですわね…」
「ディーテ様、いやっディーテ…どこに危険があるかわかりませんよ…」
「こんなところで驚くのは早いですよね、店長!」
「そうだね。それに危険は無いですよ!」
これからする事は、まずドライブだ。色々見て回り、説明しながら入る場所等を決める。
「なんだ!この鉄車は?」
「動きますの?」
「怪しげな…」
「まぁまぁ乗って下さい」
座る場所も当然揉めた。早く出発したい…。風景を見たいだろうから、後部座席の真ん中にナナセさんが乗り、後はアミダで決めた。ナナセさんを挟む形で王妃様とタハラシ様、そして助手席は王様だ。それでも文句が出たので、途中で交代する事に。
※※※
「凄い!速い!どうなっているんだ?」
「ジーク買って帰りましょう!」
「私はまず操縦してみたい!」
「無理です。結構高いですし、裏口から入りません。それに買うにしても手続きや、免許も必要です」
「そのうちディンドンさん辺りが、作ってくれますよ」
そんな会話をしながら中心街に向かう。実際買おうと思えば買える。僕が買えば問題無いし、マジックバッグに入れればきっと向こうの世界に持ち込める。ディンドンさんが作るのもきっと大変だろう。燃料や電気の問題もある。しかし魔法とかうまく使って、出来る日が来るのかもしれない。
※※※
「車があんなに沢山…建物も高過ぎますわよ…」
「こんな文明が存在するのか…」
「戦争を仕掛けられたら、やはり勝てないな…」
どこに行ってもビックリするので、まずはショッピングモールに行く事に。そう複合施設だ。とにかくはしゃぐのは、抑えてもらうようお願いした。こんなに流暢な日本語を話しながら、驚いているのも珍しい。目立つのは勘弁だ。東京に行ったら、どうなっちゃうんだろう。
「自動で開くガラス…?」
「何だあれは…小さい人が箱にいるのか…?でも薄すぎる…」
「皆の服装も凄いわ…こんなに人が集まる場所も…」
自動ドアやテレビ、様々な物と人に驚く。当然だろう。僕達も異世界にかなり驚いたしね。取り合えず慣れるためにも店には入らず、散歩でいこう。
※※※
暫く見て回った後、施設内のレストランで少し休憩をする。この後の予定決めもするし、落ち着いてもらう為にも食事をする。注文は喜んでくれそうなものを、ナナセさんが勝手に決めてくれた。
「想像以上だ。キクチ達の世界は凄いな…」
「何もかもがオシャレです。参りましたわ」
「見たい物や、したい事が多すぎて、逆に何をすれば良いやら…」
「ははっ慣れですよ」
「そうですよ!時間を見て、また来れば良いですし」
ナナセさん勝手な事を…。案内するの僕達だよ?忙しくするのは止めて…。その後の食事には大満足してもらった。特に向こうの世界では少ない、スイーツが喜ばれた。パフェやケーキはしっかりと、おかわりしていた。
「いやーうまかった」
「このケーキは買って帰りますわ」
「パフェとは素晴らしい…」
「帰りにケーキ屋さんで、色々買って帰りましょう。パフェはアイスもあるので溶けちゃうから無理ですけど」
「店長、スイーツのレシピ本でも買いませんか?」
僕達の意見は即採用された。どこでも食の探求は大事だ。そして今日は、このショッピングモールで一日過ごす事にした。どうせ色々行っても時間も足りないので、ここで有効に時間を使う事にした。
※※※
「本当に楽しかったぞ、絶対また来る!」
「私もまだまだ買い足りません」
「私も警護なんてスッカリ忘れてました…すいません」
「はははっ皆満足してもらったみたいで、良かったですよ」
「お土産もいっぱい買えましたしね!」
今はもう帰りの車だ。食事の後は、まず皆でショッピングをした。王妃様が服を大量購入し、王様も何故か自転車を買った。タハラシ様も100円ショップで色々と買っていた。流石に電化製品は遠慮してもらった。電気の無い世界に、持っていってもしょうがないしね。途中マイさんから電話が掛かってきて、スマホに興味を持たれた時は焦ったしね。その後も何度か「今どう?」なんて連絡も来た。心配掛けて申し訳ないなぁ。でも向こうでの通信手段は、正直欲しいかも…。そしてその後はゲームセンターだ。エアホッケーや色んな物で勝負したり、メダルゲーム何かもした。
「絶対にまたあの者達を救いに来ます」
タハラシ様はUFOキャッチャーにハマった。今も大事そうに取った沢山のぬいぐるみを抱えている。最初は時間を掛けて取っていたが、後半は慣れてきたのか連続で取ったりしてた。絶対に全員救うと言って、中々離れなかったし…。
「俺はあの小さい箱のゲームだな、あの少年を倒す!」
王様は格闘ゲームに夢中になった。最初はやり方もわからず下手だったのだが、すぐコツをつかみかなり上手になった。順応性が半端ない事を改めて知った。でもどうしても倒せない少年がいて、泣きそうになっていたのは少し笑ってしまった。最後に握手をしにいって「また会おう」なんて言ってたけど、向こうの少年は少し戸惑ってたよ…。
「私はあの『ぷりくら』よ、楽しかったわ…また皆でやりましょうね」
王妃様はプリクラだ。記念にと思って撮ってみたら大興奮。ハサミで切って皆で分けたら、勿体ないと思ったらしく何回も撮らされた。最後は一人で何回も色んな種類を回ってたよ。操作もポーズも完璧で、書き込みも「オースリー王国から参上」とか書いていて、ヤンキー女子高生かよと思ったよ…。
「ああ~帰りたくないわ。絶対また連れてきてね!」
「俺も頼む」
「私もお願いします」
「はぁ…まぁ時間が取れれば…」
僕が曖昧に返事をしたら、少し睨まれた…。でもナナセさんが「あったり前じゃないですか!」なんて言うもんだから、皆はニコニコしている。お土産のケーキも大量だし、スイーツレシピ本も買った。また来れるようにタウン情報誌なんかも買ってしまった。ここが首都とかではなく、普通の街と知って驚いたのもこの時だ。
※※※
「出迎えご苦労」
「「……」」
「あらどうしたの?」
「「……」」
ヤッカム様とアントレン様が拗ねている。予定の時間より大分遅くなったからだ。後ろには様子を見に来たマイさんもいる。
「まあまあこれも公務ですから」
「タハラシの言うとおりだ」
「そうよ、仕方ないじゃない」
遊んでただけだと思うが。ナナセさんも苦笑いだ。マイさんはニヤニヤしている。
「途中でマイが、来ましてね。あなた達が大分はしゃいで遊んでる事が、わかりました」
「「「えっ」」」
確かに途中で連絡が来て、はしゃいでいる事は伝えた。後ろでうるさかったのもわかる。二人を店に残すのも悪いと思って、マイさんに様子を見に行ってもらったりもした。
「マイが謎の道具で連絡していた時、俺達は隣で聞いていたんだよ!」
「そうだ。貴様らの楽しそうに遊んでいる声も良く聞こえていたぞ」
「「「えっ」」」
どうやらマイさんは、わざわざスピーカーにして電話していたようだ。やりやがったな。そしてその後は王族の威厳もなく、かなり怒られていた。お土産で許してもらえばいいさ。
「キクチくん、ナナセお疲れー」
「マイさん…いたずらが過ぎますよ!」
「まぁお姉ちゃんらしいよね」
「でも楽しそうで良かったじゃない」
確かに楽しんでもらえた。これから何度も連れて行かなきゃいけないんだろうな…。タウン情報誌もあるから、行きたい所沢山言って来るだろうしな…。マイさんやナナセさんも免許あるし、お願いして連れて行ってもらおう…。はぁ…疲れる…。




