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86話 韋駄天

-----------------------------------

名前:白石輝明

職業:必殺暗殺者

レベル:80

HP:615/615

MP:564/564

攻撃力:581

魔法攻撃力:0

防御力:350

魔法防御力:320

敏捷:778

固有スキル:透視(覚醒済み)LV8【MP5】

技術スキル:剣術LV4、瞬脚LV5、即死の影LV6、回避の加護LV4、剛腕LV4

耐性スキル:麻痺耐性LV4、毒耐性LV3、睡眠耐性LV3、適応力LV2

保有スキルポイント:2

ジョブポイント:35

職業ツリー

【会心威力1.4倍】解放済み

【ジョブ進化。必殺暗殺者】解放済み

【敏捷:7段階目】解放済み

【攻撃:7段階目】解放済み

【複合:3段階目】解放済み

------------------------------------


「ポイントの割振りは終わりましたか?」

「はい。大丈夫です」


 シルバージャックパラサイトスライムとの戦闘を終え、早速下の階層に向かおうとした。

 だが、レベルが上がったのなら何においても先にまずポイントを割り振った方がいい、と猩々緋さんから忠告を受けたので俺は焦る気持ちを殺しながら適当にポイントの割り振りを終わらせた。


「……ちなみに今のレベルを聞いても?」

「えっと80です」

「80……。なかなか代わり映えしないステータスにやきもきする時期ですね。でも100を超えた辺りからは……。おっとネタバレは楽しみを奪ってしまいますね。はてさて、白石さんはこれからどういう個性を持つことになるのか……」

「? それより怪我も大丈夫なので早く先に行きましょう。猩々緋さんだけならここから探索隊に合流することは簡単かも知れませんが、俺にはまだそこまでの敏捷性はないので」


 猩々緋さんの言葉と浮かべたにやり顔が気にはなったが、そんな事よりも今は先に進むことの方が大事。

 俺は猩々緋を急かすように言葉を掛けた。


「まぁまぁそんなに焦らなくても大丈夫ですよ。最初に言ったと思いますが半日はここで白石さんを待つことも考えてまして、つまりそれ位の差であれば白石さんが居ても簡単に追いつけるんです」

「でもどうやって……」



 ぴと。



「『韋駄天いだてん』」


 猩々緋さんは唐突に俺の腕に触れると、なにやらスキルを発動したようだった。


 ざっと見渡したが、俺の見た目に変化はない。

 しかし、明らかに身体が軽くなった。それに戦いで荒れていた息はソファに腰かけてボケっとしている時くらい落ち着いている。


「これが私のスキル『韋駄天』です。ステータスの敏捷性、それに持久力を飛躍的に向上させるバフ効果を対象に付与出来まして、今の状態ならフルマラソンを完走してもそこまで疲労は溜まらないと思います」

「……凄いスキルですね」

「私は『バフ術師』ですからね。さて、それでは行きましょうか。41階層へ」

「……猩々緋さんは自分自身にこのバフを使わなくてもいいんですか?」

「えっ?」


 俺の質問に対して猩々緋さんは驚いたような顔を見せた。

 

 そこまで変な質問したかな?


「はは、私までバフを使ったら白石さんがついてこれなくなっちゃうじゃないですか」

「!?」


 その言葉を放った猩々緋さんの顔に悪意は見られなかった。

 これは冗談でもなんでもなくただ事実でしかないのだろう。


「走っていきます。疲れたら早めに教えてください。休憩はいつでもとり――」

「大丈夫です! 俺、ぶっ続けで何かをすることには慣れてるし、なんていうかきついのとかそこまで苦手じゃないんですよね」


 俺は気を使ってくれたであろう猩々緋さんの言葉をぶった切って、強がった発言をした。

 

 俺ってこんなに負けず嫌いだったっけ……。


「さっきの戦いでも感じましたが……。すごいですね、その忍耐力」

「はい。元ブラック社員なので」


 そんな何気ない会話を交わしながら、俺達は40階層を後にしたのだった。

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