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27話

「さてと……行きますか」


「行くですよ」


一度ログアウトし昼食を各自済ませた私達はそれほど問題も無くニノマエ東の草原に立っていた。


しいて言うならば、ログインしてすぐにいつの間にやらか潜り込んだのか私のベッドにアヤが入り込んで一緒に寝ていたというもの位だろうか。


容疑者(アヤ)は反抗を全面的に認めて「昼食のあとにはデザート()が欲しくなったですよ」とあまり理解したくない供述をしていたので次やったらグーパンするから、と殴りながら言っておいたため問題無いと思いたい。


問題ないよね?


無いと良いんだけど。


さておき。


とりあえず先ほども言ったとおりに今は東の草原にいるので。


「ちゃっちゃと走り抜けたいところだけど……アヤ、VITとAGIの数値どれくらいなの?」


VITはスタミナ、AGIは速さの大体の目安として見ることができ。基本的に数値の低いほうに移動速度をあわせることが推奨される。


因みに私は今現在VIT21AGI26なのだが……。


「ふっふっふ、ナギハさんに貰った装備のおかげでVITが+1されてなんと!」


「うん」


「VITが6にAGIが8ですね。」


アヤのステータスを見せてもらったがなんというかもの凄く尖っているステータスだった。


レベルが私の半分しかないのにTPとTECが私以上にあるのはまぁ流石とは思うけど……


「うわ、よっわ」


「ひっど!」


え、何それ生きていけるの?両方とも私の3分の1以下なんだけど。


「いやいやいや、普通生産職なんてこんなものですからね?ナギハさんみたいにスキルも取らずにステータス伸ばししたりアホみたいにソロでレベル上げしてるほうが異常ですからね?」


「えー」


「えーじゃないです!」


それにしても他のプレイヤーが遅いだけじゃーないのと思わんでもないのだが。


パーティ組んで攻略をしていればまぁたしかにレベルは上がり辛くなるのだからしょうがないのかな。


モンスターから手に入る経験値はパーティの人数が多ければ多いほどに頭割りされて一人当たりの入る量が少なくなる。


私の場合ソロでかつ経験値アップのボーナス付だからなぁ。


「まぁ、それはいいとして。 にしてもAGIが3倍違うのはアレだわねぇ」


流石にこれだけステータスに差があると私の速さに合わせてアヤが走るのは無理だし、たとえアヤに合わせて走ってもVITの差でアヤの方が私よりも早く疲れてしまうだろうし……。


んーむ、出来るだけ早く草原を抜けて森に入りたいんだけど何か良い手は……あ、そうだ。


「アヤ、ちょっとちょっと」


私はアヤにちょいちょいと手で『おいでおいで』のサインをして近くに来るようにする。


まぁもともとすぐ横に居るのだがそこはおいておくとして。


「なんです?」


アヤガ反応したのを確認した私は手早く説明に入る。


「もう昼も過ぎたし出来れば早いうちに森に入りたい、そして森に入るためには草原を抜けなければならない。 ここまでは良いわね?」


「はぁ」


私はアヤが頷くのを確認し続ける。


「んで走り抜けたいことだけど私とアヤのステータスはVIT(体力)で3倍AGI(速さ)で3倍の差があるからぶっちゃけ走り抜けるのはあまり現実的な案では無いわね? けれどだらだら歩いていても『ジュジュッ!』 うっさい『ギュッ!』 まぁ今みたいにモンスターが来るわけだわ」


突然出てきた出刃ネズミを盾でぶん殴って倒しつつ、アヤが頷いているのを再度確認しさらに続ける。


「んで私が考えた結果なんだけど……っと、ちょっと失礼」


「うひゃうっ!」


私はアヤの背中とヒザの下に腕を回して支えるようにしアヤを横に抱き上げる。


いわゆるお姫様抱っこである。


アヤを抱き上げたまま少しその場で軽く飛んだり跳ねたりしてみるが。


「ん~……うん、問題なく走れそうね」


流石ゲーム、ステータスの恩恵ぱないです。 リアルなら……まぁ抱き上げるくらいならできそうかな? なんかアヤもの凄く軽そうだし。


「んじゃ、いきますか」


「にゃにゃにゃにゃぎはさんっ!?」


「喋ってると舌噛むわよ?っと!」


「にゃーっ!!」


顔を真っ赤にしながらアヤが何か言っているが。 まぁさておき、私は草原を走り抜けるのだった。



――――――――――



「とうちゃ~くっと」


「うぅ……酷い目にあったですよ」


無事草原を駆け抜けることに成功し私たちはデンジャの森に到着した。


「なんか凄い顔してるけど大丈夫?」


抱いていたアヤをおろすと何やらよくわからない顔をしていた。


「最初は良かったんですけどねぇ! なんですか! 何で走り抜けるだけの筈が大ジャンプしたり無駄に回転したりモンスターの群れに突っ込んだりするんですか!?」


「つい?」


頬に手を当てつつ首を傾げて言ってみるが。


「つい? じゃねーですよ!! 可愛く言っても騙さ……騙されねーですよ!!」


「じゃあなんとなく?」


「余計悪くなったですよ!?」


うん、まぁ全力で走ってみると思いのほか面白くて悪乗りが過ぎたかもしれない。


謝っておくべきかと考えていると。


「ナギハさんが急な動きをするたびに、こう! 体や顔や手に胸が当たって……なんなんですか!? もの凄く気持ち良かったんですけど!? ありがとうございます!!」


「お礼言われた!?」


「帰りもお願いします!!」


そういわれると何か嫌だな、おい。


「まぁ……考えておくわよ」


「はいっ!!」


良い笑顔で返事をするアヤと共に私達はデンジャの森の攻略をはじめることにする。

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